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インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜

作者:
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貴公子の秘密と私の秘密

あれから数分後、シャワーの音がした後 脱衣室から出てきたのは女の子だった……。

「………」

「………」

うぅ……、沈黙が気まずい……。
私はその沈黙から逃れるように立ち上がるとお茶を沸かす、そしてその女の子に差し出す。

「その、熱いので気をつけてくださいね」

「あっ、うん。ありがとう……」

そして、また 沈黙。その沈黙が数分いや、数秒経った時だった。

「今まで騙しててごめんなさい」

「!?」

突然、謝ってきたのでびっくりした。私がビクっと肩を動かすのでデュノアさんがまた謝ろうとするのを私は止めた。

「いや。その、なんで男装なんてしてたんですか?」

「そっ、それは……実家から……しろって命令されて……」

「命令って……。実家ってあのデュノア社ですよね?」

「そう……」

(なんか、違和感を感じますね)
私は話だしてから曇り出したシャルルさんの顔が気になった。私はこの先を催促すべき、迷う。しかし、その迷いは無駄だったみたいだ。

「……ということは……」

「そのデュノア社の社長がね、僕の父親なんだ……」

(この先は聞いていいのでしょうか?)
今まで顔を下げていたシャルルさんは突然私の顔を見ると

「あのね。那珂さん、僕はね。愛人の子供なんだよ」

「えっ……」

余りにも衝撃的で思わず聞き返してしまう。
しかし、シャルルさんは悲しく笑っただけだった。そして、また下を向いてポツポツと話し出す。

「デュノア社に引き取れたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなった時にね、父の部下がきたの。それで連れて来られて、そこで色々と検査をするうちにIS適応が高いって分かって、非公式であったけどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」

所々震える声ではあったが、しっかりとした声で私に話してくれた。私はそれを相槌も打たずにただ呆然と聞いていた。

「その頃に父にあったのは二回くらい。会話は数回かな、どれも素っ気ない会話だったよ。で、普段は別邸で生活してるだけど、日本に行く前にね。一度だけ本邸に呼ばれたんだ。あのときはひどかったなぁ。本妻の人に殴られたよ。『この泥棒猫の娘が!』ってね。参っちゃうよね。お母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね」

チラっと私を見た、そしてあははと愛想笑いをするとまた床へと視線を落とす。私はそんな彼女をただ見つめることしか出来なかった。

「それから少し経って、デュノア社は経済危機に陥った」

「……、待ってください。デュノア社って量産機ISのシェアが世界第三位じゃなかったですか?」

「……」

しばし、沈黙したシャルルさん

「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。そのISの開発ってものすごくお金がかかるんだ。ほとんどの企業は国からの支援であってやっと成り立っているところばかりだよ。それでフランスは欧州連合の党合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防のためもあるけど、資本力で負ける国は最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ」

(流石、優等生です。分かりやすい)
うんうんと頷く私にプッと吹き出すシャルルさん。何が面白いか分からないが笑ってくれたのなら良かった。やっぱり、彼女は笑顔の方が似合うので……ってベタすぎますね。

「もう……那珂さんも。一夏と一緒で勉強ダメな人?」

「なっ!それは余りにも失礼です、一夏と一緒しないでください!」

「その言い方の方が一夏に失礼なんじゃ……」

しばし、笑うとシャルルさんはまた深刻な顔をして 話し出す。

「えっと、それじゃあ話を戻すね。それでデュノア社も第三世代型を開発しようとしたんだけど、元々遅れに遅れての第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」

「それがどうして男装に繋がるんですか?」

「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。それにーー」

シャルルさんは床から顔を上げて、窓を見た。どこか苛立ちを含んで少し罪悪感を含んだ声で続ける。

「同じ男子なら日本に出現した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータを取れるだろう……ってね」

「………」

「那珂さん、僕ね。あの人に白式のデータを盗んでこいって言われてるんだよ」

(……それで罪悪感ですか……)

「でも、それも今日で終わりだね。那珂さんにバレちゃったし、それにどっちにしろ。一夏から白式のデータを盗むなんて無理だったし……」

そこまで言うとシャルルさんは私をまっすぐ見つめる。そして、突然笑い出す。その笑い声はどこか諦めた感じもして悲しい感じもした。そんな無茶苦茶な笑顔を浮かべ続けるシャルルさんは数分笑うと私をまた見る。

「でも。那珂さんと同じ部屋になるなんて思わなかったな」

「私もです」

「一夏かな?って思ったら那珂さんだもん。僕、ちょっと嬉しかった」

「えっ!?」

「その……教室で一夏のために叩かれたでしょう?その、少しだけカッコいいなぁ〜と思って……」

「………」

絶句。そして、震え。

「なっ。なんで震えるの?」

「その……嫌なこと思い出しまして……」

その後、沈黙が落ちた。
チラッと隣を見ると清々しい顔をしていて、しかし その顔を浮かべるのを何故か心の奥の私が許せない。清々しいといえば聞こえがいいがはっきり言って諦めているのだ。自分の人生をこれからを。
(手段を選んでいる訳にはいかないみたいですね……)
私は隣に座っているシャルルさんの耳元で囁く。

「その……私も、シャルルさんに隠していたことがあるんです……。一夏や千冬お姉ちゃんにも言ってないことなので、秘密にしてくれたら嬉しいです……」

(なんか、キラキラオーラを出してますね)
女の人って本当、こういうの好きですね……。

「私……本当はーーー」

ゴクン
と唾を飲む音が聞こえる。

「男なんです……」

「……………?????」

あぁ……頭に?マークが並んでますね。見飽きた反応に思わずため息をつく。

「その嘘ついているわけじゃないよね?」

嘘をついてるのでは?と怪しまれる始末。私ってそんなに男に見えませんかね?

「その、これは私の親が言ったことなんですけど……もし、正体がバレて信用してもらえなかったら下を脱げと言われたんですけど……」

「し、下……?」

かぁあああと顔を真っ赤にさせるシャルルさん。

「そんなの、十代の女子に見せるものじゃないですし……それに、あの変態の言い分を受け入れるのが許さないんで上を脱ぎますね。その、下よりは大丈夫だと思いますし」

「えっ!?えっ!?えっ!?」

「だから、目を瞑っててください」

「えっ!?うん、分かった」

そう言って両手で目を隠すシャルルさん。私はゴソゴソと上を脱ぎ出した。

☃☃☃

「その目を開けていいですよ」

暫くして、その声が聞こえた。恐る恐る目を開けるとそこには上半身裸の男子がいた。

「………」

「どうですか?信じてもらえましたか?」

「えっ!?あっ……うん……」

僕は心ここに在らずで答える。それくらい、僕は彼の上半身に目を奪われた。
男性とは思えないほど、きめ細やかな肌。皮と骨しかないのでは?と思うほど細い身体。
って、僕 何ガッツリ観察してるの!?これじゃ僕変態じゃない!

「まぁ……信じてもらえたなら嬉しいです。って、正体バレてるから。素の口調でいいか〜」

そう言ってハハハハと笑う彼。

「シャルルも自分の事言ってくれたんだから、俺も言わなくちゃな。って言っても詰まらない話になるんだけど」

彼は笑顔を浮かべながら、ニコニコと話してくれた。

「俺、幼い頃両親を事故で亡くしてさ。孤児院に預けられたんだけど、そこで一夏と千冬お姉ちゃんと会って 二人も俺と同じ目にあっててでも俺と輝きが違うんだよ。あの二人、だからあの二人と一緒に遊べること。俺の友達だって言えるのが嬉しかった」

なんでも無いのに、他人事のように語るその話。でも、そんな顔をして語れるほどその話は明るいものじゃないなかった。

「でも、ある日。俺のせいで一夏が攫われたんだ、すぐに見つかったんだけど。一夏に怖い思いをさせちゃったな……と思って後悔したんだ。それがあいつ、ケロっとした顔して『女を守るのは男の役目だろ?』だってさ。ツッコミどころ満載だったけどそれより嬉しかった……。俺の事をまだ友達だって親友だって思ってくれてることが嬉しくて、それで俺も約束したんだ。『私も一夏のこと守りたいって』」

「それで一夏の事……」

「まぁ、そういうこと。あいつもあの頃から俺の事を女って思ってるし……」

「そうなんだ」

「で。程なくして俺はある日博士に養子として引き取ってもらったんだ。こんなに大きくなるまで育ててくれたもの嬉しいし、ありがたいんだけど……」

すると言葉を切って、僕を見る。

「だからさ……。シャルルも気にしなくていいと思うぜ?それに片方がいるっていいことじゃん……………でも俺もその父親のやり方は気に入らねぇ」

「那珂……」

「優里」

僕はボソッと呟かれて言葉が聞き取れず、聞き返す。

「えっ?」

「だから、優里!それが俺の名前だから。那珂っていう名字も好きだけど、やっぱり俺はこの名前が好きなんだ。唯一両親が残してくれた俺と両親を繋ぐものだから」

「そうか……じゃあ、僕の事もシャルロットって呼んでよ」

「シャルロット……?」

「そう。それが僕の本当の名前、お母さんがくれた僕の名前……」

「えっと、シャルロット……ってこれでいいか?」

彼にボソっと言われただけだが、その六文字に凄く幸せを感じる。彼は照れ隠しで横を向くと私に聞こえるか聞こえないかのギリギリの音量で

「それにあんたを刑務所なんかに入れさせない。俺があんたが卒業するまで守ってみせるよ」

「えっ?」

「だから、安心して。この学園生活、楽しんでくれってこと」

そう言って彼はニコっと笑った。


 
 

 
後書き
シリアスなシーンを壊してしまったので……と冷や汗をかく今日この頃。 
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