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恋姫†袁紹♂伝

作者:masa3214
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第9話

「こんにちは、曹操さん」

「ええ、こんにちは」

「おお、曹操殿あの時は知恵を貸して頂き助かりましたぞ!」

「そう?、また何かあったら言いなさい」

「曹操様、罵って下さい!」

「近寄らないでちょうだい」

―――いつぞやの問答騒ぎの一件後、皆に頭を下げた曹操は受け入れられた。
 当初は突然物腰が柔らかくなった彼女に皆が驚愕していたものの、今ではほとんどの塾生達と交流を持っている。

「ん?麗覇、今日はいつもよりごきげんだな」

そんな彼女を満足そうに見ていた袁紹に公孫賛が声をかけた。

「わかるか白蓮、孟徳が受け入れられているのも嬉しいが実は実家から手紙が来てな」

さらっと真名で呼び合う二人は、つい先日真名を交換し合っていた。

「へー、で?いい知らせがあったんだろ?」

「うむ!我に妹が出来たようでな、名は『袁術』腹違いではあるがれっきとした我の妹よ!!」

「へぇっ!そいつはめでたいな!!」

まるで自分のことのように喜ぶ公孫賛に袁紹もさらに気を良くする

「何がめでたいのかしら?」

と、そこに皆との話しを切り上げた曹操がやって来た。

「ああ、実は麗覇に妹が出来たらしくてな」

「へぇ妹が、おめでとう『袁紹』」

「ああ、ありがとう『孟徳』」

先日の一件以来お互いを認め合ったことで真名を交換する条件は達成していたものの、あくまで認め合っていたのは二人の心中の中での事だったため、二人は互いに真名を交換する時を計りかねていた。

「なら、一旦戻るのかしら?」

「いや、しばらくここで学ぼうと思う。妹の顔を見れないのは残念だがな」

三年後の楽しみに取っておく――、袁紹は私塾の彼等との交流を優先することにした。


………
……



「いっくぜぇ麗覇様」

「うむ、いつでも来い」

私塾での勉学や交流を終えると、斗詩や猪々子等と手合わせによる武の鍛練を行う。

「ぬぉりゃぁぁぁぁ!!」

「むぅっ!?」

猪々子の大剣から繰り出される重い斬撃をなんとか受け流す。

「猪々子、また重さが上がったな!!」

「へへっ、春蘭に負けてられないからさ~」

「麗覇様達が私塾に行っている間、文ちゃんは夏侯惇さんと模擬戦して来たんですよ」

観戦していた斗詩が情報を捕捉してくれた。

「ほう――して結果は?」

「それが……」

結果が芳しくなかったのか斗詩は表情を暗くする。

「いやぁ、実は負けちまってさぁ……」

そんな彼女に代わり猪々子が結果を報告した。

「で、でも文ちゃんすごかったんですよ!!最初は押していたしそれに―――」

「いいって斗詩、負けたのは事実なんだからさ」

「でも……」

「それに、ただ負けてきたわけじゃないぜ麗覇様」

「ほう?」

負けたと報告したにも関わらず彼女の顔に不の感情は感じられない。
 それどころか瞳は燃えるように輝き、口元は不適に笑みを浮かべていた

「春蘭との一戦の後、アタイに何が足りないのかなんとなくわかったんだ。だから、今はまだ勝てないけどきっといつか勝ってみせるさ!!」

「……そうか」

新たな目標を見出した猪々子に対し斗詩はどこか暗い雰囲気を纏っている。

「斗詩!!」

「は、はい!?」

袁紹には彼女の憂いが何か察しがついていた。

「そう焦る必要などない、今はまだ猪々子に及ばなくも伸び代は決して劣っては無いぞ」

「そ、そうでしょうか?」

彼女は親友と自分の間に出来た武力の差で悩んでいる。伊達に側で彼女等と行動し続けていたわけでは無いため、
 袁紹には彼女の悩みが手に取るように理解出来ていた。

「我が保障する!だから面を上げよ、斗詩が見出すべき目標は下には転がってはいないぞ!!」

「っ!? そう……ですよね、わかりました麗覇様!」

「うむ、では今度は斗詩が打ち込んで来い。」

「え、今アタイの番じゃ――」

「行きます!!」

盛り上がった二人を猪々子が止める術も無く、しぶしぶ引き下がっ行く、しかし憂いが消えた親友の表情に安堵し、満足そうに二人の鍛練を見学していた――


………
……






私塾で学友達と研鑽しあい、側近の二人も腕を磨き続け三年という月日はあっという間に流れた―――






最後の挨拶にと、曹操、袁紹、そして公孫賛が顔をあわせる。

「私はこれから陳留で太守を務めることになっているわ」

「ほう……その若さで、さすがだな孟徳」

その袁紹の言葉に曹操は――お祖父様の周りの者達は私を手元で扱う自信がなくて厄介払いしたかっただけよ、と付け加えた。

「我は袁家当主の座へと就くことになっている。白蓮はどうするのだ?」

「ああ、私は――ってちょっと待て!今なんかサラッとすごい事聞いた気がするぞ!?」

「落ち着きなさい白蓮私にも聞こえたわ、――冗談かしら?」

「いや事実だ、これから袁家は我が取り仕切ることとなる」

「「……」」

これには二人も開いた口が塞がらなかった。それもそのはず、名門袁家の当主をこの間14になったばかりの袁紹がなると言うのだから

「なら、次相見えるのは時代の激動の中でかしらね」

「多分……そうだろうな」

「え?激動?」

「白蓮、この先時代の機微に気をつけなさい。恐らくあと数年で動き出すはずよ」

「そ、そうなのか……わかった」

いまいち納得出来ない様子の公孫賛であったが、曹操の真剣な表情に思わずうなずき返す。

「ところで白蓮はどうするのだ?やはり幽州か?」

「ああ、このまま順調にいけば幽州太守だけど―――、その前に別の私塾であと一年学ぶことにしたんだ」

公孫賛が言うには盧植という名の高名な師がいる私塾があるらしく、太守に就く前に少しでも見解を広めておきたいという考えであった。

「そうか……、では我ら三人、しばらく会えぬな」

「そうでしょうね」

「別に今生の別れってわけでもないけどな!」

湿っぽくなりそうな空気にたまらず公孫賛が声を上げる

「というかお前等はいいかげん真名を交換しろよ」

「「……」」

真名を交換する機会を窺っていた二人だが、ついにその機会を見つけることが出来ず三年も経ってしまっていた。

「フハハそれもそうだ、孟徳、我が真名麗覇!今更ではあるがお前に預けるぞ!!」

「預けるということは、私を認めたのね?」

それは初めて出会った二人が互いに付けた条件――

「実はとうの昔に認めていたのだ。だが言い出す機会が無くてな、気が付けば三年経ってしまった」

袁紹は正直に理由を話す。

「そう…、もう知ってるだろうけど華琳よ、私もこの真名を貴方に預けるわ」

「ふむ、では……」

「ええ」

真名を交換した二人はしばらく見つめ合い、

「「次の舞台で」」

その言葉を最後に踵を返し、違う道を歩き出す―――もっとも

「ちょっとまって最後の言葉、私にも言わせてくれよ!!」

約一名出遅れていたが―――


 
 

 
後書き
はい、という訳で私塾編は終了とします。

 え?駆け足すぎる? このままだと塾編の終わりが見えないからね、仕方ないね

そのかわりと言ってはなんですが次話は皆大好き公孫賛視点の閑話を挟む予定です。 
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