| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

極短編集

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

短編58「一緒になりたい」

 とある屋敷に男が住んでいた。男には愛する女性がいた。

『もっと一緒になりたい』

 ぬくもりを交わすうちに、そう強く思うようになった。そして思いついた。

「さあ、これを飲んで」

 男は女性にワインを飲ませた。

「さあ、これをお食べ」

 男は女性に肉を食べさせた。

「あら!左足をどうしたのですか?」

 女性は男の左足が、爪先から足首まで、包帯に巻かれているのに気が付いた。

「ああ、ちょっと馬から落ちた時にくじいてな。さあ、これを飲んで」

 男は女性にワインを飲ませた。

「さあ、これをお食べ」

 男は女性に肉を食べさせた。

「足の具合が悪いのですか?」

 ある日、男の足の包帯は、膝下までになっていた。

「ああ、まだ痛みがあってな。さあ、これを飲んで」

 男は女性にワインを飲ませた。

「さあ、これをお食べ」

 男は女性に肉を食べさせた。そのうち、男が病に倒れた。そして女性は気が付いた。

「足が無いわ!いったい何の病気なの!?」

 女性が泣いていると男は言った。

「お願いがある。私が死んだら、私の全部を食べて欲しい」

 それを聞いた女性は、男が病気で正気を保てていないのだと思った。だから、ひとまずは男の言葉を受け止め、女性は優しく男に答えた。

「いいですよ」

 それを聞いて男は喜んで言った。

「そうか!良かった。ところで……



 左足は美味しかったかい?」

おしまい

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧