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Dead!?お笑い部。

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武田家の恣意的な大判焼
  1話 お笑い部員VS校則 その1

 先輩、いなくなっちゃうなんて、寂しいっす。
 はは、お笑い部の部員が足りなくなるからか?
 え!?部員足りなくなるんすか!?
 おいおい、しっかりしてくれよ、新部長さん。
「あと3ヶ月待って下さい!」
 目を開ければ前にいた筈の先輩は消え失せ、同級生と、30になって色々焦っていそうな男が現れた。
「夢……。そうだ、部員、」
  米田(ヨネダ) 砂種(ジャシュ)はいてもたってもいられなくなった。
「おはよう米田。やっと授業を受け……」
「すみません!俺、やらなきゃいけないことがあるんです!」
 砂種は立ち上がった。今の彼にあるのは、焦燥感と、責任感。
「おい米……」
「しっつれいします!」
 砂種は教室を飛び出した。
 早く、早く部員を、
 砂種はあてもなく駆け出した。廊下を走ると上靴なのにカツカツ高い音がして楽しい。暖かくなってきた今頃に、切ってくる風は心地いい。
(速く、もっと速く走るんだ!!)
 足の黄色信号を、脳が笑って見逃す。
 そして砂種は、風に溶けた。


                                          完


「なにしてるのかしら?」
 砂種は、ゆっくりと威圧的なその言葉を、何故か走り終わる前に聞き終わった。
「今の俺なら……抜かせてもらいます!」
 砂種はそう言った後、右足で強く床を蹴った。
 このスピードなら、アスリートでもない限り避けられる
 筈だった。
 ウィーン
 刹那、砂種の周辺の床がポッカリと空く。
「へ?」
 砂種は風になれなかった。風の様に軽く、ヘリコプターのように自由になれなかった。
「うわああああああああああああ!」
 砂種はその黒い空間に吸い込まれた。


「お願いします!お笑い部を残して下さい!」
 砂種は校長室に招かれるや否や、校長の撃栂(ウツガ) 胡蝶(コチョウ)に頭を下げた。
「お笑い部と、あなたの校則違反は、何か関係あるのですか?」
 胡蝶は冷たく厳しい目を砂種に向け続けている。
「何か方法があるでしょう!マネキンとか人形も部員に含めるとか!」
「今はあなたが廊下を走ったことについて話しています」
「んなことどうだっていいんですよ!」
 砂種は熱い思いのまま叫んだ。
「俺は悲しいんです、校長が諦めちゃってることが。まだ可能性は残ってるのに、部員は4人以上なんてちっぽけなものに囚われてることが」
「校則はちっぽけなものなんかではありませんわ」
「ちっぽけですよ!血の流れてない、たった一言だけの!文字だけの!」
「ですがそれにより私達が……」
「俺はそんなものの前に屈したくはない!」
 砂種は机をバンと叩いた。
「探しましょう、希望を、道を。まだ未来は俺達の周りに転がってるんですよ。名前が5文字の部活は部員が1人でもよしとするとか」
「……」
「それとも、部員が4人に満たない時は99年後に廃部にすると……」
 ウィーン
 バチン!
「ブッ!」
 砂種は機械の両手に両頬を挟まれた。
「……いい加減、話を戻してもよろしいかしら?」
 胡蝶が手に持っているスイッチから手を離すと、機械の両手は砂種を解放した。
「いえ校長!例え両頬がおたふく風邪のようになっても、俺はどうしても伝え……」
 胡蝶がスイッチに手をかける。
「なんでもないでっす!」
「よろしい」


「うおおおおおお!」
 昼前にこっぴどく絞られた砂種だが、その魂の火は消えてなかった。
「でやぁ!学校の前の信号を左に行くとある喫茶店だ!合言葉は『アルマジロなど存在せぬわ』!」
「分かったわ。……大丈夫、そちらの約束も守るから」
「どりゃあ!これでお前の山札は0枚だぜ!」
「仕方無い。約束通り、お笑い部に入ろう」
「ぐょあ!食らえ必殺洗脳光線!」
「うぎゃあああああ!余はお笑い部になど入りたい入りたい入りたくない入りたいんじゃああ!」
 バタン!
「どーですか校長!搦め手が駄目なら正攻法ですよ!」
 砂種は、先程勧誘した部員3人と共に誇らしげに校長室に殴りこんだ。
「……確かに部員は4人いますわね」
 胡蝶は色々と突っ込みたいとこを紅茶で飲み込んだかのようにカップをカチャリと置いた。複雑な顔をしているのは、紅茶が渋かったからではないだろう。
「じゃあ、お笑い部は存続ですね!」
 砂種は顔を輝かせた。
「よろしいでしょう」
「やっっっっっっっったあぁぁああぁあ!!」
 砂種は上を向いて喝采をあげた。
「但し!」
 そこを胡蝶の大声が突き刺す。
「はい!」
「部員が4人から減った場合は、廃部の危機があることを忘れてはいけませんことよ?」
「そんなこと、重々の重承知して……」
「余は純粋なる手芸部員じゃあああ!」
 ボウン!
 一瞬の内に辺りが煙に包まれた。
「ゲホ、クッ、誰がこんなことを!」
 胡蝶がボタンを押すと、壁から何かが現れて、空気を吸い込んでいく。
「まったくー、祝いの爆竹なら俺にひとこウギェエエエエエエエエエ!」
 砂種は爬虫類か両生類のような鳴き声を上げた。
「いない!部員が!1人!」
 煙が晴れると、校長室から1人の人間が消えていた。
「くそっ!これだから100均はっ!」
 砂種が毒づいてから、顔を前に戻すと、
 無表情の校長。
「あ……」
 砂種は事態を理解した。
「こ、校長、ここはー、数学的帰納法的なアレをアレして……」
「まず、アポイント無しでここに乱入してきた件について話をしましょうか?」
 壁から生えた両腕が、臨戦態勢で構えていた。 
 

 
後書き
ぼちぼち更新していきます。
キャラとかが変わっても許してね。 
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