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転生者の珍妙な冒険

作者:yasao
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続・ タルカスと戦ってるジョナサンの視界はきっとこんな感じ

 
前書き
遅くなってすみません。
パソコンの調子が悪く、書いてたらいきなりブラウザが閉じるという悲劇を3回繰り返しました・・・。


あ、誤字脱字の報告、この表現はおかしいんじゃないかという指摘、感想もお待ちしています。 

 
観客の歓声も、司会や解説の声も、全部遠くに感じる。
それほどの集中、きっともうすぐすれば声は完全に聞こえなくなる。
それをしなければ、目の前の男には勝てない。

『暴獣』タルタス・フォード

51歳という年齢にして、Sランクの冒険者。俺より遥かに高い身長、膨れ上がった筋肉、そして、距離を置いて立っている筈の今でさえ感じる圧倒されるような闘気。
試合前、控え室で会ったオッサンに声をかけた。

――試合が終わるまでは、懐かしむのはヤメにしよう

それが、オッサンから発せられた最初の言葉で、それから先は無かった。
オッサンは、マジに俺を倒すつもりだ。旧友ではなく、仲間でもなく、過去に俺に負けた1人の戦士として俺を倒すつもりだ。
なら、俺もそれに応える。それだけだ。

今、ゴングが鳴った。









(今持ってる武器は巨大なバスターソードか。だが、オッサン限って持ってる武器はアテにならんな。)
ゴングは鳴った。
だが、オッサン迂闊に近づくのはヤバい。無策で挑むのは自殺行為だ。
オッサンの1年半前までの二つ名は『千刃覇王』、ありとあらゆる武器を収納し、自在に取り出す「武器庫空間」というオリジナルスキルの保持者。この距離でさえ、気をつけなければ分銅のついたチェーンが飛んでくるかもしれん。
(ここは、まず最初にオッサンに攻撃させて様子を伺うか・・・)
「どうした? 攻めて来ねぇのか?」
まるで俺の思考を読んでるかのように、俺が様子見しようと思ったタイミングで入るオッサンの声。
「まぁ、そうだな。先に来てみろよ。」
「じゃあまぁ・・・・」

――遠慮なく。

その言葉は俺の眼前で聞こえ、俺が今までいた場所には巨大なメイスが沈んでいた。
「・・・・凄い速度だな。」
「ま、俺も伊達に1年半努力した訳じゃねぇってことよ。」
そう言って笑うオッサンの今の動き、俺は捉えられなかった。
俺が避けられたのは、勘が何かヤバいと全力で訴えかけてきたからだ。
(マズイな・・・、目で追えない速度か。オッサンの怪力にそれまで加わったら直接のぶつかり合いじゃあ勝てん・・・・。)
「と、なると・・・。」
「何だァ? 考え事か!!?」
叫び声と共に振り抜かれたバスターソードを勘で何とか回避し、巻き上がった砂埃を掴む。そのまま波紋を流して・・・。
「行け、愚者(ザ・フール)!!」
その言葉と共に、犬の姿になった砂がオッサンにまとわりつく。オッサンはバスターソードで吹き飛ばそうとするが、砂は武器に絡みつくだけで退かない。
「おぉ、懐かしいワンコだな。そう言えば物理は効かんのだったか?」
「その通りだ、オッサンが相手してんのは変幻自在の砂の愚者(ザ・フール)だぜ!!」
オッサンに返答しながら距離を取る。そうやって愚者(ザ・フール)が時間を稼いでる間に遠距離系の攻撃で・・・・と考えていた、その時。

「なら・・・・・オラァ!!!!」
「ッ、星の白金(スタープラチナ)!!!」

オッサンが雄叫びと共に何かをし、その瞬間に寒気を感じた俺は咄嗟に後ろに来た何か(・・)を掴んだ。それは・・・・・。

「な、何じゃ、こりゃ・・・・。」

オッサンの使うデカいランスと、それを持つオッサンの腕。
それが、俺の背後に現れた『武器庫空間』の入口から突き出ていた。
「有り得ねぇ!! オッサンは今俺の正面に「貰ったあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ぐぉっ!?」
オッサンの方を振り向いた瞬間、制御が緩んでいた愚者(ザ・フール)を吹き飛ばしたオッサンのメイスがそのままの勢いで俺にぶち当たった。

『き、決まったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! タルタス選手のメイスがついに、ヨシュア選手を吹き飛ばしたあぁぁぁぁぁぁ!!!!』

衝撃と痛みに頭が揺れ、視界が霞む。司会者が何やら叫んでるが、それもよく聞こえねぇ・・・。
「クソが、愚者(ザ・フール)で防御してこれかよ・・・。」
「クソがって言いてぇのは俺だよ。あの一瞬でワンコを引き寄せてガードするとはな。」
お互いに最初のように向き合ってはいるが、正直有利なのはオッサンの方だ。
オッサンの攻撃をマトモに喰らった俺は、ダメージだけじゃなくて体力まで奪われてる。おまけに、さっきの現象が未だに理解出来ねぇ・・・。
「何にせよ、アレを解決しないことには勝利は・・・・危ねぇ!!?」
俺に向かって突っ込んでくる何かを躱す。それは俺を囲むように作られた多数の『武器庫空間』の入口から飛び出た分銅付きの鎖だった。
「有り得ん!! 作れる入口は1個のはずじゃあ・・・。」
「成長したってことよぉ!!!」
怒号と共、鎖を断ち切って飛んできたバトルアックスを跳んで躱す。
だが、それは失敗だった。
メキッ・・・
「ぐお・・・!?」
空中で身動きが取れない俺の鳩尾に突っ込んだのは、分銅付きの鎖。
「が・・・・・くそ・・・・。」
悔し紛れにそれを掴んで引っ張る。すると、

「おわっ!?」

焦ったような声が聞こえ、そちらを向く。
そこには慌てたように自分のそばに作られた『武器庫空間』の入口から手を引き抜くオッサンがいた。
「あぁ、成程・・・・。」
解けた、オッサンの攻撃の謎が!
「オッサン、アンタ複数の入口を作って、しかもそれがすぐ近くにあるように(・・・・・・・・・・)一瞬でそれぞれを移動出来るんだろ?それで『武器庫空間』に手を突っ込んで、武器を引っ掴み、俺の背後に作った入口から奇襲してきたんだ。違うか?」
「・・・・・。」
「ダンマリか。まぁいい、手口が分かったら通用しねぇぜ?」
しっかし、オッサンはパワーだけの馬鹿かと思ってたけど、あんな頭使いそうな戦い方出来るんだな~。
「・・・・奇襲だけだと思うか?」
そんなことをぼんやり思いながら構えていたら、オッサンのそんな呟きが聞こえた。
「ん?」
「俺の『武器庫空間』のカラクリを見破ったのは褒めてやる。だが、それが奇襲用だけだと思うかってんだ!! こんなことも出来るんだぜぇ!!!?」
そう叫ぶと同時に、俺の周囲の四方八方を大量の『武器庫空間』の入口が囲み、それらから一気に何かが俺目掛けて飛び出してきた。
「アレは・・・・餓蛇!?」

餓蛇(がじゃ)
円形に5枚の大きな刃が仕込まれ、鎖を動かすことによってそれらが回転し当たった敵をミンチにする鎖鎌の進化系。昔の日本でも使われた事があったとか・・・・。

「あまり数は無い武器の筈だ、何故!!?」
「俺がお抱えの鍛冶師に作らせたんだよ、前にお前からお前の故郷にあるその武器の話は聞いてたからなぁ!!」
畜生、昔の俺の馬鹿!!
「更に、これだけじゃ終わらねぇぜ!!」
そう言って自分のそばにある『武器庫空間』から出したのは、まるで戦国時代の刃の長い槍を巨大にしたような武器。スピアとかいうのかな? 兎に角、今まで見たことねぇ武器だった。
『で、出たあぁぁぁぁぁ!!!! 「暴獣」を「暴獣」たらしめたタルタス選手の最強武器だぁ!! これが出され、しかも周囲を謎の兵器で囲まれたヨシュア選手、流石に命運尽きたかぁ!!?』
「へぇ、何か凄い槍なんだな。」
「おぅよ、1年前に行った『円卓の墓場』ってダンジョンの最深部にあった『ロンゴミニアド』って槍だ! 何とこれ自身が『攻撃力強化(大)』と『移動速度強化(中)』ってスキルを付けてんだ! それより、大丈夫かヨシュアよぉ!! そろそろ餓蛇がお前を食い破るぜ!!?」
オッサンの言うとおり、既に回る刃の風圧が肌で感じられる程に接近している。だが、別段大丈夫だ。
「何だぁその余裕そうな表情は? 言っとくが、仮に避けられても無意味だぜ!!? 『金剛槍・「牙王」』!!!!」
餓蛇の向こうからは、槍を構えたオッサンが突っ込んでくる。その威力たるや、周囲の空気を切って進む衝撃で辺りに鎌鼬が生まれ、衝撃から地面が抉れて陥没していく程だ。アレを食らったらミンチより酷いだろうな、今は唯の戦闘者として対峙してるとは言え仲間を殺す気か・・・?

だが、まぁ問題ない。

「・・・・『スタープラチナ』だけじゃあ、0.数秒だけだったが・・・・、『ちゃんと』言えば、どうなるかねぇ・・・・。」
口の中で呟き、襲いかかってくるオッサンともう薄皮一枚くらいに迫った餓蛇に一瞥をくれてから、叫ぶ。

世界は止まる(スタープラチナ・ザ・ワールド)!!!!」













その瞬間、今にも俺を切り裂かんばかりだった餓蛇も、鎌鼬や土煙を撒き散らして突っ込むオッサンも、歓声や悲鳴を上げていた観客も、司会者も、解説者も、全ての時が止まった。 
 

 
後書き
夜集阿(ヨシュア) 聖斗(セイト):『格闘家』『奇術師』:ランクA+
・波紋の呼吸法【レベル2】
    波紋ズームパンチ
    波紋疾走(オーバードライブ)
    波紋カッター
    仙道・波紋疾走(波紋オーバードライブ)
    銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)
    生命磁気の波紋疾走(オーバードライブ)
    山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)
    稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)
    クラッカーボレイ
    我流・冷酷な怒りの波紋疾走(ディープブルーアングリーオーバードライブ)
    深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)

・スタンド「タロット大アルカナ」【レベル2】【現在固定:星の白金(スタープラチナ)
    0番『愚者』の暗示する「愚者(ザ・フール)
    1番『魔術師』の暗示する「魔術師の赤(マジシャンズレッド)
    4番『皇帝』の暗示する「皇帝(エンペラー)
    6番『恋人』の暗示する「恋人(ラヴァーズ)
    7番『戦車』の暗示する「銀の戦車(シルバーチャリオッツ)
    8番『正義』の暗示する「正義(ジャスティス)
    9番『隠者』の暗示する「隠者の紫(ハーミットパープル)
    10番『運命の車輪』の暗示する「運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
    15番『悪魔』の暗示する「悪魔(エボニーデビル)
    17番『星』の暗示する「星の白金(スタープラチナ)
    21番『世界』の暗示する「世界(ザ・ワールド)

レオパルド・ジーク(神風(カミカゼ) 零弥(レイヤ)):『格闘家』:ランクS-
・神砂嵐の流法(モード)【レベルMAX】
   真空竜巻
   闘技・神砂嵐(かみずなあらし)
漢武夷(カムイ)流柔術【初期レベルMAX】
   神砂の拳

セーナ・フォクス:『格闘家』:ランクB
・イヌ科の嗅覚【初期レベルMAX】
・イヌ科の聴覚【初期レベルMAX】
・波紋の呼吸法

ネーナ・チュミン:『アーチャー』『補助魔術師』:ランクA
・魔導弓【レベル2】
  回復型
  威力型
  速度型
 (上から順に使用頻度の高さ順)
・補助魔法
  ヒール(極小回復)
  ホイミヒール(小回復)
  ケンロ(防御小アップ)
  ムッキ(攻撃力小アップ) 
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