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恋愛多色

作者:桜磨
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返事は必ず

何故こうなった。
文化祭の準備期間、実行委員での居残り作業。これは別にいだろう、私が志願してなった訳だから。ただ何故!目の前にいるのがこいつなんだ!
遡ること20分前。
「材料、足りなくなってきたね」
そう口に出したのは、美代だった。
「そうだな…よし、買い出し頼むわ」
実行委員長である藤原が、予算の入ったがま口財布(学校の備品)を美代に渡した。
「私ひとりじゃあれだから…」
「私行く!」
元気よく立ち上がり、元気よく手を挙げ、美代に志願した。
「だめだ」
藤原に止められる。
「何でよ」
口を尖らせて藤原に反抗する。
「飽きたんだろ?」
ギクッ!思いっきりばれていた。正直単純な作業に嫌気がさして、眠気を覚えていたところだったのだ。
「ソッソンナワケナイヨ?」
動揺して思いっきり片言に、バレバレじゃん…
「勇翔、お前一緒に行って来い」
「俺が?」
突然名前を呼ばれ動揺する中村。まずい!最悪彼と残って寝ようと思ったのに、優しいから!
「藤原は行かないの?」
「寝るだろ?」
うぐっ!まさかここまでばれているとは…逆に怖いわ!
「てなわけだから、お二人よろしくなー」
そして今。
「手え止まってんぞ」
ハッ!リングの輪っかを付けてる途中だった。慌てて両端を合わせる。
ハラリ
…あ、糊が乾いたのね、って!
「あーもーやってらんなーい!」
ビシッ!
「アイタ!」
飛んできたのは消しゴムだった。
「やかましい!」
やかましいって…
「あんた女子に消しゴム当てといて何それ!」
「やかましいからつい」
「ふんふんなるほど、ってなるか!」
「お、ナイスノリツッコミーぱちぱちー」
「むかつくぅ!」
何なのよこいつは!
「俺トイレ行ってくるから、少しは仕事しとけよ?」
「はーい」
気のない返事を返す私。仕方ない、作業始めますか。
3分後
あれ…何でだろ…すっごく眠い…怒った後の単純作業…疲れて眠いんだ…あれ…もうだめ…

「おい、起きろ!」
「ひゃー!わー!ごめんなさーい!」
私は思いっきり起き上がり、勢い任せに立ち上がった。
バサッ
バサ?
「ったくなに落としてくれてんだよ」
藤原はそう言うと、私の後ろに落ちた何かを拾いに行った。私は振り返り、その正体を探る。落ちたのは藤原のブレザーだった。
「で、どんな夢見てたの?」
ブレザーをはたきながら、藤原は私に訊く。
「藤原にこっぴどく叱られる夢」
その答えを聞いた藤原は
「ぷっ!」
と吹き出した。
「何それひどくない?」
「だってありえそうだから」
「ん~!」
否定できないとこがまた悔しい。
「あ、準備の続き!」
「もう最終下校時刻だぞ」
「え?」
私は慌てて時計を確認する。確かに時計は、完全下校時刻を指していた。
「え?ずっと寝て他の私?!ゴメンネ!」
私は藤原に謝る。
「いいっていいって、買い出しに行ったあいつらも、何故かまだ戻ってこない…し」
藤原は前の入口のほうを見たまま動くなくなった。
「え?どうした…の」
そこには例の二人が、にやにやしながら覗いている姿があった。
「なるほどねぇ」
「そういうことだったのかぁ」
二人はまだにやにやしながら、藤原に近づく。
「だから行かせたくなかったんだー」
「お前策士だなー」
「なっなんだよ!ちげーよ!」
「え?何が?」
「何も言ってないのに」
「「ねー?」」
「あーも!」
もしかして、いやそんなわけないじゃん。この二人の勘違いだろう。
「ねえ安祐美」
「ん?」
美代が携帯片手に、私に近寄ってくる。
「あんたが寝てた時に、藤原が何て言ってたか、知りたい?」
「おいお前!」
阻止しようと暴れる藤原、それを羽交い絞めにする中村。
「うん」
何か確かめないともやもやする、このまま帰れるわけがない。
「それじゃーぽちっと!」
「やめっ!あがっ!」
藤原は口も塞がれ、抵抗する術を亡くした。
『ったく、風邪ひくぞ』
『あ、上着かけた』
『ほんとだ』
藤原の声とともに、覗き組二人の声も一緒に入っている。
『はぁ、これ俺一人ですんのか…』
ほんと、ごめんなさい。
『どんだけ夜更かししてんだよ』
夜更かししてないもん!夜更かしはお肌の天敵!毎日2時には寝てるよ!
『ふっ、かわいい寝顔しやがって』
え?
『何でこんなやつ好きになったんだろ』
え?え?
頬が熱くなるのを感じる、そんな、そんな!
『おい!今の!』
『ばっちり録音してあります!』
『イヤーまさかねー』
『ねー』
二人の会話が、薄っすら耳に入る。
「さ、どうする?」
笑顔、というより、やはりにやにや顔で、美代は私を見る。
「どうするって…」
まともに見れないため、横目で藤原を捉える。暴れつかれたのか、さっきと打って変わって大人しい。
「私は…」
「いつまで残ってんの」
タイミングよく表れる先生。テンプレにもほどがあるだろう。
「さあさあ、早く帰った帰った」
「「「「はーい」」」」
藤原、ちょっと待っててね、返事は必ず、明日にはするから。 
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