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ガウチョスタイル

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第二章

「それでその服を着てみろ」
「わかったぜ、ただな」
「ただ。何だ?」
「祖父ちゃん昔山にいたんだよな」
「若い頃はな」
「それで牛飼いをして馬に乗ってたんだよな」
「それで今は牛の皮を細工してベルトや鞄を作って売ってるんだよ」 
 そうした職人をして生計を立てているとだ、フェリペも答えた。
「俺は牛で飯を食ってるんだ」
「牛自体も食ってるよな」
「特にステーキが好きだな」
「じゃあカウボーイの服か?リアルで着るのも悪くないな」
「それはアメリカだろ、ここはチリだ」
 フェリペは孫のジョークに少し笑って返した。
「カウボーイはいないだろ」
「それもそうか」
「西部劇をやりたいのならテキサスにでも行くんだな」
「アメリカに行くつもりはないぜ、俺は」
「じゃあカウボーイじゃなくてもいいな」
「別にな、それで祖父ちゃんの家に行けばな」
「その服があってな」
 そしてというのだ。
「着られるからな」
「わかった、じゃあな」
「来るよな、俺の家に」
「行かせてもらうぜ、ついでに祖母ちゃんの焼いてくれたステーキが食いたいな」
「わかった、じゃあそっちも食わせてやる」
「それじゃあ行かせてもらうぜ」
 こう祖父と話をしてだった、ホセはその祖父に家に行って誰もが似合う服を紹介してもらうことになった。だが。
 ホセはそう言われてもだ、特に期待していなかった。そのことはクラスでも言った。
「誰にも似合う服なんてないだろ」
「あるとしたら軍服か?」
「制服とかな」
「まあそういうのはな」
「誰が着ても同じだな」
「制服な。うちの学校私服だからな」
 ホセは自分が今着ている服を見た、これも選ぶのに苦労した服だ。シャツもズボンも、
「そう言われてもな」
「軍隊にでも入らない限りな」
「誰が着てもなんて服ないだろ」
「そんな服あったら見てみたいぜ」
「全くだな」
 こんなことをだ、彼は仲間達と話していた。しかし。
 フェリペの家には行くつもりだった、約束したし何しろ祖母のテレサが焼いたステーキが絶品だからだ。ただし服のことは期待していなかった。
 それでだ、フェリペの家に行ってだった。最初に言ったことは。
「じゃあ肉な、肉」
「服はいいのか?」
「一応着てみるけれどさ」
 それでもとだ、フェリペにも素っ気なく返した。
「まずは肉だよ、祖母ちゃんの焼いたステーキ食わせてくれよ」
「服のことは期待してないな」
「俺は神様に誓って嘘は言わない様にしてるんだよ」
 この前置きからだ、ホセは出迎えてくれたフェリペにあっさりと言った。
「だから今も正直に言うぞ」
「期待していないんだな」
「あまりな」
「そうか、しかしその言葉は一時間後に変わるぞ」
「飯食って服を着た時にか」
「そうなんだよ」
 その通りだというのだ。
「その時に驚け」
「驚く筈ないだろ」
「その言葉後悔するからな」
 不敵に笑ってだ、フェリペは孫に言うのだった。しかし孫は祖父のそうした言葉はそんな筈ないだろと笑ってだった。 
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