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小説小ネタ倉庫

作者:龍牙
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ハイスクールV×D ライド29

(大人しくしていてくれよ……ブラスター・ダーク)

 四季は己の手の中にある超兵装ブラスター・ダークを握りなおす。対する相手は地獄の番犬ケルベロスと、堕天使の幹部コカビエル。……恐らくだが教会から奪取された四本の聖剣が統合されれば、それを持ったフリードと言うはぐれ神父も参加するだろう。
 地獄の番犬ケルベロスと聖剣エクスカリバー(不完全)を前座にして、聖書に記された堕天使の幹部コカビエルが控えている。

 それを思うと自然と手に汗が滲んでくる。カイザードと言う頼りになる相手は現在別行動中……負けたら終り、全てを失う。

 一瞬、後ろに立つ詩乃へと視線を向け、互いに頷きあいケルベロスへと向き直る。負けられない理由は背中に背負っている。四季にとって目指す高みはコカビエルよりも高く『惑星クレイの英雄達』の領域だ、高がペット程度には負けられない。

「届かせてもらうぜ……オレと詩乃の二人で」

 ブラスター・ダークを構え、四季はケルベロスを見据える。……先ずはケルベロスと言う山を越えるのみ。



「よーしワン公、躾がなってないようだからオレが調教してやる!」

 気合を入れて叫ぶ一誠の手に現れる赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)

「行くぜ、ブースッドギアァァァァァァァァァッ!」


『Boost!』


 機械音と共に一回目の強化が終ると共にケルベロスと向かおうとする一誠をリアスが止める。

「イッセー、あなたは今回サポートに徹して貰うわ」

「えっ?」

「高めた力を私達に譲渡して頂戴。あなたが高めた力をチームで使えば大きな戦力アップが期待できるわ」

 四季との戦いで見せた一誠の力を譲渡された際の木場の力……四季の超兵装ブラスター・シリーズの前にこそ通用しなかったが、それでも強力である事は間違いない。

「そうか。素のオレよりも遥かに強い部長達に力を譲渡すればその力は絶大……! それならコカビエルにも通用するか……?」

 内心、四季に通用しなかったので不安も残るが、それでもリアスや朱乃に力を譲渡すればコカビエルにも通用するだろうと思う。





(さあ、存分に……その力を使わせてもらう)

 一誠と戦った時とは違う。超兵装ブラスター・ダークの力を完全ではないにしろ、開放させていく。制服であったはずの袖は肩までが漆黒の甲冑へと形を変え、四季の片目が白目の部分が黒く染まり、黒目の部分が真紅に染まる。

 これで力による侵食は強まるが剣の発揮できる力は段違いに大きくなる。四季と対峙していたケルベロスは四季……と言うよりも剣から放たれる圧力に思わず後ずさる。
 四季は本来の持ち主である影の英雄(ブラスター・ダーク)ではない。引き出せる力もそれほど多くは無いだろう。だが……その僅かな力でさえ、地獄の番犬を怯ませる領域にあるのだ。

 ブラスター・ダークを握りなおし、地面を蹴ると同時にケルベロスへと肉薄する。それと同時に、

「キャン!!!」

 ケルベロスの三つの首のうちの一つ、その一つの両の眼球に一本ずつ矢が突き刺さった。四季の動きに合わせて彼にとっての最愛の相棒による援護が為されていた。
 その隙を逃さずに四季は両目を打ち抜かれた頭へと向かい、

「はぁ!」

 ブラスター・ダークの一閃によってケルベロスの中央に有る首の一つを切り落とす。

(先ずは上手く行った)

 相手の反撃が来る前に相手の体の真横へと移動する。本来なら左右どちらかの首を狙いたい所だったが、炎でも吐き出そうとしていた中央を優先的に狙ったので、左右もそれほど安全では無いだろう。体ごと四季へと向き直り前足で叩き潰そうとするケルベロスだが、それよりも早く詩乃の放った矢がケルベロスの片目に突き刺さる。

「どんなに強靭な皮膚でも、内臓だけは例外、ってな」

 ケルベロスの皮膚は強靭だ。少なくとも、並みの武器では切り裂く事は難しいだろう。……七分の一に分割されているとは言えエクスカリバー級の武器でもなければ、簡単に圧倒することは出来ないだろう。

 だが、四季の手にあるのは聖剣を超える超兵装であり、聖剣よりもランクの低い詩乃の弓でも、彼女の技量ならば動き回るケルベロス相手にでも、正確に外部に出ている内臓器官……この場合、眼球を狙い撃てる。
 同時に四季が彼女から注意を引き離すと同時に、彼女から見える位置にケルベロスの弱いであろう部分を一瞬でも向けさせている。その一瞬でも有れば打ち抜いてくれると信じているからの行動である。そして、それによってできた隙に……ケルベロスを容易く切り裂ける四季の一撃を与えている。

 四季と詩乃にとっての仲間達……二人と同じ様にフリーとして活動している者達が居れば戦い方も変わるが、後衛の詩乃と前衛の四季……それが二人の役割分担だ。
 一瞥する事無く四季はケルベロスを翻弄し、詩乃が作ってくれた隙を逃さずに剣を振るう。一瞥する事も無い、彼女は絶対に矢を外さないと言う信頼、何処にどのタイミングで動くかも手に取る様に分かる。


―今ダ―


(言われるまでも無い!)

 四季の心に響く超兵装ブラスター・ダークの声。それに対して心の中でそう返す。

「刀身開放! バーストスラッシュ!」

 巨大な光の刃を展開させ、ケルベロスを×の字を描くように切り裂く。声にならない悲鳴を上げて倒れるケルベロスを一瞥しながら、魔法陣の中に浮かぶエクスカリバーへと視線を向ける。

「一つになってる」

「っ!? 遅かったか?」

 四季と詩乃、二人の視線の先に有るのは一本に統合された聖剣(エクスカリバー)。そんな時、四季達へとコカビエルの方から“滅びの魔力”が向かって来る。一誠から譲渡された力によって強大な物になったリアスの放った魔力だが、それはコカビエルには通用せず、片手で弾かれてしまった。

「っ!? 詩乃!?」

 慌てて四季は彼女の前に立ってブラスター・ダークの光の刀身を作り出す。

「くっ……しまっ!」

 滅びの魔力を受け流しながら弾き返す事に成功するが、その代償にブラスター・ダーク器を弾かれてしまった。

 慌ててもう一つの超兵装、ブラスター・ブレードを展開、剣を弾かれたのは初めての経験だが、それに動じる四季では無い。

 ゆっくりと落下しながら戦場となっている校庭に突き刺さったブラスター・ダーク。其処に映し出されていたのは……

 憎悪の目でバルパーを睨んでいる木場と、心から愉しいと言う様な嘲笑を浮べているバルパーだった。

 木場の憎悪とそれを向けられるバルパーを刃に写しながら、怪しげな輝きを浮べるブラスター・ダーク。
 それはまるで、力と言う名の魔道へと手招きしている様に見えた。







 
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