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オズのベッツイ

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第四幕その三

「とてもだけれど」
「いえ、頼りにしてますよ」
「ベッツイさん達がいてくれてですから」
「僕達っ楽しく旅が出来ます」
「どんな場所でも行けます」
「僕達だけじゃとてもです」
「ううん、私なんかね」
 やっぱり少し苦笑いになって言うベッツイでした。
「何も出来ないけれど」
「何言ってるのよ、あんただってこれまで何度も危機を乗り越えてきたでしょ」
 猫がそのベッツイにこう言いました。
「何度も何度もね」
「だからなのね」
「そう、頼りにされるだけのものはあるわよ」
 ベッツイにです、そうしたものが備わっているというのです。
「だからそんな恥ずかしそうになる必要はないのよ」
「だといいけれど」
「とにかくね」
「うん」
「薊の国に行ってもあんたがいてハンクがいて」
 猫がここで言うことはといいますと。
「何よりも私がいるから心配無用よ」
「そこでそう言うのね」
「言うわよ」
 つんとです、猫は猫特有のおすましを以てベッツイに答えます。
「この中で私が一番奇麗でしかも頭がいいから」
「相変わらずの自信家ね」
「猫は皆そうなのよ」 
 自信家だというのです。
「ユリカだってそうでしょ」
「確かにあの娘も自信家ね」
「自信家でない猫なんて猫じゃないわ」
「誰もがなのね」
「そうよ、それは何故かというと」
 猫は誰もが自信家である理由はといいますと。
「猫が優秀だからよ。頭がよくて素早くてね」
「しかも奇麗だからっていうのね」
「これだけのものがあるからよ」
「だから自信家だっていうのね」
「そう、私達以上に素晴らしい生きものはいないのよ」
 こうベッツイに言うのでした。
「それで自信がない筈がないじゃない」
「そうなるのね」
「その通り、その私がいるからには」
 胸を張ったままの言葉でした。
「ベッツイに何かあっても心配無用よ」
「何でここまで言う娘なのに」
 恵里香は首を傾げさせてです、自信満々に言い続ける猫を見つつ言いました。
「嫌いにならないのかしら」
「猫だからでしょ」
 ナターシャがその恵里香にお話します。
「猫は皆こうした生きものだし。それに傍にいてくれているだけでね」
「何もしなくても?」
「悪戯ばかりしてもね」
 それでもというのです。
「見ているだけで心が癒されるから」
「嫌いにならないのね」
「私も猫好きよ」
「僕もだよ」
「僕も」
「僕もね」
 男の子三人も言うのでした。
「猫大好きだよ」
「見ているだけで和めるよね」
「ついつい触りたくなるよ」
「それが猫なのよ」
 ナターシャは恵里香にあらためて言いました。
「普通にいてくれているだけで違うのよ」
「それで嫌いじゃないのね、この娘も」
「私の魅力に感謝しなさい」
 またこうしたことを言った猫でした。 
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