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秋葉原総合警備

作者:イトヒー
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都外のアニメフェス No.2

 陽一は免許が無かった。イベント会場へも電車で向かう。教習所でも問題があったようだ。
「仮免でひとっ走りしてた時に、飲酒運転してたおっさんが、後ろから玉突き起こしやがってな。腹立ってボコボコにしたら、教習所落とされた。」
「…陽一、ホント馬鹿だね。」
 表情変えずに、小さい美咲の頭に五本指を突き刺す。
「お前も停学中に教習所行って、退学喰らったんだろが。」
「…いぃ!痛いいぃ!」
 途中に今回の依頼主である、イベント運営会社が見えた。ここから車で送って貰えるそうだ。一度断られた依頼、二人が来てくれて委員長も上機嫌であった。
「秋葉原があんな状況になってから、見学にも影響が出ないか、ビクビクしています。本当に助かりましたよ。」
 事務所の人手が足りないのではないかと心配されたが、きちんと手は打ってあった。美咲の携帯から着信音が鳴る。父親からであった。
「おう、美咲か。なんとかっつうライブの護衛終わったで!」
「あぁ、ありがと。あんまり目立つと捕まるよ。」
「気にすな!ちゃんと特例貰っとるわ。…美咲もええ歳やから…。」
 確認出来れば、容赦なく切る。ええ歳なんて、もう数年前から聞いている気がする。父親も老けていた。高速道路を走っている途中、見えてきた。アニメフェスティバル会場。様々な国際的なイベントも開かれる。秋葉原を中心としたアニメ、アイドルブームは間違いなく都外に広まっている。


「会場へお越しの方は、こちらが最後尾になりま~す!ご協力をお願いいたしま~す。」
 青年、カップル、子連れから、外人まで。折り畳まれた長蛇が、会場の周辺を囲んでいた。バザー商品が無くならないようにと、多くの人の手には売りに出すグッズが抱えられていた。
「わぁ…多い!」
「警備員、数足んねぇよ!どういうことだ!」
 鋭い視線を委員長に向けた。気迫におどおどする委員長。
「これでも、かなりの人数を配備させました!お客さんが多過ぎるんですよ!」
 怒鳴り声も大人数の盛り上がりに消されてしまう。とてもではないが、トラブルを見つけることは出来ない。半ば、事件が起きないことを祈るしかない。
「まずは、控え室で日程を説明します。こちらへ。」
 委員長の後についていく二人を人々の隙間から、とある青年は見ていた。スマートフォンを取り出し、素早く文字を入力していく。

『鬼畜警備員発見。皆の者注意せよ。』


「…それではよろしくお願いします。」
「怪しい奴は、即刻呼び出し。危険な行動を取った場合は、無理矢理でも押さえつけろ、って他の警備員にも伝えな。…行くぞ美咲。」
 警備員待機所のドアが閉まったのと同時に、会場の扉が開き、人々がなだれ込んだ。限定のグッズ求める者も入れば、後ろ気にせずにマイペースにブースを回る人も。ブームの言葉が納得出来る程の盛り上がりだった。見た限りでは怪しい様子の人は見当たらない。あるいは、見つからない。出品一覧を物色する一人の男。レアの小物をこっそりとポケットに入れる。
「みっけ~。」
 美咲は躊躇なく男の襟を鷲掴み、引きずって連行していく。早くも見つかった。これは運などに任せてはいられない。短い時間おきに、場所を移しては多くの来客を観察する。
「あの…陽一さん?」
 以前、人質にされがらも陽一の豪快な技に助けられたアイドルの姿が。変装をしていて、気づくのに時間がかかった。
「元気にしてたか。」
「はい、おかげさまで。ここまで警備するんですね…。大変ですね…。」
「今日は特別だ。…気を付けてけよ。」
 一層気合いが入る。せっかくの大仕事、成功させて報酬をたんまり貰うとでも考えているのだろうか。


『現在の状況』
『チビJKが、万引き犯連れてったwあれが鬼畜警備員のツレか』
『意外と一般人ばっか。目立った人見当たらない。』

『予定通り計画実行ってことで。』

 会場敷地とは少し離れた場所のネットカフェ。分割されたフェスティバルの様子を映す画面。最後の発言を投稿したのはこの男だった。
「グッズもいいけど、やっぱ本物だよね…。」
 このチャットを見た人は会場には何人いるか。会場の外には何人いるか。
「陽一~。」
 連絡用として美咲から通話が入った。
「おう、どうした。」
「陽一はこの中で有名人探して。…なんとなく、何が起こるか分かった。」
「…了解。」
 持ち場の椅子を椅子を立ち、辺りをくまなく見回し、人混みの中に潜り込んでいった。人気アニメのコーナーに立ち寄る、一人の女性。深い考え事をしている顔だった。
「私のせいで…人気落としたんだよね。」
 女性は次のコーナーへ歩いていった。 
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