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魔法少女リリカルなのは 世界を渡りあるく者

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第五章 過去との決別 〜ミッドチルダ J・S事件〜
  第五話 六等星の夜に

 
前書き
お気に入り登録100件突破!!ありがとうございます!!

そして気がつけばもうすぐUAが20000突破しそうだしPVも100000いきそう...

これだけ読んでくださるなんて感無量でございます

題名はAimerさんのファーストシングル、六等星の夜から取りました。凄くいい曲なので一度聞いてみてください。このタイトルは、蒼炎の欲しいものをまさに表していたので、取らしていただきました
もうすぐStS編も終幕ですが、最後までお付き合いいただければ幸いです 

 
機動六課の隊舎が指令本部としての機能を果たせなくなったことにより、俺たちは新しい拠点を必要とした

任務の性質と部隊長であるはやての要望により、移動も可能な魔道船を本局に申請したら予想以上のものがきた

「また、一緒に戦うことになるとはな...。もう疲れてるだろうが、頼むぞ」

通路の壁を触りながらそう独り言をこぼした

時空管理局所属 L級次元航行艦船8番艦 アースラ

それが、俺たち機動六課の新たな隊舎兼司令所だ

この船には様々な思い出がある。そもそも俺が管理局に勤務し始めて最初の職場はこの船だったからな。P・T事件の終盤、闇の書事件では初動から俺たちを支えてくれ、クロノが提督となってからもしばらくはこの船とともにいた。かなり長い年数使っていたため耐久限界が近く、解体される予定だったのを急遽六課配属にしてもらった。メンバーの中にはアースラで働くことが夢だった人もいたらしくて、士気も少し上がったようだ

閑話休題

軽いミーティングを済ませ、現在俺はアースラ内の自室で荷物の整理をしている。自宅から持ってきた魔術礼装とカートリッジをバリアジャケットを纏った際に召喚されるように設定した後、備え付けのベッドに腰を下ろした

ーーアルティメイタムの改良は済んだ。リミットブレイクもシュミレーター上では正常、いつでも発動可能。万が一のことも考えてブラスターシステムも組み込んだ。だけどこっちはまだ試験運用状態の時のプログラムだ。普通に頼めば絶対に拒否されるので特別捜査部ーー通称情報部に行ってもらってきた。そのためなのはをテスターとして完成させたプログラムよりも負担がでかい。本当の最終手段だな。これだけ用意すれば、今度こそ大丈夫、大丈夫だ

そして、最終決戦の始まりを告げる(アラート)が鳴った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今回の事件、レジアス中将は白だよ。俺が保証する。あの人は確かに少々荒っぽいことをする人ではあるけれど、それでも地上の平和を守ろうとするその姿勢は本物だ。まあいいように操られていた可能性は否めないけどな」

現在俺たちはアースラのミーティングルームに集まり、伝説の三提督の一人であるミゼット提督と通信をつないでいる

『それに関しては私も同意するよ。レジー坊やがそんなことをするとは信じたくはないのだけれど...』

ミゼット提督は古くからレジアス中将を知っているようだ。彼女も俺もレジアス中将を信じたいが、状況証拠がそれを許さない

『事情がどうあれ、レジアス中将や最高評議会は偉業の天才犯罪者、ジェイル・スカリエッティを利用しようとした。そやけど逆に利用されて、裏切られた。どこからどこまでが誰の計画で、なにが誰の思惑なのか、それはわからへん。そやけど今、巨大船が空を飛んで、町中にガジェットと戦闘機人が現れて、市民の安全を脅かしている。これは事実。私たちはこれをとめなあかん』

俺たちははやての言葉に頷き、これからの動きを説明する

「ゆりかごには本局の魔道艦隊が向かってる。地上のガジェットや戦闘機人達に関しても各部隊が協力して当たってるが、正直善戦どころか一方的にやられてる状況のようだ。高度なAMF戦闘を行えるのは少数。そこで俺たちは三チームに分かれて他の部隊の応援に向かうことになる。メンバーは....」

ーーーーーーーーーーーーーー


戦力分配は俺となのはとはやてでゆりかご制圧、フェイトがスカリエッティのアジトの制圧、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人が戦闘機人達の無力化。残りは緊急事態に対応するため地上に残る、という具合になった


まず最初に降下するのはティアナ達なので、俺となのは、ヴィータとともに彼女達へ激励を飛ばしに来た

「今回の出動はいままでで一番ハードになる」

なのはが彼女達に送るエール、俺はそれを黙って聞いている

「それに私もなのはも蒼炎も、お前達を助けに行けねぇ」

ヴィータもなのはに続いて、彼女達に現実を突きつける

「だけど、ちょっと目を瞑って。いままでの訓練のこと思い出して」

なのはのいう通り、彼女達は目を瞑って過去に想いを馳せている

「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いた得意技。痛い思いをした防御練習。全身筋肉痛になっても繰り返したフォーメーション。いつもぼろぼろになるまで私たちと繰り返した模擬戦...」

俺も彼女達につられて少し思い出していた。いつも彼女達はなのはや俺に扱かれてたなぁ、ただの基礎練から応用まで、来る日も来る日も繰り返していた。それで喧嘩した時もあった。それでも彼女達はここまで付いてきた

防御練習に関しては俺の思いっきりの斬撃を食らわせたこともあったなぁ。最初はあっけなくちった防御壁も最後にはきちんと耐えるまで成長していた

模擬戦に関して一番成長したのはティアナだろう。最初は勝つことを至上としていた節があったが、途中からは自分が教わったことをものにできているのか、あるいはどう動くのが最適なのかを考えながら動き、隙あらば俺の技術を盗もうとしていた。見て学ぶことを覚えたわけだ

個人練習でも彼女は面白いくらいに成長した。俺が教えた近接での捌き方を完璧とは言わなくても7割程度身につけていたんだ。見事としか言いようがないな

「目、開けていいよ」

彼女達と一緒に俺も目を開ける

「ま、私が言うのもなんだけど、きつかったよね」

その言葉には俺も苦笑いするしかなかった

「それでも、ここまで四人ともよくついてきた」

ヴィータからの賞賛に彼女達は目を丸くする。今まで褒めることが少なかったからな

「四人とも、誰よりも強くなった、とはまだちょっと言えないけど。だけどどんな相手が来ても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた。守るべきものを守れる力、救うべきもの救える力。絶望的な状況に立ち向かっていける力。ここまで頑張ってきたみんなにはそれがしっかり身についてる。夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間。どんなに辛くてもやめなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。それだけ忘れないで」

「きつい状況をきちっとこなしてこそのストライカーだからな」

なのは、ヴィータの激励は、彼女達にしっかり届いたようだ。始まる前にあった不安もなくなってる。最後は俺か

「みんな、ここまで本当によく耐えた。人間出来ないことなんて沢山ある。でもそれを補い合うためのチームだ。そうなるように俺たちはお前達を育ててきた。そして、立派に育ってくれたと、俺は胸を張って言える。だから信じろ、自分の仲間を。俺から言うことはただ一つだ。死ぬな。生きて帰ってこい」

言いたいことは言われた、だから俺が言うことはこれだけだ。お前達は俺と違ってまだ死ぬべきじゃないんだ。だから無茶して自滅だけはやめてくれ

「それじゃ、六課フォワード部隊、しゅつ「待ってください!!」..ティアナ?」

ティアナが声を張り上げた。ヴィータが何か言おうとティアナの方に歩くが、あと二歩というところで止まった

「どうしたの?ティアナ」

なのはもティアナから何かを感じ取ったらしく、ティアナの話を聞くことにしたらしい

「蒼炎さん」

「ん?」

俺?なんだろう?

ティアナは一度顔を下に向け、しばらくそのまま動かなかった

「蒼炎さんは...なんのために戦ってるんですか?」

なんだ、そんなことか

俺の戦う理由....か。そりゃあもちろん

「守るため、だな」

「なぜですか?」

「なぜって、そりゃあ...。知り合い、友人を助けたいって思うのは当然だろう?」

ティアナがなにを聞きたいのか俺にはわからない。この話に何の意味があるんだ?

「それは、誰の為にですか?」

「あいつらの為....だろうよ」

「自分の為じゃなく...」



ティアナは固まって何も話さない。本当にどうしたんだ?

不思議に思い、俺はティアナに声を掛けようとすると、予想してない言葉が聞こえてきた

「蒼炎さん、それは.....間違ってますよ」

「何を....言いたいんだ...?」

その一言で十分だった

俺は本能的に察した、これ以上はだめだ。何を言いたいのかわかった。でも、認識したくはなかった。認めたくなかった

そして、ティアナは決定的な一言を発した

「貴方の、過去を聞きました」

それが、こっちに来てからのことだけでないことは理解できた

そして、それだけでもうこのあとの展開を予測できた

ティアナが顔を上げて、俺の目を見る

ーーやめてくれ

そして一歩ずつ、俺に歩み寄ってくる

ーー否定しないでくれ

俺は動けなかった...

ーー頼む、頼むから、これ以上はヤメテくれ

俺は、ここから先のことから目をそらしたくて、瞳を閉じた





















ぎゅっ...














でも、俺が感じたのは温もりだった



「蒼炎さん、感じますか?私の体温」

ティアナは俺に抱きついていた

「当たり前だろ...?」

「私も感じます。蒼炎さんはここ(・・)にいますよ」

......................

俺は、呆然としていた。その言葉は、予測してなかった。そうか、ティアナは

「貴方の行動を、私は否定しない。でも、行動原理は否定します。だって、蒼炎さんはここにいるじゃないですか。だから、他の人より傷ついてもいいなんて、認めません」

俺のことを.......ちゃんと見てくれてるのか....。そう言ってくれるのは、嬉しい、嬉しいよ。だけど

「でも、俺は.....大事な人を二度もこの手にかけた...!」

「それを赦すか赦さないかは蒼炎さんが決めることじゃないです。その人たちは、なんて言ってましたか?」

思い出そうと意識しなくても、覚えていた

忘れるわけがない。最後の光景と共に、俺の脳に、体に焼きついている

「気にするなって....。一緒にいてくれて、ありがとうって...。送られたのは、感謝の言葉だった...」

「なんだ、赦されてるじゃないですか。でも、それでも、蒼炎さんが、ここにいないって思うなら...」





















「私が、貴方の居場所になります。貴方の証明になります」











ーーーーーははっ...


「はははっ....。そっか、そうだったのか」

俺は、やっと気がついた。笑いが止まらないや

「こんな、十数年しか生きてない小娘に、見透かされるかぁ」

それは、自分自身では見えなかった心の海の深淵

「今さ、その言葉聞いて、嬉しいって思ってしまったんだ。その瞬間悟ったよ。俺は、大切な人が欲しかったんじゃない。俺を認めてくれる人が欲しかったんだ。受け止めてくれる居場所が欲しかったんだ。なんて、我儘なんだろうな」

目を開ける。俺の前には、涙を一筋流すティアナが見えた

「それは、人間として、普通だと思いますよ」

こんな俺を、これからずっと見ててくれるっていうのか

「いいのか?」

もう、長ったらしい言葉はいらなかった

「はい」

そっか....。そっか....

「ありがとう」

俺はティアナを一瞬抱き返して、彼女を優しく引き離した

そこで、やっと周りを見る余裕が出来た。すると、顔を真っ赤にしてるやつや目を背けてるやつがいたが...

俺も冷静になってみると、恥ずかしいことをしたなぁ。ティアナなんかはトマトみたいに真っ赤だ

「こほん。すまん」

俺は咳払いをしてから、少し溜めて






「いくぞ!」



みんなの表情が引きしまる。そして、降下ポイントに到着し、フォワードメンバーはヘリに乗ってアースラから飛び立った



ーーーーーーーーーーーーーー


残った隊長陣も、集まった

何があったのかは聞かれなかったし、過去のことも詮索されなかった

「そっか、居場所が欲しかったんかぁ...」

でもただ一人、はやてだけは涙を流していた。その理由を、なんとなくだけど察した

ごめん、とは言えなかった。今言うべきでは、ない気がしたから

『降下ハッチ、開きます!』

そして、俺たちもアースラから飛び立った


『六課隊長、副隊長、及び前線指揮官の全リミッター解除。皆さん、どうかご無事で...!』

カリムさんからリミッター解除の通達と、無事を願う言葉が届いた

「しっかり....やるよ!」

「迅速に解決します」

「お任せください!」

「必ず...帰る!」

各々の思いを言葉にして返す。その言葉にカリムさんは頷き




ーーーーリミットリリース!





空が、閃光に染まる





「エクシード」

「エクストリーム」

「「ドライブ!!!」」




俺となのははフルドライブを発動し、はやて、フェイト、ヴィータと共に空を駆ける


「全員、速度そのままで。フルエンチャントかける!」

「「「「了解!」」」」


ーー対象、前方四人、指定

ーー効果、速度上昇、防御強化、攻撃強化、設定

「彼方に加護を、付与(エンチャント)!」


全員にエンチャントがかかり!速度が上がる

その中、フェイトが沈黙を破る

「蒼炎の過去、今は何があったとかは聞かない。でも、帰ったら教えてね?」

「ああ、もちろん」

俺は、フェイトに対して頷いてみせた

「それから、なのはと蒼炎のリミットブレイク。使うな、っていってもどうせ聞かないだろうから言わないけど、無理だけはしないでね」

「本当に、心配性だなフェイトは。大丈夫、さっきも言ったろ?必ず帰るって。俺よりもなのはだよ。前科持ち前科持ち」

「もう、そんなこと言わないでよ...。フェイトちゃんのリミットブレイクだって、性能が凄い分危ないんだからね?」

俺がなのはの方を向いて言うとなのはは頬を膨らませ、さらにフェイトのことを注意した。こんな光景に、俺は思わず笑ってしまった

「?どうしたの蒼炎くん」

「いや、これから死地に飛び込む前の会話じゃないなって」

「でも、お葬式な雰囲気よりマシでしょ?」

「違いない!」

俺となのは、フェイトが笑ってるとヴィータが

「おい、フェイト隊長はもうポイントだぞ」

「え。あ....」

「はぁ...。フェイト隊長も無茶すんなよ。地上と空は、私らがきっちり守るからな」


「フェイトちゃん。任せたで!」

「がんばろうね!」

「また、後でな」

俺たちがフェイトに応援の言葉を贈ると、フェイトは満面の笑みで頷き、俺たちと別れた

後ろ姿が見えなくなるまで見守っていた。その後ろ姿は、とても綺麗だった


前を向き、空を飛ぶ遺産が視界に入る。もう目前だ


その端に、一つの流れ星が映った


「まあ、そうなるよな。くるよな...」


右手のアルティメイタムを強く握る

「全員、そのまま進んでゆりかごの援護に行け。あいつは、俺が止める」

返事を待たず、彼女達とは別の方向に飛ぶ


そして、流星と正面から剣を打ち合わせる!


キン!


「さあ、やろうか!」

俺のクローン体、俺の過去。俺は、こいつを....

「ああ、そうだな。でもその前にお前の心の内を聞いてからだ!」

お互い同時に距離を取り、離れざまに魔力弾をぶつけ合う

準備完了(スタンバイ・レディ)!」

「心なんて....ないよ!」


....なるほど。こりゃ、時間かかりそうだな。でも、一つわかったことがある

「そんなこと、ない」

片手剣をあいつに向ける。あいつは、利用されてる。だったら...

「やるぞアルティメイタム。世間知らずな馬鹿を止めるぞ!」

<ええ、やってやりましょう!>

前より、あいつの魔力の質が上がってる。油断してたらだめだ、最初っから全力で...


<リミットブレイク>

「エクストリーム....ブレイク!」

<イグニッション!> 
 

 
後書き
二人はぶつかり合い、その果てに見つけた、本心

だが間に入るは悪意の塊、暴走するレリックウェポン

蒼炎が取る行動は...

次回 最終話 少年の内に秘めたる思い

予定では、この章は後2話で終わりとなります。そして、終章で一旦完結となります

残りわずかですが、最後までお付き合いいただければと思います


とか言ってますが次でこの章で終わりです。きりが悪いのでまとめちゃいました 
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