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美しき異形達

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第四十五話 博士その四

 怪人を貫いた、これで勝負が決まった。
 そうしてからだ、薊は着地した。その彼女に続いて。
 怪人も落ちた、だが。
 何とか膝を追って墜落せずに着地出来た、しかし。
 その背には符号が出ていた、その符号を見て薊は言った。
「あたしの勝ちだな」
「参ったね、これは」
 怪人も立ち上がりつつ言う。
「まさか一気にかわして」
「そうさ、跳んでな」
「僕の高さまで来てなんだね」
「一撃で決めたんだよ」
「地面にいたけれど」
「空にいる相手にはな」
 そうした相手にはだ、まさにというのだ。
「こうすればいいんだよ」
「同じ高さまで跳んで」
「倒したんだよ」
「頭いいね」
「闘いは頭ってな」
 薊は笑みを浮かべてこうも言った。
「面白いだろ」
「そうだね、君はただ力があるだけじゃない」
「頭もっていうんだな」
「そうだよ、じゃあね」
「それじゃあか」
「僕は去るよ」
 自分でもだ、背の符号のことがわかっているから言うのだった。
「これでね」
「じゃあ名残惜しいけれどな」
「さよならだよ」
 薊に言ってだ、そして。
 怪人は灰となり消え去った、これはこの怪人だけでなく。
 蛾の怪人もだ、向日葵の矢に貫かれてから。
 空に留まってからだ、背に符号が出た状況で下にいる向日葵に言った。
「地面にいてもね」
「弓矢ならね」
「攻められるっていうのね」
「そう、この通りね」
 まさに、というのだ。
「それが弓矢のいいところよ」
「私のボールも全て壊して」
「そしてよね」
「かわしたと思ったわ」
 左に飛んでだ。
「けれどかわす方向も読んで」
「もう一撃放っていたのよ」
「頭を使ったのね」
「そうなるわ」
「面白いことをしたわね」
 怪人は死を前にしてもそれまでの態度を崩さず言った。
「してやられたわ」
「うん、私も会心の勝利よ」
「そうでしょうね、じゃあ」
「これでよね」
「私は消えるわ」
 この怪人もこう言うのだった。
「それじゃあね」
「ええ、もうね」
「さよならと言っておくわ」
「それでね」
 こう話してだ、そしてだった。
 この怪人も消えた、後に残ったものは灰だったがその灰もだった。
 完全に消え去った、後には何もなかった。これで今回の戦いは終わった。
 その全てを見届けてだ、裕香は薊達に言った。
「今回もね」
「急だったな」
「うん、いつも通りといえばいつも通りだけれど」
「本当にいつもな」
 薊も言うのだった。
「急に出て来るな」
「周りに誰もいない時に」
「そこは律儀だな」
「律儀といえば律儀ね」
 裕香も薊のその言葉に応える。
「確かに」
「そうだよな、だからな」
「怪人を知ってるのはね」
「あたし達だけなんだよな」
 そして智和である。 
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