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美しき異形達

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第五十三話 山師その十二

 そしてだ、そのうえで言ったのだった。
「最初の子を生み出した時、その子が動き喋り成長していくのを見て」
「人間だって思ったのか」
「わかったのだよ」
 思ったのではなく、というのだ。
「そうなったんだよ」
「そうか、それでか」
「何度か生み出してきた」
 人造人間、言うなら薊達の兄弟姉妹達をというのだ。
「そして然るべき、子供を持つに相応しい人達にね」
「預けてたんだな」
「その成長を見守ってきたんだよ」
「成程な」
「人造人間は生まれ方が他の人と違うだけだよ」
「人間だっていうんだな」
「人は心で人になるんだ」
 生まれや姿形から決まるものではないというのだ。
「普通の生まれ方でも心が人でないのならね」
「人でなくなるんだね」
「怪物や化けものになるんだよ」
「そういえばな」
 薊も伯爵のその言葉に納得するものを感じた、そのうえで。
 腕を組んだ姿勢で納得してだ、こう言ったのだった。
「そういう奴いるな」
「サイコ殺人鬼等がそうだね」
「確かにな」
「そうだね、人は心で人になるのだよ」
「そういうことなんだな」
「断言する、君達は人間だよ」
 伯爵は微笑みつつも強い声でだ、薊達に言い切った。
「そこに微塵の疑いもないよ」
「だからこの戦いが終わった後は」
「君達の人生を歩むんだ」
「人間としてか」
「進学、就職、結婚、出産、育児、老後」
 人生の出来事もだ、伯爵は言ってみせた。
「その全てを楽しむんだ」
「あたし達皆が」
「これまでの皆もそうしてきた」
 伯爵が過去に生み出した人造人間達もというのだ。
「だからね」
「あたし達も人生を楽しむ」
「そうするんだ、いいね」
「ああ、そうさせてもらうな」
「では君達がこれからの人生を楽しめる様になる為に」
 リムジンに顔を向けてだ、伯爵は薊達に話した。
「私も行かせてもらうよ」
「悪いな」
「また言うけれど悪くないよ、それと」
「それと?」
「実はまだ君達が生まれた場所が残っている」
 伯爵は温和な笑顔で薊達にこのことも話した。
「その施設がね」
「へえ、そうなのか」
「見てみるかな」
 微笑みのままだ、薊達に問うた。
「これから少し寄って」
「いや、それはな」
「別にいいです」
「折角のお誘いですが」
「あまり、そうした場所には」
「行こうと思いません」
「どうも」
 どの少女達もこう言うのだった。
「何かそこを見ても」
「あまりどうも思わないでしょうし」
「ですから別に」
「いいです」
「お気持ちだけ受け取っておきます」
「そうさせてもらいます」
「何かさ」
 薊もだ、首を傾げさせつつ伯爵に答えた。 
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