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地上の楽園

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3部分:第三章


第三章

「ここまで階級を確立させているのは」
「今時こんな国があるとはな」
「これでは封建主義だ」
「封建主義の欧州だ」
「いや、あれよりも酷い」
「とんでもない話だぞ」
「しかもだ」
 尚且つだった。
「その頂点にはあの領袖様がいるんだ」
「領袖様を頂点にした封建主義だ」
「何処が共有主義だ?」
「全然違うぞ、これでは」
「現代に出た絶対的な封建主義国家だ」
 そうした意見が出て来た。遂に。
「あの国はとんでもない国だぞ」
「しかも息子が後継者だと?」
「世襲の共有主義なんてあるのか」
「そんな国は聞いたことがないぞ」
「何処が共有主義だ」
 流石にだ。疑問の声が増えてきた。だが。
 新聞もテレビも。それはそれでだ。こんなことを言う始末だった。
「いや、あれはあれでいいんだ」
「後継者がたまたま自分の息子だったんだ」
「それだけなんだ」
「立派な人物だからな」
「だから後継者にしたんだ」
 こうだ。最早詭弁にしか聞こえないことを言い出すのだった。
「それに一代だけだろ?」
「それだと何の問題もない」
「普通のことだよ」
「それにだ」
 言い繕いながらだ。さらにだった。
 こんなこともだ。彼等は主張した。
「それなら他の国だって同じじゃないか」
「君主制の国も多いぞ」
「ああした国は無条件で世襲じゃないか」
「それに比べたらあの国は立派だぞ」
「優れた人がたまたま息子だっただけなんだからな」
「あの国はまともな共和国なんだよ」
 詭弁もここに極まれりだった。だが。
 それでもだ。事実はさらに酷いことになっていた。
 今度はだ。その息子の息子、領袖の孫をだった。
 何とだ。まだ子供の彼をだ。軍の元帥にしたのだった。
 これにもだ。多くの者が唖然となった。
「小学生で元帥だと」
「そんな話は聞いたことがないぞ」
 共有主義の世襲以上にだ。多くの者が驚いた。
「しかも元帥ということは」
「あの子供も後継者になるのか?」
「やっぱり世襲じゃないか」
「あの国は本当に共和国じゃないぞ」
「どう見ても」
 疑念はさらに広まりかつ深まっていた。尚且つ。
 それに加えてだった。その軍もだった。
「二千万を超えるかどうかの人口で百万の軍隊か」
「国民皆兵だというが」
「国の経済にどれだけ負担をかけているのか」
「財政は大丈夫なのか」
 軍は財政に負担をかける。だがその軍にだ。
 その国は驚く程人間も予算も投入していた。それはまさに。
「あれこそ軍国主義だ」
「かつての我が国なんてものじゃないぞ」
「あそこまで極端な軍国主義国家はなかったぞ」
「まるでスパルタだ」
 かつて古代ギリシアにあったその軍事国家の如きだというのだ。
 しかもだ。何かあればだ。
 好戦的な言動を繰り返しだ。戦争をしたくて仕方ない感じだった。そうした言動まで見てである。心ある者達はさらに疑念を抱いた。
 
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