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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第七章 歌姫
  第8話 旋律する歌

 
前書き
演奏シーンは大体カットしています。だってあんまりいらないでしょ?w

でも必要最低限の感情だけはいれた(つもり)です。

ではでは〜 

 
ぞわッと、鳥肌が立つような感覚が士道の身体を通り抜けていった。

曲のリズムが上がっていくに連れてスポットライトが明るくなっていき、バックダンサーも見えてくる。そして美九のダンスも激しくなってくる。

「すげぇ……」

士道は無意識に呟いていた。

それぐらい、彼女のステージは圧倒的だったから。



ーーーー
ーーー
ーー



勝てる気がしなかった。

〈ラタトスク〉の仕掛けで照明を落としたり、大型スピーカーから曲が流れてこないなどのトラブルを装った仕掛けをしたものの、霊装を顕現させたことにより、それを観客が先進技術を駆使した大掛かりな演出と受け取られてしまった。

照明もマイクもライトもアンプもない。

それなのに、美九の演奏は会場の隅々まで染み渡っていた。




すごいと思った。




美九は演奏を終えると、凄まじいぐらいの熱狂に包まれて控え室へと戻ってきた。


次は自分たちの番だ。


だが、亜衣、麻衣、美衣の三人の埋め合わせの補充要員とやらの正体の知れない状態では安心のしようがーー

と、その瞬間、控え室の扉がゆっくりと開かれた。

耶倶矢「くく、随分と昏い貌をしているではないか」

夕弦「落胆。覇気がありません。それでは戦う前から負けています」

一方「貧相な顔してンなァ」

十香「耶倶矢!夕弦!あーくん!」

十香が驚いたようにその名を呼ぶ。

士織「なんで、ここに……?」

士道が問うと、耶倶矢と夕弦はニヤッと笑って見せた。

耶倶矢「くく……琴里から聞いたぞ。人数が足りなくて困っているようではないか」

夕弦「応援。その役割、私たちに任せてください。前に助けられた恩をここで返したいのです」

一方「面倒くせェけどな」

士織「ち、ちょっと待てよ!その心遣いはありがたいけど……そんな簡単に言われても……練習なんてしてないのにーー」

と、士道が言い終える前に耶倶矢はドラムの前に座り、夕弦がギターを持ち、一方通行がキーボードの前に立った。

そして、夕弦の合図で三人が一斉に弾き始める。

士織「………え?」

士道が思わず声を漏らしてしまうほど、三人の演奏はとてつもなく上手かった。

ここに芸能界のプロダクションの人がいれば迷わず名刺を差し出すだろう。

耶倶矢「こんなもん?」

夕弦「吐息。ふう」

一方「意外となンとかなるもンだなァ」

士織「何で、みんなそんなに上手いんだ……?」

耶倶矢「侮るでないぞ人間。我と夕弦はもう既に勝負を終わらせておる」

夕弦「肯定。第七二試合でドラムを、第八四試合でベース対決を行い、前者で耶倶矢が、後者で夕弦が勝利しました」

確かに二人は殴り合いに飽きて様々な勝負をしていたと言っていたが、まさかこんなモノまで……

士織「一方通行は昔に弾いたことがあったとか?」

一方「あァ?この程度、譜面とキーボードの使い方さえ覚えれりゃ何とかなるだろ」

流石、天才の言うことは違う。

耶倶矢「なあ士道よ、我らは御主のお陰で一緒にいることができる」

夕弦「請願。今度は是非、夕弦たちに助けさせてください」

耶倶矢と夕弦が言ってくる。

無論、美九は強敵である。加えて、今会場は美九のファンで埋め尽くされている。

完璧なパフォーマンスで勝てる相手ではない。


でもーー



士道は二人の手を取り、バッと顔をあげた。


「…………おうッ!」


ーーーー
ーーー
ーー




正直言ってステージはある意味無茶苦茶だった。

最初は音源を使って口パクする予定だったのに何者かにそれを壊されて生で歌うハメになるわ、十香が突然ゆっくりと歌い出し、士道も途中から一緒に歌いだすなどなど……ハプニングだらけだった。

だけど、それは同時に楽しいと思えることだった。

美九に勝つことだけを意識していたからこそ、楽しむことを忘れていた。

士道のアレンジに上手く乗ってくれた耶倶矢、夕弦、一方通行にも感謝せねばならない。

でも、結果はーー


『ステージ部門、第二位!一歩及ばず来弾高校!』

スピーカーから聞こえる音に一瞬時間が止まったかと思った。

つまり、士道たちが二位ということはーー

『そして、ステージ部門第一位の栄冠を手にしたのはーーやはり強かった!王者、竜胴寺女学院!!』

大声が、会場を震わせた。

士織「…………」

十香「し、シドー……」

美九「ふふ、ほうらね、仲間なんかに期待しすぎるからこうなるんですよー」

士織「美九……」

美九「なんにせよ約束は約束です。士織さんと霊力を封印したという精霊さん五人、今日から全員私たちのものです」

士織「く……」

士道が唇を噛みしめる。

渡してはいけない。でも結果は覆らない。

今までにない焦りと責任感が彼をどんどん追い詰める。

と、再びスピーカーから司会者の声が、今までで一番大きな声が張り上げた。

『ーーと、いうわけで!天央祭一日目の総合順位は、来弾高校に決定いたしましたぁぁぁ!!』

美九「…………へ?」

美九が呆然と目を丸くする。

それは士道たちも同じだった。

そんな士道たちの疑問を答えるかのように司会者が言葉を続ける。

『なんとも意外な結果になりました!ステージ部門では圧倒していた竜胴寺ですが、展示部門や模擬店では来弾が大きくリード!特にメイドカフェの票数は凄まじい!ステージ部門での差を他の部門でひっくり返したのです!』

士織「は、は……」

士道は力なく笑った。

まさかこんなところで亜衣麻衣美衣達に助けられるなんて。

耶倶矢「かか、我らにかかればこんなもの容易いものよ!」

夕弦「同調。その通りです。夕弦たちに敵はいません」

一方「ンで?何でそんな勝負なんかしてたンだ?」

士道から少し離れたところで耶倶矢、夕弦、一方通行が勝利の結果に喜んでいた。

耶倶矢「勝ったから関係ないの」

夕弦「同意。その通りです。あーくん」

一方「………その呼び方、誰から聞いた?」

「「琴里から(です)」」

一方「ぶっ殺す」

何なら不穏なワードが聞こえたような気がしたが、今は気にしないでおこう。

上条「よかったな、士織」

士織「あ、あぁ。来てたのか」

上条「丁度交代の時間だったからな」

上条も士道達の勝利に笑みを浮かべくれた。

士道はゆっくりと美九の方を向き、そして言ってみせた。

士織「美九……俺たちの勝ちだ」

そんな美九は先ほどとはうって変わって様子がおかしかった。

現実と夢の区別ができていないかのような虚ろな目をし、先ほどの審査結果を見つめている。

美九「こんなの……無しです。だって、私は、勝ったもの……!あの子達がちゃんとしてないから……!」

士織「そんなことないはずだ。竜胴寺の子だって一生懸命やったはずだ」

美九「知らない!知らないです!私は、勝ったのに……」

その姿はまるで駄々こねる子供のようだった。

上条「これが仲間の絆ってやつじゃないか?」

美九「絆……?」

横から上条が美九に問いかけるように言う。

上条「士織達は美九に叶わなかったが他のメイドカフェとかで助けられたんじゃないか?」

まさにその通りだ。それは結果が全てを表している。

あの時、模擬店等に使うはずだった予算を、美九は出場を決めてから『声』を使って予算をこちらに大幅に使わせたのだ。

そりゃ、いいのもできないだろう。

美九「仲間?絆……?教えてあげますよ。私の前では無意味だということを!!」

美九は俯いていた顔をバッと上げて両手を広げた。




美九「ーー〈破軍歌姫(ガブリエル)〉!!」

美九が会場全体に行き渡るぐらいの大声を出すと美九の周りから何か巨大な金属塊のようなものがステージにせり上がってくる。それは円筒が何本も重なって生えた奇妙なフォルム。パイプオルガンのようなそれは演出でもなんでもない。

さすがにその違和感に気づいた観客達はどよめき始めた。

それを気にせず美九が右から左へと一閃させるとそこから帯のような線が美九の周りを囲い、その美九の前には鍵盤のようなモノが出現した。

そして、その光の鍵盤に手を掛けた。それは何かを始めるための準備のようで。

士織「美九!やめろッ!」

美九「歌え、詠え、謳え!〈破軍歌姫(ガブリエル)〉ッ!!」

美九は聞く耳を持たず、両手の指を広げると、自分の周囲に広がっていた光の鍵盤を叩きつけた。









ヴォォォォォォーーーーッ!!!






瞬間、美九の後ろにそびえ立っていた巨大な天使が凄まじい音を発し始めた。

士織「うっ、が……っ!?」

思わず耳を押さえる。それは大声だからではなく美九の『お願い』を何倍にも強くしたような感覚に近い。

だからこそ、この男は平然としていた。

上条「おい、士道!何がどうなってんだよ!?」

士織「分からねぇ。でもこれはかなりヤバイぞ」

音が止まった途端、そこは異様な光景に包まれていた。

会場には何千人という観客がいるのにその全員が一人の例外もなく直立し、ステージの上に視線を送っていた。

士織「美九……お前、まさか……!」

叫び、美九に視線をやる。

美九「ふふ、仲間……でしたよねぇ?美しいですねぇ……こんなに壊れやすいなんて」




仲間。絆。友情。



それを嫌う美九の復讐が始まった。








 
 

 
後書き
少しずつ荒れ始めてますね 
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