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高原で

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第六章

 ジーンは笑顔で抱き締めてだ、明るい声で言った。
「ははは、あたしを気に入ったかい?」
「そうみたいだな」 
 ロバートは彼女と犬を見つつ言った。
「どうやら」
「いいな、よしよし」
 ジーンはロバートの言葉を聞きつつだ、そうして。
 自分にじゃれつく犬を抱いて一緒に遊びはじめる。そして。
 その犬と遊ぶ子供の様な姿を見てだった、自然とだ。
 彼は暖かい目になっていた、そうして。
 ジーンとコリーを見続けた。すると。
 コリーは暫くするとだ、ふと。
 近くに来た子供のところに行った、子供はそのコリーの頭を撫でて言うのだった。
「よしよし、ベン。ここにいたんだね」
「君の犬かな」
 ロバートは子供に笑顔で問うた。
「そうなのかな」
「はい、急にリードを引っ張って」
「それでだね」
「僕が外しちゃいまして」
 それで、というのだ。
「何処に行ったのか探してました」
「そうだったんだね」
「すいません、迷惑かけました」
「いや、かけてないよ」
 大人の対応でだ、ロバートは子供に答えた。
「別にね」
「それならいいですけれど」
「ただ、犬はね」
「放したら駄目ですよね」
「何が起こるかわからないからね」
 微笑みながらもこのことは言うのだった。
「そこは注意するんだよ」
「はい、二度とこんなことにならない様にします」
「そうしてくれると有り難いよ」
「そうします」
 子供はロバートに約束してだ、そしてだった。コリーは子供と一緒に場を後にした。残されたジーンはというと。
 少し残念そうな顔になってだ、こう言うのだった。
「仕方ねえな」
「仕方ないか?」
「折角犬が来たってのにな」
 それでもだというのだ。
「すぐ飼い主が来るなんてな」
「まあそうだな」
「ったくよ、飼い主いるのはわかっていたけれどな」
「首輪してたしな」
「そういうことだからな」
 だからだというのだ。
「仕方ないな」
「そうだな、ただな」
「ただ?」
「いいもの見させてもらったよ」
 微笑んでだ、ロバートはジーンに答えた。
「俺的には」
「いいものって何だよ」
「ちょっとな、あとな」
「今度は何だよ」
「犬、好きなんだな」
 ジーンにこのことを問うたのだった。
「そうだったんだな」
「ああ、昔からな」
 ジーンはロバートの問いに微笑んで答えた。
「あたし実は犬好きなんだよ」
「そうなんだな、じゃあ一緒に住むか」
「おいおい、何でそんな話になるんだよ」
「気が変わったんだよ、それも動物飼っていい部屋にな」
「そこで犬飼おうっていうのかよ」
「そうしないか?」
 こうジーンに提案するのだった。
「これからはな」
「何か随分突拍子のない話だな」
「思い当たったらってあるだろ」
「日本の諺だよな」
「ああ、そう言うからな」
 ここではこういうことにしてなのだった、ロバートはジーンの背中を自分の言葉で押すのだった。そうしてであった。
 ジーンにだ、ロバートはこうも言った。
「どうだよ」
「じゃあそういう話するか?これから」
「夜に御前の部屋でな」
 笑って返すロバートだった、六月の高原に相応しい爽やかな笑顔で。それから二人と一匹で一緒に過ごす様になった。


高原で   完


                         2014・12・22 
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