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インディアン=ドレス

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第二章

「このボルチモアに来たアパッチの人だよ」
「アパッチっていうと」
「あの西部劇によく出て来る」
「ジェロニモのいた部族よね」
「凄く強かった」
「そう、そのアパッチだよ」
 まさにその部族の人だというのだ。
「その部族の人なんだよ」
「まさかここにアパッチの人が来るなんて」
「夢みたいよね」
 ジョーンもエマも驚きを隠せない顔で話した。
「アメリカにいることは知ってたけれど」
「それでもここにおられるなんて」
「ちょっとね」
「想像していなかったわ」
「アメリカは誰でもいるんだよ」
 これが兄の二人への言葉だった。
「このボルチモアもアメリカだから」
「オリオールズだけじゃないのね」
「インディアンスもいるのね」
「そうさ、ネイティブの人もいるんだよ」
 妹達のメジャーリーグを交えたジョークにも返した。
「それじゃあ日曜に」
「ええ、ジェロニモさんにね」
「会いに行くわ」 
 二人で応えてだ、そのうえでだった。
 姉妹はセオドアに連れられてだ、そのアパッチ族の先生の家に赴いた、家はごく普通のアメリカ東部十九世紀の趣の白い家だった。
 その家を見てだ、二人は玄関のところで言った。
「別にね」
「西部激に出る様なテントじゃないわね」
「あの三角のテント」
「インディ、じゃなかったネイティブの人達もね」
「今は二十一世紀だから」
 時代をだ、セオドアは妹達に言った。
「西部激とは違うさ」
「そこはなのね」
「違うのね」
「違うよ、もっと言えばアパッチ族でもね」
 確かに西部劇にスー族と並んで出て来るネイティブの部族だがそれでもだというのだ。
「戦ったりしないから」
「まあそれはね」
「流石に私達もないってわかるわ」
「幾ら何でもね」
「斧とかね」
「そういうのないわよね」
「騎兵隊と戦ったりとか」
 二人にもこのことはわかっていた、幾ら何でも時代が違う。アメリカもフロンティアがなくなって百二十年以上経っているのだ。
「バッファロー撃ったりとか」
「カウボーイの人は牧場にいるけれど」
「それでもね」
「今は宇宙の時代だから」
「ライトセーバーよね」
「新作の映画も観ないとね」
「そう、だから先生も斧じゃなくて教科書を持っているんだよ」
 セオドアは笑って述べた。
「穏やかで優しい人だよ」
「別に怖くなくて」
「戦う人じゃないのね」
「むしろネイティブの人は平和と自然を愛する人達だよ」
 西部劇では好戦的だが実際は、というのだ。
「温厚でね」
「優しい人達なの」
「映画とかとは違って」
「そうなのね」
「あんな怖い人達じゃなくて」
「あと嘘は」
「嘘を言うのかしら」
 二人は映画と違うと言われてだ、このことについても思った。
「映画と違うんだったら」
「いや、だからお姉ちゃんそこはね」
「誰でも嘘を言うから」
「ネイティブの人達もよ」
「それは中に入って先生から直接聞くんだよ」
 セオドアは二人にこう言った。
「いいね」
「とにかく中に入れ」
「そういうことね」
「そしてお話を聞く」
「これから」
「まずは話を聞くこと」
 兄らしくだ、妹達に確かな声で告げた言葉だ。 
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