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美しき異形達

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第五十二話 来訪者その五

「所詮と言ってしまえるわ」
「あくまで最大の敵はな」
「カリオストロ伯爵よ」 
 彼だというのだ。
「彼を見付けてね」
「こんな戦いを終わらせないとね」
「あたし達に怪人をけしかけることを止めてもらうか」
「止めてもらえないと」
 その時はとだ、また言った黒蘭だった。
「どうするのかしら、薊ちゃんは」
「その時はな」
 薊は黒蘭の問いに覚悟している顔で返した。
「やるしかないだろ」
「カリオストロ伯爵とも」
「戦うしかな」
 ないというのだ。
「その時は」
「その覚悟もしてるのね」
「やるからにはな」
 薊は決して好戦的ではない、だが。
 やるからにはだ、覚悟を決めてというのだ。
「とことんまでしないとな」
「駄目というのね」
「ああ、何でも元から終わらせないとな」
「物事の解決にはならないわね」
「だからな」
「カリオストロ伯爵が私達との戦いを止めないのなら」
「その時はな」
 薊は覚悟を決めた顔のまま言った。
「やってやるさ」
「わかったわ、ではね」
「その時はか」
「もう私達は同じよ」
 同じ運命だというのだ、力を持っている者そして人造人間同士として。
「戦いを終わらせないといけないわ」
「そういうことだからか」
「伯爵と。必要があれば」
 まさにだ、薊が覚悟を決めるというその時はというのだ。
「戦うわ」
「そうか」
「ああ、じゃあな」
「私達もカリオストロ伯爵を探したいわね」
「あたし達自身でもな」
 二人で話してそのうえで菖蒲達のところに戻った、するとそこで。
 薊達の横から拍手がして来た、薊がその拍手の方を見ると。
 そこには赤いスーツとズボンにネクタイと靴、そして白いブラウスという格好の白人の者がいた。初老という感じの顔で左右にカールさせて巻いた髪にだ。
 緑の猫に似た目を持っている、その彼が悪戯っぽい目でだ。
 拍手をしていた、その彼にだ。
 薊は視線も向けてだ、こう言った。
「おじさん、まさか」
「お見事と言っておきたいところだけれど」
「只者じゃねえよな」
「一目でわかった様ですな」
「どっちの伯爵だい?」
 そこまでだ、薊は察して彼に問うた。
「一体」
「そこまで察しているとはね」
「認めるってことだよな、今の言葉は」
 薊は彼の言葉から察してこうも言った。
「あんたがどっちかの伯爵ってことを」
「その通りと言えば」
「赤い、ってことは」
 このことからもだ、薊は言った。
「サン=ジェルマン伯爵か」
「頭がよい方ですな」
「皮肉かい?いや、違うか」
「思ったことを言ったまでなので」
 気取りながらもだ、礼儀正しい調子での言葉だった。そこに妙な人懐っこさも感じさせるそうした言葉だった。
「わたくしも」
「そうか、でサン=ジェルマン伯爵だよな」
「その通り」
 笑顔で認めた言葉だった。
「私がサン=ジェルマン伯爵だよ」
「そっちから出て来るなんてな」
「意外だったかな」
「いや、あんたは神出鬼没だっていうしな」
「気まぐれとも聞いていたね」
「ああ、だからな」
 それで、とだ。薊は伯爵に答えたのだった。 
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