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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第33話 暗殺者の武器はナイフが主流

 
前書き
どうも、蛹です。
題名の意味としては、暗殺者と言えば忍者刀のような長い武器よりも
小振りで使いやすいナイフの方が主流だというのが私的な意見です。
ただ、それが言いたかっただけです。すいません。

暗殺者と言えば、やはりジャパニーズニンジャ!
そして、忍者の武器と言えばやはり手裏剣!ですよね。
でも、あの「シュシュシュ!」ってのは無理ですよね?
掌に複数枚乗せて掴んで投げるってアレです。
絶対、人を殺せるほどの威力ありませんよね?
それなら一枚ずつ指で掴んで振りかぶって投げた方が
よっぽどすごい威力ありますよね?
以上、素朴な疑問でした。

"気配遮断(サインカット)"を使用している“葉隠(ハガクレ)”を
あっさりと見つけて攻撃を仕掛けたアスラ。
ここから一体どんな戦いを見せてくれるのか!
それはこの後すぐに分かることです。

それでは第33話、始まります!! 

 
「見つけたぜ!」

 ジャキンッ!! フォンッ!

アスラはそのまま追撃を仕掛けた。
しかし、葉隠の反応が早かったので
二発目の居合は当たらなかった。

「クソッ!」

葉隠はそのままバックステップで
樹の上を転々と移動して行き
再びアスラ達と距離を置いた。

「逃がすかッ!!」

アスラは地面に降りて、走って追いかけて来た。
しかし、葉隠の方がスピードは速く
どんどん距離は広がっていった。

『ハァ、ハァ、何でさっき居場所がバレたんだ!?
 ″超技術″は確かに発動していたはず‥‥‥‥‥』

そして再び気配を断って、茂みの中に姿を隠した。
しかし、アスラは迷うことなく突っ込んで来ている

「右斜め前の茂みだッ!!」

迅が後ろから大声で叫んだ。
それを聞いたアスラは日本刀の柄に手を掛けた。
そう、その右斜め前の茂みこそ―――――――――――

 ジャキンッ! ザンッ!!

「くッ!!」

葉隠の隠れていた茂みなのである。
この一撃も葉隠には紙一重で当たらなかった。
そして、彼は三度アスラ達から距離を置いた。
この数回の異変から葉隠は一つの答えを結論づけた。

『まさか直接的に俺を探知する″超技術″を
 使える奴がいるとはな‥‥‥‥‥』


彼の″超技術″、″気配遮断(サインカット)″は
あくまで気配を断つだけで存在そのものが
消えてしまうわけではない。
故に、肉眼でも確認することが出来るし
機械のレーダーや赤外線探知にも引っかかってしまう。


つまり、アスラ達の中に葉隠を物理的に
探知する能力を備えた者がいるはずなのである。
そうでなければ、こうも精密に俺の位置を
認識することなど出来ないはずだからである。

「お前の位置はもうバレてるんだ!諦めて出て来いよ!!」

アスラは葉隠がどこに隠れているのか分からないので
とりあえず正面に向かって大声で言った。

「‥‥‥‥‥‥‥」

 ガササッ ズザッ!

葉隠がアスラのやや左にある木の上から降りて来た。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
その目には何か大きな意志を感じられた。

 ヒュンッ!

葉隠は服の中から“苦無(クナイ)”を取り出した。
先程、ジェーンに強襲を仕掛けた時のナイフより
少し小さめに見えるが、ナイフよりも
振り回す際の動きに慣れが見えた。

「出来ればこれは使いたくなかったがな」

 ヒュヒュンッ!

いつの間にか“苦無(クナイ)”は二本に増えていた。
瞬間的に懐から取り出したのか。
それとも、あらかじめ二本持っていたのか。
どちらにしても、見えている“苦無(クナイ)”だけを
見切りながら戦うのは危険だろう。

「お前らを‥‥‥‥殺す」

 ヒュヒュッ!!

葉隠の投げた二本の“苦無(クナイ)”が刃の方を向け
アスラに向かって真っすぐに飛んできた。

 キキィンッ!!

彼は二本を完全に見切り、日本刀で弾いた。
おそらく、今のは小手調べだったのだろう。
見えない程のものではなかった。
そして、いつの間にか葉隠は姿を消していた。

『逃げた‥‥‥‥‥いや、違う』

逃げたのではない。気配を断ちながら
木の上を高速で動き回っているのだろう。
止まっていれば、迅から位置を教えられるからだ。
しかも、そんな速度で動き回っているのに
木の上からはほとんど音が聞こえてこなかった。
枝に着地する音も、移るために枝を蹴る音も
僅かに吹く風に揺らされる木々の音にかき消されて
アスラの耳には全く聞こえなかった。
これが、暗殺術を極めた者だけが使える技術なのだろう。

『敵ながら、凄い男だ‥‥‥‥‥』

アスラは心の中で、葉隠をこう評価した。

『コイツ‥‥‥俺の位置がわからないはずなのに
 未だに集中力を持続してやがる』

音もなく姿も見えない敵と対立していれば、他の物に
意識を持って行かれて、少なからず油断してしまうものである。
しかし、アスラの集中力は未だ
葉隠に向けられたまま途切れずにいる。
戦いの為に常に鍛え続けて来た者ならば
分からない事もない。しかし、今それをしているのは
まだ二十歳も迎えていない、若き少年なのである。
これは、彼の天性の才能と呼べるものなのだろう。

『こんな子供が、凄ぇモンだな』

葉隠も、アスラを高く評価した。
二人のいる戦場には、しばらく
沈黙だけが響き渡っていた。

「‥‥‥‥‥‥‥!!」

 ヒュンッ!

ついに葉隠が攻撃を仕掛けた。
かすかに風を切る音が聞こえたかと思えば
縦回転をしながら、アスラの方に
一直線に“苦無(クナイ)”が襲いかかった。
しかも、先程とは段違いのスピードだった。

「ぐっ!」

 カキィンッ!

アスラはギリギリで投げつけられた“苦無(クナイ)”を
日本刀を振り抜いて弾き落とした。
しかし、それだけでは終わらなかった。

 ヒュヒュヒュヒュンッ!!

今度はほぼ同じタイミングで
別々の角度から“苦無(クナイ)”が襲いかかって来た。
気のせいだろうか、先程よりもさらに
スピードが上がってきている気がするのだが。

 ガガンッ!!

「んぐッ!」

それに比例して重さも上がっている。
まるで振り下ろされた槌のような
非常に重さの乗った一撃だった。
速さと重さのある“苦無(クナイ)”の猛撃に
アスラは二本しか防ぐことが出来ず。

 ガンガンッ!!

残りの二本は腹部と左腕の"鎧骨格"に弾かれた。
もし"鎧人"でなければ、内臓ごと抉られて
そのまま戦闘不能。死を待つばかりだっただろう。
だが、合金に匹敵する"鎧骨格"の硬度の前では
さすがの重さの乗った“苦無(クナイ)”でも
破壊するのは不可能だろう。だが―――――――

「‥‥ぐっ‥‥‥‥‥」

その一撃は体内にまで響いて、上手く力が入らない。
特に直撃した左腕はひどく、握ることさえままならなかった。

 ザッ! ザザザザザザ‥‥‥‥

今度は近くの木を葉の敷き詰められた中
比較的小さめの音と共に下りて来て
二本の“苦無(クナイ)”を逆手に持ち
両手を前にしたまま接近戦を仕掛けて来た。

「‥‥‥クソッ!!」

アスラの左手は未だ衝撃で痺れたままなので
いつもなら得意なはずの接近戦は
圧倒的に不利な状況から始まることになった。

 ズザッ!

葉隠は少し離れた距離から跳んできた。
瞬間、距離はすごい速さで縮まっていった。
そして、空中から左右の腕が高速で振り下ろされた。

 ガンガガンガンガンガガガンッ!!

アスラは日本刀を右手と左腕の肘で
受けるたびに肘の位置を変えて防御に徹することで
葉隠からの猛撃を何とか防ぎ続けた。

「‥‥‥‥‥‥やるじゃねぇか」

こうつぶやくと同時に葉隠は
急に攻撃を止め、再び木の上に退避していった。
何故かわからず辺りを見回すとアスラは
彼が攻撃をやめた理由について理解した。

『‥‥あれは攻撃兼“回収”ってワケか』

アスラの足元に散らばっていなければならない物。
彼の日本刀によって弾き落とされた“苦無(クナイ)”が
どこにも見当たらなかった。
つまり、彼はアスラに攻撃を仕掛けながら
自らの武器を回収していたのである。
始めは遠距離攻撃して、途中で近距離攻撃をしつつ回収。
このローテーションを繰り返していれば
苦無(クナイ)”が尽きてしまうことはないだろう。
まさに、体力が物を言う作戦だった。
 
 ヒュヒュンッ!

再び“苦無(クナイ)”がアスラに襲い掛かって来た。
先程と変わらず一直線に突っ込んで来ていた。

 ガンガンッ!

「グッ、ングッ!」

一体どんな投げ方をしたら、木の上を高速で移動しながら
大きく振りかぶって投げたかのような威力で
苦無(クナイ)”を投擲することが出来るのだろうか。

 ザクッ!!

「えッ!?」

いつの間にかアスラの右足に“苦無(クナイ)”が刺さっていた。
本来なら、″鎧骨格″の前に弾かれているはずだが
この激痛と目の前の状況。間違いなく刺さっている。

『一体どうやって‥‥‥‥‥!?』

よく見れば“苦無(クナイ)”の先端は″鎧骨格″の隙間に刺さっていた。
隙間が小さかった為、深くはないが、浅くもなかった。
さっきの投げの後に少しタイミングをズラした事で
二本に注目していたアスラにとっての死角に入っていたのだ。
動きで身を捩るたびに僅かに開く隙間。
そこを狙って正確に当てるコントロール。

「やばい、この男‥‥‥んぐッ!‥‥‥‥相当強い」

 ズボッ!!

アスラは鎧骨格の隙間に刺さった“苦無(クナイ)”を
右足から引き抜きながらつぶやいた。
蓋の抜かれた傷口からは鮮血が溢れだした。
この程度の傷ならばすぐに再生するとはいえ
完治までには数分かかるだろう。
それまでは満足に動くこともままならないだろう。

 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!!

ここぞというかのように無数の“苦無(クナイ)”が
アスラに襲い掛かって来た。しかし、さっきより視界は広まった。
まっすぐに飛んで来る物の影に隠れているものも見えている。
だが、問題はその受け方である。この右足では
あの威力の“苦無(クナイ)”を受け切るのは不可能だろう。

『だったら!』

アスラは無数の刃の雨に背を向けた。
左足を立てて、跪いたのである。
通常、この行為は愚行としか呼べないが
こういう場合にはこの技は向いていた。

 ガガンッ!ギンギンッ!ガギギギンッ!!

苦無(クナイ)”は耳に痛い音を立てながら
背中を弾けて地面に落下した。
しかし、血は全く噴き出していない。
つまり一本も体に刺さっていないのだ。

『ほぅ、考えたな‥‥‥‥』

人間の身体は正面に比べて背中の方が耐久力が高くなっている。
例えるなら、丸くなって身を守るダンゴムシやアルマジロを見れば
よく分かることだろう(それと直接的な関係はないが)
甲虫であるカブトムシもそれは同じで、腹部よりも
背中側の方が圧倒的に硬くなっている。
今までアスラは全ての攻撃を正面で受けてきたが
それは、全体的な″鎧骨格″の硬さは同じと思っていて
背中の防御力が特に高いなどとは知らなかったからである。
サウジアラビアに入る前に、迅からアドバイスを受け
もしも日本刀だけでは捌き切れない攻撃があった場合は
背中で受けろと言われたのである。

 ガガガンッ!ギンギンギンッ!

「すげぇ‥‥‥‥本当に効かねぇや」

若干ながら傷口に響くが、右足を膝下から付けている事で
地面との接地面を増やして安定性を保っているのだ。
直撃しても、立てている足をズラすことで倒れないようにしている。

 ズザッ!

葉隠が再び木の上から降りて来た。慌てていたのか
少し大きな着地音が聞こえたのですぐに分かった。
苦無(クナイ)”を拾いながらまっすぐアスラの方向に走って来た。

「いいぜ、来いよ」

アスラの右足は動かなかったのが良かったのか
そこそこ動ける程にまで回復していた。
近距離攻撃にも、これで対応しやすくなっただろう。
しかしこの時、アスラは忘れていた。

 ピンッ!

葉隠は懐から何か丸い物体を取り出した。
そして、上についたピンを引き抜いた。
次の瞬間、アスラは思い出した。

 バシュッッッ!!!

彼は暗殺者だということを。

「うッ!!」

眩い閃光が辺りを包み込み、アスラは目を細めた。
目の前で目くらましをされるなどとアスラは
全く想定していなかった為、葉隠の攻撃から
身を守る為に、反射的に両腕を交差した。
しかし、肝心の攻撃はどこからも来ず
目を開けてみると、目の前には誰もいなかった。

『ア、アイツはどこに‥‥‥‥!?』

葉隠は足音もさせずにジェーンたちの方向へと走っていた。
先程の様子から慌てているように見えていたが、彼は冷静だった。
それにも驚かされたが、視界の先の光景にはさらに驚かされた。
マリー、リオさん、そして迅が、何故か地面に倒れているのだ。
ジェーンとホークアイだけが駆けて来る葉隠を強く睨みつけていた。

「来いよ“暗殺者(アサシン)”ヤロー!」

ホークアイはジェーンの前に立ち
葉隠に銃口を向けた立ちふさがった。 

 ダンッ!!

葉隠は地面を強く蹴り、舞うかのように跳んだ。
横向きに回転しており、左手には“苦無(クナイ)”を持っていた。
これを見たアスラは気付いた。これが彼の投擲法なのだと。
前に進む推進力と横に回転する際にかかる遠心力。
この二つの力を完全に乗せて投げることで
あのスピードと重さを生み出していたのである。

「痛ッ!、クッ‥‥‥‥‥」

右足はまだ完治しておらず、走ることまでは出来そうにない。
アスラは必死になって叫んだ。

「避けろホークアイ!お前じゃ受け切れない!!」

それを聞いたホークアイは少し息をついた。
そして、アスラに叫び返した。

「オレだって男だ!か弱い女の子ぐらい守らせろッ!!」

言葉と裏腹に冷や汗が止まらなかった。
ホークアイをこの場に立たせているのは
ジェーンを命を懸けて守るという決意だけだった。

「‥‥‥‥喰らえ」

葉隠は“苦無(クナイ)”を握る手に力を込めた。 
 

 
後書き
葉隠は何と“苦無(クナイ)”使いでした!
しかも、推進力と遠心力を利用した独特な投擲法です。
関係ない話ですが、昔は“苦無(クナイ)”は職人の道具だったらしいです。

「オレだって男だ!か弱い女の子ぐらい守らせろッ!!」

今週のホークアイの名言ですww
動けないジェーンを守る際に彼が放った一言。
フィクションでしか出来ない事ですよね。
でも、唯一の人間代表であるホークアイにとって
この一言を放った彼の勇気を僕は称賛したいです。

葉隠は“苦無(クナイ)”をすでに投擲しようとしているが
果たして、ホークアイはどうなってしまうのか!
そして、ジェーンを守ることは出来るのか!
アスラはただ見ている事しか出来ないのか!

次回 第34話 吹き矢でバタッとすぐに倒れたらそれは命の危機 お楽しみに! 
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