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食べさせない理由

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第二章

「だからよね」
「そう、気をつけないといけないから」
「その本買ったのね」
「そうしたの」
「後で読んでいい?」
 天は同級生にその本に目をやりながら問うた。
「そうしていい?」
「いいわよ、皆に持って来てもらう為に買って来たから」
「部室に持って来たから」
「だからね」
 それで、というのだ。
「読んでね」
「わかったわ、じゃあ後でね」
「ええ、ただね」
 ここでだ、同級生は顔を曇らせてだ。
 そのうえでだ、天にこう言った。
「覚悟して読んでね」
「覚悟って」
「そう、覚悟してね」
 そうしてというのだ。
「読んでね」
「覚悟って、ホラー漫画じゃないから」
「そのホラー漫画より怖いから」
「怖いって」
「覚悟して読んでね」
 同級生はこう念を押した、しかし天はそれがどうしてかわからなかった、だが実際に読んでみて彼女がそう言った理由がわかった。
 それでだ、家に帰って智恵にだ、只今と言ってからすぐにこう言ったのだった。
「お母さんが私に川魚を生で食べさせてくれない理由がわかったわ」
「あっ、わかったの」
「虫のせいなのね」
「そう、川魚の寄生虫は怖いのよ」
「それこそ死ぬ位なのね」
「目にいったらね」
 寄生虫達が身体の中で移動してだ。
「それで失明もするし」
「脳にいったら」
「頭がおかしくなるかね」
「死ぬこともなのね」
「あるのよ、だからね」
「私に食べさせなかったのね」
「お母さんもお父さんも食べないのよ」
 言葉は今も、というものだった。
「釣ったお魚はね」
「それが川のものだと」
「絶対に食べないの」
「お店で買ったものでないとなのね」
「それが信用出来るお店でないとね」 
 川魚、サワガニやタニシ等もというのだ。
「よく火を通さないと怖いの」
「本当に死ぬから」
「だからお母さん達は貴女にそうしたお魚は絶対に生で食べさせないのよ」
「私のことを考えてだったの」
「いい?だからね」
 智恵は娘に真剣な顔で強く言った。
「これからもね」
「うん、川とかで釣ったお魚は」
「絶対に生で食べないでね」
「わかったわ」
「本当に絶対によ」
 母親としてだ、智恵は天にこのことを念押しした。そしてこの時から暫く経ってだった。
 料理研究会の合宿でキャンプに出てだ、天達は川で釣った魚を食べることにした。ここで天は皆に強く言ったのだ。
「絶対に火は遠そうね」
「そうそう、バーベキューにするけれど」
「じっくりと焼いて」
「それから食べましょう」 
 他の部員達もわかっていた、それはやはり。
「あの本に書いてあったからね」
「だからね」
「このことだけはね」
「絶対に守りましょう」
「さもないと怖いから」
「後がね」 
 こう話してだ、実際にだった。
 天達は川魚に火を通して食べた。そしてそのよく焼いた川魚を食べつつだ、天は皆に確かな顔で皆に言った。 
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