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美しき異形達

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第五十三話 山師その十

「終わらせに行くよ」
「そして私もね」
「是非共頼みたいにしても」
 薊は伯爵に協力を仰いだ、だがそれでもだというのだ。
「本当にいいんだよな」
「どちらにしろ私も行くつもりだったよ」
「あの伯爵を止める為にか」
「実は組織から彼の今回の行動について処断が決まったんだよ」
「ああ、そうなのか」
「彼についてはこれまでも何度かそうしたことがあったけれど」
 カリオストロ伯爵についての話もするのだった。
「今回のこともね」
「やっぱりまずいんだな、組織としても」
「我が組織の目的は錬金術を人の為、世の為に使うもの」
「じゃああたし達に怪人を差し向けることは」
「よくない、けれど組織でも議論があってね」
「議論?」
「君達は人造人間だからね」
 このことから議論になったというのだ。
「人間とは何か」
「人間から生まれたものっていうのかい?」
「そう、そして人間だけが魂を持っていて」
 そして、というのだ。
「魂があるからこそ人間だけという考えがあってね」
「だからあたし達はか」
「人間なのかどうか」
 それが、というのだ。
「議論があってね」
「だから人を害するのかどうか」
「そうなるのかどうかということでね」
「ずっとあの伯爵への処断が決まらなかったんだな」
「そう、けれど君達は組織の議論の結果ね」
「人間になったんだね」
「そうだよ」
 伯爵は微笑みつつ薊に話した。
「人造人間は人間だとね」
「そうなったんだな」
「人間とは何か」
 伯爵は薊達にこうしたことも言ったのだった、それは薊達にとって極めて重要なことであった。彼女達が人間なのかどうか。
「それは姿形や生まれではないんだよ」
「じゃあ何で人間になるんだい?」
「心だよ」
「つまり魂か」
「そう、人間の心を持っているのなら」
「前にも話してくれた様にか」
「それで人間になるんだ」
 こう話すのだった。
「だから君達は人間なんだよ」
「そうなるんだな」
「だから組織も彼を人を害するとして処断を決めたんだ」
「そしてその処断をか」
「私に委ねてくれたんだ」
 組織がだ、そうしてくれたというのだ。
「だから私も同行させてもらうよ」
「戦わないよな」
「正確に言うと戦えないよ」
 そちらになるというのだ。
「組織の決まりでね」
「それはあっちの伯爵もだよな」
「そうだよ」
「戦うことはか」
「しないよ、ただ拘束することはね」
 サン=ジェルマン伯爵がカリオストロ伯爵をだ。
「それは出来るからね」
「あと幻術を破ることもか」
「出来るよ」
 そちらもだというのだ。
「勿論彼の逃げ場所を塞ぐこともね」
「じゃあ」
「君達の力になれるよ」
 絶対にというのだ。
「だから任せてね」
「頼むな」
「うん、それとだけれど」
「それと?」
「君達は私と天極博士が生み出したけれど」
「あたし達に人間として生まれ育って欲しくてだよな」
「博士はご子息はおられたけれど」
 つまり智和の父である、彼は自身の父とは違い学者にはならず他の分野に進みかなりの成功を収めている。 
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