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魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~

作者:月神
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空白期 中学編 15 「萌える少女」

 私――月村すずかは知っている人は知っているように無類の猫好きである。家には数多くの猫を飼っているし、最近では猫に触れ合うことのできるカフェを巡るのが趣味だったりする。
 今日も新しく出来た猫カフェに来店している。ひとりで来ることもあるけど、休日ということもあって友達と一緒だ。

「ごめんねショウくん、今日付き合ってもらっちゃって」

 友達というとなのはちゃん達を想像したかもしれないけど、私が今日一緒に居るのは今言ったとおりショウくんだ。彼とは本や工学系が好きという共通点があるおかげで昔から親しくしている。異性では最も仲が良いだろう。
 何でショウくんとふたりっきりなのかというと、別にショウくんとお付き合いしたいからといった感情じゃないよ。仲良くしているし、異性としても意識してるけど……特別な感情は今はないかな。お姉ちゃんや恭也さんを間近で見る機会が多いから恋愛には興味あるけどね。まあ今後どうなるかなんてそのときになってみないと分からないけど。
 話を戻すけど、ショウくんとふたりっきりなのは単純になのはちゃん達の予定が合わなかったからだ。猫好き仲間であるシュテルちゃんは来る予定だったらしいけど、急に予定が入ってしまったのだとか。電話で「あとで猫達の写メをください」と言ってくるあたり、彼女は私の仲間だと思う。

「別にいいさ。どうせ予定もなくて暇だったし」
「本当に? はやてちゃんやディアーチェちゃんとデートとかしないの?」

 いじわるな質問だとは分かっているけれど、私も年頃の女の子なので意外と気になるのだ。ショウくんははやてちゃんとは昔から仲が良いし、ディアーチェちゃんとも気が合うようで今は一つ屋根の下。これを知っていて気にならない女の子はいないはず。
 だからげんなりしたような顔をされると分かっていても、ふたりっきりという状況で質問しないというのは無理な話だよね。

「あのな……そういう予定があるならここに来てないし、一緒に出かけたからってデートって扱いにされると俺もあいつらも困るんだが」
「そうかな? ディアーチェちゃんはそうかもしれないけど、はやてちゃんは笑顔で自慢してきそうだけど」

 まあ本気でデートだとは認識してないから言うんだろうけど。昔と変わらず恋愛モノの本は読んでるみたいだし。
 お茶目な部分というかよくしゃべるからで忘れそうになるけど、はやてちゃんって現在進行形で文学少女なんだよね。最近は図書館とかで会うことも少なくなったからつい忘れそうになっちゃうなぁ。まあお仕事があるから仕方がないとは思うけど。

「はやてもすずかみたいな友人を持てて幸せだろうさ」
「言ってることは良いことだけど、今の口調的に素直に喜べないかな」
「喜ばれても困る。悪い意味で使ってるから」

 相変わらずはやてちゃんには遠慮がないよね。まあそれだけふたりの距離が近いってことだろうけど。他に今みたいにズバズバ言う相手って……多分シュテルちゃんくらいだろうし。
 こうして考えると、良い意味で言えばよく話しかける。悪い意味で言えばよくからかってくる相手に容赦がなくなるのかな。
 あっでも、アリサちゃんとかとは結構ズバズバと言い合ってるよね。学校じゃあまり話したりはしてないらしいけど、翠屋とかで会ったときは話してるし。
 性格的にふたりの相性が良いのかな? 性格に似たところのあるディアーチェちゃんとも相性良いみたいだし。

「ショウくん、親しい仲にも礼儀ありって言うよ。あんまり言ってるとはやてちゃんだって悲しむんじゃないかな」
「俺が言う以上にあっちのほうが言ってると思うんだけどな……というか、猫と遊ばなくていいのか?」

 ショウくんの問いかけに今日の本来の目的を思い出す。お茶をするだけなら他の場所、通い慣れた翠屋でいいのだ。わざわざこの店を訪れたのは猫達と戯れるため。
 家にいる猫ちゃん達には何だか悪い気がするけど、それはそれ、これはこれ。家の子達には家の子達の、ここにいる子達にはここにいる子達なりの可愛さがあるんだから!

「じゃあ遠慮なく……ショウくんは来ないの?」
「俺は見てるだけでいいよ」
「えぇー猫ちゃん達可愛いよ」

 愛くるしい目とかキュートな耳とかプニプニの肉球とか! せっかくお金を払うんだから最大限満喫しないと勿体無いよ!

「えっと……表情だけだと言いたいことが読み取れないというか、すずかさん近いんだけど」

 言われて気が付いたが、いつの間にかショウくんの目の前まで自分の顔を近づけていた。
 しかし、猫達への興奮――いや愛の強さ故にそんなことは気にならない。今私の中にある想いは、一緒に猫ちゃん達の可愛さを満喫すること。基本受身のショウくん相手に遠慮していてはダメだ!

「ショウくん」
「え、はい」
「私と……私と一緒にモフモフしよ?」

 疑問系ではあるが、おそらくはたから見た私の顔は有無を言わさないものな気がする。だってショウくんが若干引いてるし。まあショウくんの手を握り締めてるからこれ以上は離れられないんだけどね。

「ショウくんは猫嫌い?」
「いや、別に嫌いじゃないけど」
「けど?」
「……男が猫と戯れるのはどうかと」

 何を言ってるの!
 誰がいつ男の子は猫ちゃんと戯れちゃいけないって決めたの。良い、凄く良いよ猫と戯れる男の子。私はそういう男の子と仲良くなりたい。デートとかになれば、今日みたいに猫カフェに行って一緒にモフモフしたい。
 あっ……でも、あまり猫ちゃんばかりに構われると少し妬いちゃうかも。「私と猫……どっちが好きなの?」とか聞いちゃったりして……。

「あのーすずかさん、黙ってないで何か言ってほしいんだけど。何か考えてるのは表情見てたら分かるんだけど……」
「気にしなくて大丈夫だよ。猫好きの男の子を嫌いな女の子はいないから」
「いや、いると思うけど。猫が嫌いな人はいるわけだし」
「うん?」
「な、何でもないです」

 何でショウくんは引き攣った笑みを浮かべてるのかな? 別に怒ったり変なことは言ってないはずだけど。
 ま、いっか。ショウくんも了承してくれたみたいだし、猫ちゃん達がいる場所に行こうっと♪

「……すずか」
「なに?」
「逃げたりしないから……手は放してほしいんだけど」

 うーん……まあショウくんの性格的に店の外に出たりはしないだろうけど、モフモフしないで見てるだけって可能性はあるよね。
 私も男の子と触れ合うのは恥ずかしいけど、もう少しで猫ちゃん達のいるブースに着くし、ショウくんはおかしなことをする男の子じゃないから別にいいかな。

「すぐ猫ちゃん達のところだし、このまま行こう」
「……すずかって見かけによらずたまに大胆なところがあるよな」
「そうかな? ショウくん以外の男の子にはこういうことしてないけど」
「そういうところ限定ってわけでもないんだが……というか、さらりと今みたいなこと言うなよ」
「ショウくんは誤解しないでしょ?」
「まあ……すずかとははやての次くらいに付き合い長いからな」

 付き合いが長い=親しいってわけでもないんだけどね。
 確かに私ははやてちゃんの次くらいにショウくんと仲良くし始めたけど、私より仲の良い子はたくさんいるわけだし。この世界にいるメンバーを除いても、例えばシュテルちゃんとかレヴィちゃんとか。
 他にもユーノくんとかクロノくんとも親しくしてるよね。ふたりだけじゃなく、ショウくんもお仕事があったりするから、あまり会えてないらしいけど。でも同性だからか会ったときは会話が弾んでるとか……みたいな話をリンディさんとかエイミィさんに聞いた気がする。

「けど誰かに見られたら誤解されるぞ?」
「ふたりで来てる時点でアウトじゃないかな。手とか繋いでなくても誤解する人はするだろうし。でもまあ、たまにはいいんじゃないかな。他の子とも遊んでるって分かれば、はやてちゃんとかも質問されたりすること減るだろうし」
「友達想いなことで……俺に対する配慮は全くないけど」
「だってショウくんよりもはやてちゃん達との方が仲良しだもん」

 私だって人間だからダメだとは思うけど、少しくらい贔屓はするよ。するのはこういう風に何気なく話せるときくらいだけど。
 と考えている間に猫ちゃん達の楽園に到着。様々な毛並みの猫ちゃん達が歩いていたり、寝転がっている。何とも幸せな光景だ。

「ショウくん、猫だよ猫」
「そ、そうだな。ここで見てないで近くに行ったらどうだ?」
「うん」

 お言葉に甘えて1番近くにいた白い猫ちゃんに私は歩み寄る。お店の猫だけあって人に慣れているようで逃げたりはしなかった。
 はぅ……可愛い。目はくりくりしているし、耳の形も良い感じ。肉球もなかなか……撫でてあげたら気持ち良さそうな顔をしてくれるし、幸せ過ぎるよ。

「これはシュテルちゃんに教えてあげないと」

 シュテルちゃん、ああ見えて猫好きだし、この幸せは私だけで味わうのは勿体無い。でもシュテルちゃんってひとりだとこういうところ見たりしても入ったりはしないだろうから、今度誘ってあげようっと。
 白猫を可愛がっていると他の子達も寄ってきたので、私はまとめてモフモフすることにした。これほどの幸福感が得られるなら毎週のように通ってもいいかもしれない。
 ショウくんは楽しんでるかな?
 そう思って周囲を見渡すと、壁際に腰を下ろしてこちらを見ている姿が見えた。彼の顔は微笑ましい。どうやら猫と遊ぶ私を見てあのような顔をしているようだ。
 ずっと見られていたかと思うとさすがに恥ずかしく思ってしまう。というか、私を見てないで自分も猫ちゃんと遊べばいいのに。そのように頬を膨らませそうになったが、よく見てみるとショウくんの足元に1匹の猫が居た。
 その猫は構ってほしいと言わんばかりにショウくんの足に頬ずりしている。仕方がないと思ったのか、彼は小さく息を吐いた後、優しく猫の頭を撫で始めた。

 ……ショウくんのああいう顔、久しぶりに見たかも。

 猫に向けているショウくんの顔はとても優しげだ。あのような顔は……前はよくはやてちゃんに向けていた気がする。今では呆れたり、不機嫌そうな顔ばかり向けている気がするけど。
 今みたいな顔してれば、もっと女の子にもモテると思うんだけどな。まあ今でも充分にモテてるんだけど。同年代の子より落ち着いているからクールだって認識されてるし、勉強も運動もできる。料理の腕前も小学校のときの家庭科の授業で知ってる人は知ってるし……言い方はあれだけど優良物件だよね。
 そういえば、前にこの手の話をしたとき、シュテルちゃんが少し違った反応をしてたような……。
 シュテルちゃんとショウくんの関係は、何ていうか友人以上みたいなところがあるけど、恋人って感じの気配はない。シュテルちゃんも前に仕事上のパートナーって言ってたような気がするけど……でも、ひょっとするとひょっとするんじゃ。
 チラリとショウくんを見てみると、じゃれついていた猫が離れて行っていた。自分から甘えていたのに気が済んだら離れていくあたり気まぐれさんだ。まあそこも魅力的なんだけど。

「あ……」

 今度は別の子が近づいていってる。同じ毛並みだけど兄妹とかなのかな。片方は慎重というか顔色を窺うような感じだ。もう片方は勢い良くショウくんに跳びついてじゃれ始める。
 いきなり顔に飛びつかれれば驚くのは当然だけど、慌てるように体をバタつかせるショウくんというのは少し貴重な光景に思えた。

「ショウくん大丈夫?」
「ああ、ひっかかれてはない……」

 ショウくんは顔に跳びついてきた猫を掴みあげながら、どこか呆れたような顔を浮かべる。

「どうかした?」
「いや……何ていうかレヴィみたいな奴だと思って」

 確かに掴み上げられているのにどこか楽しそうな顔をしている猫の姿は、貶されているのに褒められたと勘違いしているときのレヴィちゃんに似ていた。
 その猫の行動を詫びるようにショウくんの手を舐めるもう1匹は、何となくフェイトちゃんのようにも思える。ショウくんがお前を怒っているわけじゃないと言いたげに頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。
 考えておいてなんだけど、実際の人物に置き換えるととてもイケない構図になってしまう。なので脳内変換するのはやめることにした。

「ふふ、ショウくん人気だね」
「すずか、人気っていうのはシュテルみたいな状態を言うんだよ」

 照れ隠しなのかそう言ってショウくんは、レヴィちゃん似の猫を私の頭の上に乗せてきた。彼がこういうことをする相手は限られているのでほんの少し嬉しかったりもする。まあ私がはやてちゃんとかだったらチョップでもされたんだろうけど。
 まあ……シュテルちゃんは凄いよね。前に私の家に来たときなんか、気が付けば猫で埋まってたし。シュテルちゃんに勝てる人はそういないんじゃないかな。

「あれは……ある意味異常なんじゃないかな」
「それは言える……すずかって時たま毒吐くよな。あれか、アリサあたりと話しててストレス溜まってるとか」

 確かにアリサちゃんは素直じゃないし、怒りっぽいところがあるからほっぺとか引っ張られることはあるけど、凄く良い子で私の親友なんだから。ストレスなんて溜まってないよ。反応が面白いから偶にからかったりしてるし。
 むしろ、アリサちゃんのほうがストレス感じてるんじゃ……まあ互いにやったりやられたりしてるからお互い様だよね。

「ショウくん、そういうこと言うと怒るよ」
「怒ったら可愛い顔が台無しだぞ」
「言うならもっと気持ち込めて言おうよ」
「それ、自分から口説けって言ってるようなもんだぞ」

 1秒ほどの沈黙の後、私達はほぼ同時に吹き出した。
 猫がいることで舞い上がってるのもあるだろうけど、みんなと比べれば大人しい私が、男の子とこのような会話をするなんて実に不思議だ。でも嫌な気分じゃない。むしろ、このように自然体で楽しめる異性がいるというのは喜ぶべきことだろう。

「……人も多くなってきたみたいだし1回出るか?」
「うん……名残惜しいけど独占はダメだもんね」
「ああ。それに猫と遊んでるときのすずかは心配だからな」
「え?」
「えって、猫と遊んでるときの自分がどれだけ無防備か自覚がないのか?」

 ふと先ほどまでの自分を振り返ってみると、猫の目線に合わせるために寝転がったりしていた。夏場ということもあって、私もそれなりに薄着をしている。人様に見せられないような格好にはなっていなかったと思うけど、もしかすると危ない状態だったかもしれない。

「そ、そういうのは早く言ってよ!?」
「いや、顔を赤くするほど危ない状態じゃなかったんだけど。というか、その状態だったとして俺が注意するのは、それはそれでダメだろ」
「それは……そうだけど」
「猫が好きなのは分かるが、女の子なんだからもっと周りの目を気にするんだな」

 そう言ってショウくんは一足先に猫達がいるブースから出て行く。まるでお姉ちゃんから注意されたような気分だった私は、無意識のうちに唇を尖らせていた。だが周囲にいる人々がカップルばかりになっているのに気が付いた私は、急いで彼のあとを追う。もしカップルだと思われていたのだとしたら、とても恥ずかしい。


 
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