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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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女教師の時間(2016/05/16 一部修正)




【視点:樹】



俺がこのタコもどきによって月の7割が破壊された世界にやって来て早1週間。今の所、タコもどき――殺センセーの暗殺に俺はノータッチだったりする。

この世界に来て3日目――登校初日の朝礼で、試しに炎の道(フレイム・ロード)の派生――時の技で秒間数十発の拳打を打ってみたけど、殺センセーに当たったのが、僅か1発だったからな。

けど、複数の道を組み合わせたら何とかなりそうな気がしたので、道の組み合わせの試行錯誤と鍛錬に時間を費やす様になったって訳だ。

まぁ、それでも鍛錬に費やす時間は1日平均3時間といった所なんだけどな。俺にも資産確保とか、色々としなきゃいけないことがあるしな。

今は烏間さん――いや、烏間先生が用意してくれた1DKインターネット完備付のアパートに住んで、家賃光熱費代以外に1ヶ月分の生活費として20万円貰っているんだ。

けど、いつまでも養われる様な生活を送るのは、俺の矜持に反するってこともあって、鍛錬以外に資産確保にも時間を割く様になったんだ。

一応、資産確保の為に俺がどういったことをしているか説明しておこうか。基本はノーパソを使った株式オンライントレードだ。授業中にやっていて、殺センセーに怒られたこともあるが――――


「俺、人に寄生して生きて行くつもりないんで。これから先のことも考えると、資産確保は必須なんだよ」


って言ったら、黙った。まぁ、事実この世界に親がいない俺が生きて行くには個人資産を確保しなきゃいけないのは事実だからな。

あっ!ちなみにオンライントレードの元手は烏間先生から貰った生活費の20万だ。それを5日で800万にまで増やした。そして、この世界にやって来て最初の休日――土曜日に、俺はその800万を元手に分刻みで世界中を飛び周った。

使用済みの携帯電話を大量に買い取って、その中から取り出したレアメタルを海外に売りに出したり、東南アジアで不動産売買をしたり。まぁ、色々だ。

その結果、僅か1週間で俺の総資産は数十億にまでなった。やっぱり、人間成功する為には何事も行動に移さないと駄目だよな。

このまま行けば、来週の日曜までには総資産が50億は超えるだろうから、来週にでも烏間先生には借りた金に色を付けて返して、このアパートから引っ越したいと思う。

あっ!言い忘れていたけど、俺が暗殺に積極的に参加しないのには、他にも理由があるから。最大の理由は資産確保と速度だが、対殺センセー素材でできた俺専用の武器が無いのも理由の1つだったりする。

俺の戦闘方式は基本的に徒手空拳だからな。一応、ナイフとエアガンは持っているけど、烏間さんに頼んで対殺センセー物質でできたフィンガーグローブを用意して貰っている所なんだ。

そんな訳で、本格的に暗殺に参加していなくてもクラスメイトとの関係が悪化するということは今の所は無い。

寧ろ、体育の授業で模擬戦とかして、暗殺者としての知識から改善点を指摘したりしているから、関係は良好と言えるだろう。と、そんな説明をしている間に暗殺対象(ターゲット)が教室にやって来た。


「皆さん、おはようございます。今日からこのクラスに新しい講師が来てくれます」


そう言いながら現れた殺センセーの触手には、1人の金髪女性が抱き着いていた。殺センセーと金髪女性の後に続く様に、烏間先生も現れた。


「殺センセー。その女の人はセンセーの愛人か何かッスか?愛人を学校に連れて来るとか、教師にあるまじき行為じゃねーの?」
「にゅやーーーッ!南君、私と彼女はそんな関係ではありません!!」
「いや、そんな見せつける様に触手と腕を組まれた状態で言われても、説得力は皆無だろ。新しい講師とか嘘言わなくていいんで、本当のことをゲロっちまえよ」
「だから、私と彼女はまだ付き合って――――」
「まだ、ってことは今後付き合う予定があるんだ。あと、センセーは胸をチラ見し過ぎ。巨乳好きなの?おい、クラスの女子!絶対に殺センセーと2人っきりになるなよ。相手が女なら生徒でも見境なく胸をガン見してくるかもしれねぇぞ!!」
「ちょっ、南君!?これ以上先生を弄らないで下さい。って、ああ!女子の皆さんが汚物を見る様な目で私を!!」


少し弄ると面白いほどに狼狽して、俺の掌で踊ってくれる。暗殺時は思い通りに行かないだろうけど、それでも俺は殺センセーとのこの遣り取りが楽しいと思っている。今までの人生で人と接することでここまで楽しい思いをしたことがあるだろうか?


「話が進まんから、そいつ弄りはそこら辺で止めてくれ。南君」
「ウィーッス」


そんなことを考えていると、烏間先生に軽く注意された。まぁ、俺としても話を進めたかった所だし、殺センセー弄りは一旦中断しよう。


「さっきこのタコも言っていたが、彼女は今日からこのクラスに赴任してきた外国語の臨時講師だ」
「イリーナ=イェラビッチです。皆、よろしくね!」


女教師は殺センセーにベタベタしながら自己紹介をして来た。ってか、殺センセー普通にデレデレしていてキモい。


「殺センセー、デレデレした顔が普通にキモいわ。あと、本当に中学生相手でも女なら欲情しそうな気がして来たんで、今後1人でいる女子には近寄らない様にしてんない?その触手に触れられただけで女子が妊娠するんじゃないかって心配でなんねぇから」
「南君は先生に恨みでもあるんですか!?今日は毒を吐き過ぎです。あと先生、一応生殖能力はありますが、触れただけで妊娠させるなんて能力はありません!!」
「生殖能力って、朝っぱらから何言ってるんの。殺センセー?卑猥にも程があんだろ!流石に俺もドン引きだわ。ホラッ、女子もドン引きしてるよ」
「ああ!皆さん、そんな「まるでゴミの様だ」と言わんばかりの目で私を見ないで下さい。私、生徒には絶対に手を出しませんから!!」
「ってことは、自分の生徒以外で巨乳なら14~5の少女にも手を出すってこと?本当、淫猥教師だな。キモいんで死んでくんない?」


そう言いながら、俺が対殺センセーナイフを投げると、その機に乗じて赤羽を含む数名のクラスメイトが俺と同じ様に対殺センセーナイフを投げていた。

ちなみに、対殺センセーエアガンを使わなかったのは、女教師が殺センセーにくっ付いていたからだ。エアガンって、当たると地味に痛いんだよな。

それに暗殺の為とはいえ、暗殺対象(ターゲット)以外の犠牲者を出すことを前提とした暗殺は、殺センセーがキレる可能性があるって事前情報を潮田から貰っていたからな。

エアガン撃って、女教師に対殺センセーBB弾が当たった日には、キレられる可能性が十二分にある。だからこそ、便乗した奴らも投げナイフな訳だ。

まぁ、銃弾より速度の遅い投げナイフに殺センセーが当たる訳ないんだけどな。殺センセーは全てのナイフをハンカチ越しでキャッチし、律儀にも投げた生徒の机に置いていた。

流石はマッハ20、と普段の俺なら称賛している所だ。しかし、今回は違った。それは俺が殺センセーの微妙な変化に気付いたからだ。

今回の殺センセーは普段の殺センセーと違って、ナイフをキャッチするまでの初速が若干遅かったんだ。どうやら、殺センセーの速さは精神状態に左右される様だ。つまり、精神攻撃は効果的ってことだな。


「南君、いい加減先生を苛めるのは止めて下さい。先生、泣いちゃいますよ?」
(わり)ぃ、殺センセー。けど、今後もセンセー弄りは止めねぇ。だって精神攻撃を受けた直後のセンセー、触手の初速が若干遅くなるみたいだし。
センセーの速さって、精神状態に左右されるんじゃねぇの?それを検証する為にも、今後も存分に弄らせて貰うから、覚悟しといてくれ。淫猥センセー」
「み、南君。後生ですから淫猥センセーは止めて下さい。いつも通り、殺センセーと呼んで下さい」
「けど、淫猥センセーを殺す為には弱点を調べなきゃなんねぇし、その為には弱点に成り得る事柄をちゃんと検証しねぇと。ね、触手SMプレイ大好きセンセー」
「私に変な属性を勝手につけないで下さい!先生はSMプレイなんて好きじゃありません!!……まったく。南君の言う通りです。先生の触手を始めとした速度と精密動作は、精神状態によって左右されます。認めますから変な呼び名は止めて下さい」
「認めてくれるのなら、変な呼び方も止めてやるよ。モロ先生」
「南君、モロ先生ではなく殺センセーです」
「すみません。噛みました」
「いいえ、態とです」
「噛みま死ね!」
「やっぱり態と!!?」
「彼は見た!!」
「あれ!?態とじゃなかった!!?というか。誰が何を見たんですか!!!?」


……うん。やっぱり、弄り甲斐のある先生は面白いな。クラスの皆も、俺と殺センセーの遣り取りに笑ってるし。まったく、殺し難い先生だ。最終的には殺すけど。

この後、殺センセーは女教師に目や曖昧な関節が素敵と言われていたが、俺に弄られたこともあって締まりのある顔とデレデレした顔が一緒になった中途半端な顔を俺達に晒すこととなり、朝礼と短HRは終了した。

そして時間は過ぎ、昼休み。殺センセーを含め一部の生徒を除いたクラスのほぼ全員でサッカーをしていた。俺と殺センセー以外の全員の手に対殺センセーナイフとエアガンが無ければ、普通の昼休みを楽しむ学生の図になっていただろう。

「ヘイ、パス!」という呼び掛け以外に、「ヘイ、暗殺!!」って呼び掛けている奴もいるし。まぁ、そういう俺もサッカーボールを殺センセーの顔面や鳩尾目掛けて思いっきり蹴っている訳だけど。

殺センセーの場合、サッカーボールを200km/hの速さで当てても死ぬことは無い。けど、そうすることで他のクラスメイトの攻撃から気を逸らせることぐらいはできるだろうからな。

俺達がそんな遊びも交えた暗殺を運動場でしていると、校舎から1人の人間が近付いてきた。今朝紹介された女教師、えっとビッチ先生だったか?


「殺センセー!烏間先生から聞いたんですが、マッハで移動できるんですって?」
「マッハ20で移動できますが、大したことありません」
「お願いがあるんです。私、一度でいいから本場のベトナムコーヒーを飲みたくて、私が英語の授業をしている間に買って来て下さらないかしら?」
「お安いご用ですよ。私お勧めの店がありますから、すぐに買って来ましょう」


ビッチ先生のあからさまな色仕掛けに殺センセーは鼻の下を伸ばし、ベトナムに向かってマッハで飛んで行った。


「……で、もうすぐ午後の授業が始まるのに、殺センセーを追い出して何する気なの。イェラビッチ先生?あんた、授業する気なんて毛頭ねぇだろ。政府が雇った暗殺者っぽいし」
「……へぇ、何時から気付いていたのかしら?坊や」
「教室で会った時から。あんな触手生物にベタ惚れになる様な女は普通いねぇよ。いるとしたら、触手プレイ願望のある痴女くらいだ。どうせ、色仕掛け専門の暗殺者とかなんだろ?あんた」
「察しが良過ぎるのも問題よ、坊や。あと、授業に関しては各自適当に自習でもしてなさい。私は暗殺者。あのタコの前以外で先生を演じる気はないの。
それと、あのタコがいない場では私のことをイェラビッチお姉様と呼びなさい。ガキに気安くファーストネームで呼ばれるのは不愉快だわ」
「んじゃ、ビッチ先生って呼ばせて貰うわ」
「変な略し方するな!!」
「ビッチ先生。26人からの一斉射撃や秒間数十発の拳打で殺せないタコを、色仕掛けしか能の無さそうなあんたが殺せるって本気で思ってる訳?」
「………ムカつくガキね。大人には大人の殺り方があるのよ」


俺の質問に対してビッチ先生はそう返して来ると、潮田にディープキスをし、殺センセーの情報提供を強要。ディープキスをしていない生徒にも有益な情報があれば話す様に告げると、いきなり現れた怪しい3人組の男と共に校舎巡りへと行った。


 
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