| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十一話 現状維持

あの後、アリサ達とは今まで通り過ごすという事で話がついた。

もしも、これで何か態度を変えてしまえばそれでさらにるいへの虐めが過激な物になってしまう可能性がある。

それを危惧してのいつも通りのように、という事だ。

「なあ、みんなどうしたんだ?」

教室に戻ってみると、高宮が訝しげな顔をしてみんなに何かを聞いている。

おそらくは、教室内の異変に今頃になって気づいたのだろう。

全はそんな高宮を無視して席に座り、読書を開始する。

「え、えっとね……」

「ちょっとな……」

クラスメイト達は口を開かない。それもそうだろう。

なぜならば、自分がそれを口にすれば虐めの矛先が自分にくるかもしれないからだ。

「なんだよ、みんなして変なの……」

それだけ言って高宮はなのは達のいる所に向かう。

当然かのように、そこにはるいもいるのだが……るいはその光景を見た瞬間、少しだけ嫌な顔をする。

おそらくは、高宮がそこまで重要視していない事が嫌だったのだろう。

しかし、全は今の自分に何も出来ない事を知っている。だから、何もしない。

(俺は、無力だな……前世でも、無力だったし……)

全が思い出すのは前世の小学校時代。まだ神を宿す前、その時に全の幼馴染は虐めにあった。

全はその時、幼馴染を元気付ける事しか出来なかった。

虐めをしていた相手の情報を色々と集めたりもしていたがそれでも決定打にはなりえず、結果的に虐めをしていた側を焦らせてしまい、実力行使を許してしまった。

その事が全の脳裏をよぎる度に、全は苦しんでしまう。自分が無力だと思い知らされるからだ。

(あの時のような事は起こらないようにしないと……!)

全は読書をしながらそんな決意を固める。

あの時のような、悲しい顔はもう二度と見たくないから。










放課後になり、るいは居た堪れないのか誰にもさよならなど言わずさっさと帰っていった。

高宮はそれでも気にもせずになのは達と話していた。

それを見て全は思わず憤る。

アリサ達も思うところがあるのだろう。あまり高宮と話していない。というより、無理して話しているのが見てわかる。

全はそれを一瞥した後、家に帰る為に教科書等をカバンに詰め込む。

『マイスター、どうなさるおつもりですか?』

家に帰る道すがら、首にかけているシンが全に問いかける。

「どうするって……止めるに決まってるだろ。俺の前世の事を知っているなら聞く必要はない筈だけどな」

『確かに知ってはいます。しかし……彼女は未だ記憶を取り戻していないんですよ?』

「それでもだ」

全は自分なんかと友達になってくれた人達には幸せになってもらいたいと思っている。例え、記憶を取り戻していなくともそれでも幸せになってもらいたいのだ。

それこそが全の心の中にある根源。その集大成ともいえるのが神……自身の母に願った特典の中の一つに見て取れる。

しかし、シンはそこからもう一歩進んだ考えをしている。

シンは、自身のマイスターである全にも幸せになってもらいたいのだ。

なぜならば全は自身の幸せの事など微塵にも気にしていない。むしろ、自分は幸せにはなれないと決め付けているのだ。

だからこそ、アリサ達の記憶が戻るわけがないと考えていた。

しかし、アリサ達の記憶は戻った。

シンの考えならこれで全は幸せを手に入れたいと思う筈だった。

しかし、シンの思惑は外れた。

全の考えはあまり変わらなかった。自身の幸せなどまだ二の次。まずは他人の笑顔が最優先。

そう考えを固定させてしまっているのだろう。

(どうやったらマイスターは考えを改めてくれるのだろうか……)

シンはいつでも自身のマイスターの事を考えている。

全は前世での経験でからか、何者にも期待しない。

期待を寄せれば寄せるだけ……その相手が不幸な目に合ってしまうからだ。

全の師匠もそうだった。全は師匠に全幅の信頼を寄せ。そんな師匠のようになりたいと思った。

しかし……世界はそれを許さなかった。

シンのデータ上に表示されたのは、とある集合写真。

真ん中にいる少年は前世の全。つまりは上条東馬だ。

東馬を囲むように笑顔があふれている前世の全の仲間。

そんな全の頭に手を置いて笑顔でいる女性。彼女が全の前世の師匠、緋村(ひむら) 麻子(あさこ)だ。

髪は名前とは違って青みがかった黒髪を後ろで纏めて、ポニーテールにしている。目元は鋭い。そして目を見張るのは身長だろう。

普通の女性よりも身長が高いのだ。180cmを超えている。

彼女はそれを少しコンプレックスに感じていたようだが。

しかし、そんな彼女はもう。

(……止めよう。こんな事、考えてはマイスターに失礼だ)

そう決めてシンはデータを元の場所に戻す。

蒸し返してはまた戻ってしまうかもしれないからだ。

師匠を()()()()()()()()あの時のように……。

あの…………













































人を殺しても、何も感じなくなり、仲間でさえも信じられなくなったあの時のように……。 
 

 
後書き
遅くなり、申し訳ありませんでした。

ええっと、今回の話は幕間みたいな感じに捉えてくれるといいと思います。

次回から話が動き出す……はず。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧