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恋愛多色

作者:桜磨
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リアルなんて嫌いだ。汚く汚れたリアルなんて嫌いだ。何であんな世界でみんな生きていけるんだろう。
『あんたいつまでそうしてるの?』
意味わかんない、私は間違ってない、あんな世の中に飛び込めなんて…
あんないがみあいしかない世界にはもう戻りたくない。馬鹿みたい。
ピコン、パソコンに通知が出る。私は通知をクリックし、SNSのページに飛ぶ。
綺麗だ。私は画面を見てそう思う。スクリーンに映る風景は、私の心に何かを届けてくれた。
「見てみたいな…」
私は自然と口に出した。
リアルが嫌い、なんて言ってるけれど、一概に全部が嫌いなんじゃない。俗に言う都会が嫌いなのだ。
小学校まで田舎にいたのだが、父親の仕事の関係上都会へ。正直最初は期待してた、けどそんな淡い期待はすぐに打ち砕かれた。
いじめ、カースト、賄賂。そういうものがあふれかえった世界に、私は嫌気がさした。
何度も親に帰ろうといったが、『無理を言うんじゃない』『そんなわがまま通用しないよ?』一方的に言われるだけだった。
『今日はちょっと遠出してみたんだ』
写真にはそうメッセージが添えてあった。遠出…そういえばこの頃してないな…
『私も行ってみたいなー』
何気なく打ってみると
『一緒に行く?』
「え?」
思わず言葉が出た。
『ボイスチャット、繋いでいいかな?』
画面にはメッセージが追加されていた。
『何で?』
私は返信する。
『お互いのこと、色々知らないといけないでしょ?』
私は考えた。こんだけ絡んでいるとはいえ、正直顔も知らない相手、抵抗がないというのは嘘になる。けどこのチャンスを逃したら…

『そん時に撮れたのがこれなんだよ』
「へー」
画面には悠々と飛ぶ鷲が移っている。かっこいい、私はそう思った。
『そうだ』
彼は思い出したように言った。
『もう準備はできたかい?』
その言葉を聞いて、私は自然とニヤけてしまった。
「当たり前じゃん」
私は床に置いてある荷物を見る。私は決めたんだ、あれから半年、この人と一緒なら大丈夫だって。

『お父さんお母さんへ、私、旅に出てくるね』
 
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