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美しき異形達

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第五十三話 山師その六

「そうしたものじゃよ」
「ううん、難しいね」
「人の心って」
「中々ね」
「善悪がつきにくいんだね」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、博士も答えた。
「心は善であり悪でもある」
「そうだな」
 彼は博士のその言葉に素直な調子で頷いた。
「人間は殆どの奴が善と悪を持っている」
「ごくごく稀にどちらか一方しか持っておらぬ者もおるがな」
「ごくごくだな」
「しかしそんな人はそうそうおらぬ」
「完全な善人、完全な悪人にはか」
 良心が全くない者は確かにいる、そして悪意が全くない者も。サイコパスやそうした人間もいるのが世の中だ。
 だがそれでもだとだ、博士は語るのだ。
「しかし大抵はそうじゃ」
「善と悪が共にあるな」
「その心の中にのう」
「ではだ」
 また言った彼だった。
「あの伯爵もだな」
「うむ、悪を持っているがな」
「善も持っているか」
「あれでも結構な数の命を救っておる」
 詐欺師であり薊達の命を狙っているがそれでもなのだ。
「医師でもあってな」
「だから錬金術師の組織にもいるのか」
「サン=ジェルマン伯爵と共にな」
「そうか」
「悪人じゃが善も持っておる」
「吐き気を催すまでではないか」
「そこまでの悪人ではない」
 それがカリオストロ伯爵だというのだ。
「だからな」
「極限まで悪辣なことはしないか」
「詐欺をするにも善人からはしなかった」
「悪人に対してだけか」
「そうじゃ、まあ今回はな」
「あの娘達がだな」
「自分達の力で解決する」
 薊達がというのだ。
「必ずな」
「屋敷の場所さえわかればか」
「後はな」
「では俺の仕事は終わりか」
「悪いのう」
「いい、たまにはこうした仕事もいい」
「お礼はケーキでよいか」
 博士は飄々とした感じでチョコレートのデコレーションを出した、その上にはチョコレートクリームとチョコレートでお菓子の家や鳥が作られている。
「これで」
「結構以上だ」
「ならよい、では貰ってくれ」
「そうさせてもらおう、家に持って帰ってだ」 
 彼はそのデコレーションを受け取りつつ言った。
「妹と一緒に食う」
「では後はわしがじゃ」
 博士からまた言ったのだった。
「天極君達に連絡をしておく」
「屋敷の場所を」
「これでこの話は終わりに向かう」
「あの娘達が終わらせるか」
「自分達の運命を終わらせてじゃ」
 博士は暖かい笑顔の中でこうも言った。
「新たな運命をはじめるのじゃ」
「そうなるか」
「うむ、必ずな」
 博士は友人達と共に話していた、そして。
 この話の後で智和に連絡をした、智和はその話を聞いてすぐにだった。自分の屋敷に薊達を呼んで話したのだった。
「カリオストロ伯爵は六甲にいてね」
「あそこか」
「うん、その場所はね」
 六甲のどの山の何処にいるのかをだ、彼は少女達に話した。 
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