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ウルゼロ魔外伝 絆の英雄の子と若き魔導師たち

作者:???
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第一部 破滅からの救済者
無印編 駆け出し魔法少女と群青の巨人
  青い光

惑星エスメラルダ。
その星は遥か昔から深い闇とも言える策謀によって呪われていた。特にハルケギニア大陸の人間とサハラ砂漠のエルフの対立、ハルケギニア各国の6000年もの争いと腐敗の歴史は酷く、いつ無関係な異星人や怪獣によってその星の知的生命体は攻め滅ぼされてもおかしくなかった。だが、そんな滅亡の危機にあった星も、ある若き異星人の戦士とその仲間たちによって守られた。
目の前に自分たちより遥かに強大な力を持つ黒い巨人。そんな強敵を前にしても臆さなかった英雄たちの中の、二人の英雄。
そしてその心に二つずつ宿る四つの勇敢な心と魂。

青い月の光と同じ優しい輝きを持つ若きウルトラ戦士『ウルトラマンゼロ』と紅い月の光のごとき勇気を備えし伝説の『ウルトラマンノア』。

二度と輝くはずのないほど腐敗した世界を、もう二度と消え去ることのない輝きに満たした光をもたらした。


爪痕は深く刻まれたものの、こうして永きに渡る闇の勢力の野望は消え、ウルトラマンとその仲間たちによってエメラダ星だけでなく、宇宙は救われたのだった。

そう、救われるはずだった。



いつしか、世界は歪み出した。




そして、18年の月日が流れた。



とある荒れ果てた世界。
その世界はいくつもの街がすでに破壊され尽くしていた。城、小屋、役所、住宅街、ビル…それらの何もかもがめちゃくちゃに破壊されてしまっていた。
「ウウゥウ…アアアアァアァァアア!!!!!!!!!!」
光のない、雲で覆われた暗い青色の空の下、街の真ん中で泣き叫んでいるようなわめき声が響いた。
そのわめき声の主は、群青色と黒い模様の刻まれた青い巨人だった。酷い悲しみを帯びたようにひたすら跪いた状態で地面を殴りまくっていた。
よく見ると、彼の傍らに複数の人間が倒れていた。まだ年行かない少年や少女…彼らを見た時の彼の乳白色の瞳は悲しみの色を最も強めていた。
「ウウゥウ…ガアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
青い巨人は悲しみのオーラを増幅させて稲妻をほとばしらせた。




ピピピピ!
「んにゃ…」
地球のとある平凡な一軒家、栗色の髪の少女、高町なのはは起床した。携帯のアラームを消し、寝ぼけきった目をこする。
将来女性なら羨みそうな美貌を手にしそうな可愛らしいルックス、それ以外はどこにでも居そうないたって普通の小学生三年生…のはずだが、彼女は普通とは大きく違う一面を持っていた。
『おはよう、なのは』
「んみゅ…おはよう、ユーノ君」
髪をツインテールに結びながら、なのはは籠の中にいるフェレットに朝の挨拶をする。フェレットに挨拶…この時点で普通とは違うと気づいた人もいるだろう。
このフェレットは『ユーノ・スクライア』。実は別の世界から来た魔法使いで、意思を持つ宝珠型のアイテム=インテリジェントデバイス『レイジングハート』を与えたことでなのはを魔法を使う者、魔導士に目覚めさせた。彼は遺跡発掘を生業とした一族の出身で、『ジュエルシード』と呼ばれる危険かつ不思議な宝珠を探している。
普段は以前通り小学生生活を満喫しているなのはだが、魔法関連の異常事態が起こると、彼女は魔導士として戦いの場にでるのだ。
「今朝、変な夢を見たんだ」
「夢?」
「うん、怖い夢だった。なんだったのかな?」
指先を唇に当てて可愛らしく首をかしげるなのは。
青い巨人が暗くて荒れ果てた街の真ん中で泣き叫ぶ。どんな意味を持っているのだろう。
「悪夢は忘れたほうがいいと思うよ。抱え込んでも何の得もないし」
「そうだね。それより、『ジュエルシード』を回収することのほうが先決だもんね」
「でもなのは。キツかったらすぐに言ってね。もともとこれは僕の役目だったんだし…」
「ユーノ君」
人差し指をユーノに見せつけ、なのはは彼の言葉を遮った。
「それ以上言ったら、怒っちゃうよ?それより、早く朝ごはん食べに行こう。今日はお父さんのサッカーチームの試合見に行くんだからね」
「う、うん…」



海鳴市。なのはが育った都市で、人々が常に暖かな幸せを送っている街である。毎日笑顔が絶えることなく見ることができ、訪れる者、暮らしている者の大半が何不自由ない生活を送っている。

しかし、そんな街のある夜…。

空に突然穴が空き、カプセルに似た謎の物体が、青い光と共に落ちてきた。
落下したカプセルは、人気の無い山奥にクレーターを作り出した状態でめり込んでいた。丸い球体のような小さな物体だが、人が一人分入る程度の大きさだ。するとカプセルの蓋が、いや扉が煙を吹きながら開かれる。そこから人影が姿を見せた。
そこから現れたのは、人間ではない…異形の姿をした『何か』だった。
しかし、カプセルは一つだけではなかった。
もう一つ…そっくりそのままの構造と様式を持つカプセルが、最初のものの落下からほとんど日が立たないうちに落ちてきたのだ。



「ゲームセット!」
海鳴市の川辺に設置されたサッカーコート。なのはの父、高町士郎は喫茶店『翠屋』の店長であると同時に、主にここで練習するサッカークラブのコーチを勤めている。今日は別のクラブのチームとの練習試合。たった今試合終了のホイッスルが鳴った。結果は2-0、なのはの父のクラブのチームの勝利だった。
「「「やったあ!」」」
なのはと共に、このチームの勝利を喜んでいる少女がいた。金髪で強気な少女がアリサ・バニングス、紫色の髪でおしとやかな雰囲気を漂わせているのは月村すずか。元はいじめっ子といじめられっ子の関係なのだが、なのはがすずかを苛めるアリサに一発平手打ちしてそれが喧嘩に発展、すずかがそれを止めたことがきっかけで友情を深めていったのだ。
「よーし、みんなよく頑張ったな。今日はご褒美にたくさん食わせてやる!」
士郎から告げられた言葉に、サッカークラブの少年たちは大喜び。そんな中、チームメイトの中にポケットから何かを取り出した少年がいた。
偶然それを見たなのはは、思わず目を疑った。ひし形で水色の、数字が掘り込まれた小さな宝珠。
少年はポケットにその宝珠を戻した時、彼女の肩に乗っていたユーノがなのはに声をかけた。フェレットが喋るとまずいので、念話(テレパシー)で。
『なのは?』
『え?あっ…なんでもないよ』
きっと見間違いだろう。そう思った彼女は笑って誤魔化した。だが、それは彼女が魔法少女となって初めての失敗となること、海鳴市全体を悪夢に陥れることになると誰が予想したのだろうか。なのはのあれは、見間違いなどではなかった。
少年が持っていたのは、ジュエルシードだった。



「く…」
海鳴市の森。右腕に青いクリスタルを携えた腕輪、黒いシャツとジーンズを着こんだ、短い金髪の髪に青い瞳の青年。髪と瞳の色に関してなんとなく皆さんは架空の人物によくいると思うだろう。そんな特徴的な風貌の青年は、右手についたかすり傷に左手を当てた。すると、彼の左手から優しい青の光が発生、たちまち右手のかすり傷は跡形もなく消えた。
「奴らの侵入を許してしまったか。被害が出る前に仕留めておかねば…」
青年は立ち上がると森の出口に向かって走り出した。



夕方、ジュエルシードを持っていた少年はポケットからジュエルシードを取り出した。
実に不思議な石だ。手に持っただけで願いを叶えてしまうとは。ジュエルシードには手にした者の願いを可能な限り叶える力を持っている。だが、それは人だけでなく、動物や植物の生態系としての本能さえも願いとして力を発動しかねない危険なものでもあった。
少年は夕日に向かってジュエルシードをかざしてみる。夕日の赤い陽光に照らしてみると、より綺麗に見えた。
「あ!」
少年はポケットに戻そうとした。しかし、誤ってジュエルシードを街の建物のすぐ側に掘られた小さな溝に落としてしまう。
「ああ〜、せっかく拾ったのに…」
ひどくがっかりした様子で少年は落ち込んだ。
これがまさかこの日の悪夢に繋がるとは思いもせずに。溝から落ちたジュエルシードは、溝から繋がっていたパイプの中に流れ落ち、やがて真っ暗な闇の底に落ちた。

すると、落ちた場所で奇妙な緑色の光が文字のような形をなした。
直後、海鳴市全体に地震が起こった。アスファルトの地面が割れ、裂け目から植物の根が飛び出していく。それはたちまち街全体に拡がり、街の人たちは突然のことにただ驚きと恐怖を感じて逃げ惑いだした。この異変は、自宅で待機していたなのはにも感じ取られた。
「ユーノ君、今の!」
「間違いない、ジュエルシードが暴走したんだ!」
ただちになのははユーノを肩に乗せ、街へ走り出した。




一方で高町家のリビング。なのはの兄恭也と姉の美由紀は、テレビの中継ニュースで海鳴市に起こった異変を見ていた。
まるで映画でしか見られない光景だった。地面から植物が発生し街を覆い尽くしていく。
「なにこれ…CGじゃないの!?」
美由紀が目を丸くする。
植物が地面から這い出て街を侵食していく中、街の真ん中の地面から巨大な塔のようなものが飛び出してきた。
「…深…緑?」
思わず恭也が口を開いた。
「え?」
「いや、あの妙な塔に刻まれた絵が、書道の篆書体に似てる気がして…」
恭也の言う通り、確かに塔のようなものの表面に緑色で塗られた文字のような絵が描かれていた。
その塔は、塔ではなかった。なのはたちのいるこの別世界とは別の世界でも同じ混乱をもたらした巨大な機械。



その名は、『自然コントロールマシン・シンリョク』。



シンリョクを、あの青年も見ていた。
「くそ…俺のせいで奴らまでこの世界に紛れたか…」
ふと、彼は何かを感じ取ってシンリョクとは別の方向に視線を向けた。ビルの屋上に立っている少女が、不思議な桃色の光な身を包んでいる。
「なの…は…か?」
その青年は、どういうわけかなのはの名前を呟いていた。



「酷い…」
ビルの屋上から街の有り様を見たなのはとユーノ。大惨事としか言いようがなかった。あちこち植物だらけだ。
「人間が発動させたのか?強い願いに反応した時、ジュエルシードは最も強い力を発揮するから」
「探してみるね。レイジングハート、お願い!」
『All right.Stand by Ready.Barrierjaket Set up』
レイジングハートがなのはの命令に応じ、彼女は桃色の光に身を包むと、彼女の服が解け、新たに白い布地に青いライン、胸に結びつけられた赤いリボンの服装になる。
魔導師の戦闘服『バリアジャケット』である。バリアジャケットは装備者のイメージに合わせてできている。彼女の場合、通っている小学校の制服をイメージしてある。最後に手のひらにちょうど乗るほどのサイズの赤い宝珠が付いた杖を手に取り、彼女の変身は完了した。
「リリカルマジカル…災厄の根源を探して!」
ビルの床の上に杖―レイジングハートを向けると、桃色の光の魔法陣が展開される。目を閉じ、なのははレイジングハートの先を街のあらゆる方向へ向けながら、魔力を頼りにジュエルシードを探っていく。
そして、彼女は見つけた。シンリョクの内部の中枢部の部屋に、ジュエルシードが埋め込まれているのを。
「あの中にジュエルシードが!」
「まさか、人じゃなくて機械の願いがジュエルシードを暴走させていたのか…?」
「すぐ封印するね」
レイジングハートを握る力を強めたなのはが言うが、ユーノは「無茶だ!」と言った。
「ジュエルシードを封印するには、すぐ近くじゃないと…」
「そんなの、やってみなくちゃわからない!レイジングハート!」
『Sealing Form』
レイジングハートは槍の矛先に似た形に変形し、なのははそれをシンリョクの方に向ける。レイジングハートから光のリングと翼が現れ、コアの部分に桃色の光が集まっていく。
「リリカル…マジカル…ジュエルシード、封印!」
波動砲に似た光はシンリョクの方へ一直線に飛んでいった。そして、シンリョクの内部にも伸びる触手に絡み付いていたジュエルシードをも捉えた。
禍々しい光を放ち続けていたジュエルシードは、なのはのレイジングハートの起こした光に飲み込まれると、自身の光を収め、停止した。そしてレイジングハートの力で遠く離れたなのはの元に運ばれ、彼女の手の中に収まった。
「遠隔封印までできるなんて、すごいよなのは!」
ユーノは彼女を誉めるが、なのはの顔に笑顔はなかった。
「…私、知ってたんだ。サッカーチームの子がジュエルシードを持ってたこと」
そうだ、見間違いだなんて決めつけず、彼を追っていけばこんなことになる前にジュエルシードを回収できたはずだ。だが…。
重い罪悪感が彼女の心に重くのし掛かる。
「なのはは悪くないよ!元々ジュエルシードを持っていたのは僕だ。僕が誤って落としてさえいなかったら…」
「ううん、私のせいだよ。私があの時…」
ユーノの言葉を否定し、自分を追い込んでいくなのは。

だが、後悔することさえ今の彼女たちには早すぎた。

「!なのは!」
「!」
とっさにレイジングハートを自分の眼前に運ぶなのは。同時に、地面から生えてきた木の根が生き物のようにうねりながら彼女に襲いかかるが、瞬時にレイジングハートが魔法陣で形成された盾『プロテクション』を発生させたことで怪我はなかった。
しかし、気が付いたときにはすでに彼女は数えきれないほどの数で形成され木の根の、天然の檻の中に閉じ込められてしまった。
プロテクションにもヒビがピシピシと入り込んでいる。
「ど、どうしてなの!?ジュエルシードは封印したのに!」
「僕たちが甘かった…あの機械は元々自分の力で稼働していたんだ!ジュエルシードはあくまでパワーアップのための糧に過ぎなかったんだ!」
「そんな…」
ヒビがさっきより拡がっている。このままだと、なのはとユーノは木の根に押し潰されてしまう。
(嫌だ、嫌だよ…お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん…アリサちゃん…すずかちゃん!)
死の危機が迫り、彼女は死を覚悟した。




「まずい…!」
謎の青年は木の根に囚われてしまったなのはとユーノの元に駆け付けた。着いた時には、彼女たちは大木並の巨大な根に出口を遮られ、逃げ場を失っている。
「やむを得ないか…」
彼は右側に着いていた、二つのウィングが着いていて青いクリスタルの埋め込まれたブレスレット『アグレイター』を天に掲げた。すると、ウィングが二本に別れ、なのはのレイジングハートから発せられていた女性の声ではなく、若い男性の声が再生される。


『Transformation Set up.Please call me passcord』


アグレイターが言い終えると、彼は空に轟くほどの声で叫んだ。


「アグルーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



二つの別れたウィングが一周回ると同時に、彼は青い光に包まれていった。







なのはは恐る恐る目を開けた。ユーノ共々木の根に潰されてしまったのかと思っていた。しかし、自分もユーノも怪我一つ負っていなかった。ただ違っていたのは、自分たちがビルの屋上ではなく、群青色の巨人の手のひらの上に乗っていたことだった。
「!」
手のひらに乗る自分たちを見下ろしている巨人を見て、彼女は思わずレイジングハートを握りしめた。ユーノも体毛を逆立たせている。
だが、彼の乳白色の瞳を見て、手の力が緩んだ。不思議な気分だった。彼の瞳を見ただけで安心できた。
そうか、彼が自分たちを…。
巨人はなのはたちを木の根がまだ来ていない場所へ下ろしてあげた。
「ありがとう…」
巨人は何も言わず、シンリョクの方へ目を向け、身構えた。





巨人の出現はもちろんテレビにも映されていた。高町家でも同じである。
シンリョクと対峙する青い巨人を背景に、吉井という名前の女性キャスターがカメラに向かって慌てた様子で実況中継している。
『こ、これは驚きました!巨人です!突然光が視界を遮ったかと思ったら、青い巨人が現れました!あまりにも驚くべき光景で私、夢でも見ているかのようです!』
「なんだ、あれ…特撮ドラマの撮影か…?」
風呂上がりなためか、タオルで顔を拭きながら士郎がテレビを睨んでいる。
恭也に美由紀、そしてなのはそっくりの母桃子も、胸に手を当てて不安そうに見ていた。あの青い巨人は、ある世界でこう呼ばれていた。





その巨人の名は…『ウルトラマンアグル』





「ディア!」
シンリョクに向けて身構えたままの青い巨人アグル。しばらく様子を見た後、アグルはシンリョクに向かって走り出すと、シンリョクは近づかせまいとエネルギー弾をアグルに向けて連射した。その光弾の嵐に全く怯まず、アグルは空高く飛び上がって強烈なジャンピングキックをお見舞い、シンリョクを押し倒した。
「トォワ!」
ガキン!と金属音を響かせて倒れたシンリョクだが、突然シンリョクが発生させていた森は侵攻を止め、緑色の光をシンリョクに集めていく。
シンリョクが森からエネルギーを吸い上げているのだ。すると、シンリョクから両手と両足が生え、さらに中身を露出させた状態でボディを開いた形態に変形した。
アグルはシンリョクに向けて二度蹴りを放ち、続いて肘打ちを放つが、肘打ちを受け止められ投げ飛ばされてしまう。
「ウォワア!」
地面に激突したところですぐ跳ね起きたアグルは後ろ蹴り、ハイキックを打ち込んでシンリョクを怯ませ、シンリョクの腕を掴んで背負い投げた。
倒れ込んだシンリョクに追撃しようとした瞬間、シンリョクのボディの中央にあるランプが強い光を放ち、アグルは一瞬視界を遮られてしまい、タックルで突き飛ばされてしまった。
さらに倒れ込んだアグルに近づき、彼を踏み潰そうと片方の足を上げる。それを素手で握り、踏み潰されないように抵抗するアグル。しかし、だんだんシンリョクの重みで手が押し返されていった。辛うじてシンリョクの足を押し返し、立ち上がって体勢を整える。
「…」
アグルとシンリョクの戦いを、なのはとユーノはただじっと見ていた。
すごい戦いだ。魔導師とはいえ、彼らと力比べなんてとてもできない自分たちにできることなどあるのだろうか。
そう思っていた時、アグルの体中にシンリョクの蔦が絡み付き、彼の動きを封じてしまった。さらに蔦を通して電撃がアグルを襲う。
「ウワアアアア!!!!」

ピコン、ピコン、ピコン…

アグルの胸に埋め込まれたクリスタル『ライフゲージ』が青から赤に変わって点滅しはじめた。もうアグルのエネルギーが少なくなって来ていたのだ。
「!」
なのはは思わずレイジングハートを構えた。
「なのは!?」
「ユーノ君、私あの巨人さんを助けたい」
「本気なのかい?あの巨人はあまりにも得体が知れなすぎる。もし僕たちに矛先を向けられたら…」
「でも、私とユーノ君を助けてくれたのは本当のことだもん。これだけじゃ、信じていい理由にならないかな?」
なのはの目に迷いはなかった。あの巨人を、アグルを助けてあげたい。
「…ごめんねなのは。試すようなこと言って」
「え?」
「僕も助けられたからには、借りを返したい。だからなのは、迷わなくていい。思うままにあの巨人を助けてあげよう」
「ありがとう、ユーノ君!レイジングハートも、力を貸してくれる?」
『マスターの心のままに』
「じゃあ、行くよ!」
改めてレイジングハートの矛先をシンリョクに向けるなのは。
「アクセルシューター!!」
レイジングハートからいくつものエネルギー弾が発射、シンリョクに次々と炸裂した。
なのははアグルを縛る蔦にも当て、少しずつアグルの拘束を解いていく。
蔦による拘束が解けていき、アグルは身体中に力を込めていった。すると、風船が破裂させたかのようにアグルを縛っていた蔦は吹き飛ぶように引きちぎられた。
四肢が自由となったアグルは額のクリスタルに光を灯して右手を当てると、振り下ろすと同時にシンリョクに向けて額から必殺光線を放った。
〈フォトンクラッシャー!〉
「ディア!」
アグルの止めの光線をモロに受け、シンリョクは昏倒すると同時に粉々に砕け散った。
「やった!」
なのはは手を合わせて喜んだ。
シンリョクが倒されたことで、シンリョクの力で地上に現れた木々は枯れていった。それを見届けたアグルは、両手を拡げて空へ飛び去っていった。
「巨人さん、ありがとう…」
なのはは空に消えたアグルに向けて手を振った。
「なのは、もう大丈夫なの?」
「うん、なんか…あの巨人さんを助けたら少し気が軽くなったかな」
「ジュエルシードも回収した。そろそろ日が暮れるし、帰ろうか」
「うん!」
バリアジャケットから元の服装に戻ったなのははユーノを肩に乗せ、家に向かって走り出した。



「…」
ビルの屋上から金髪の青年は走り去るなのはをじっと眺めていた。
この青年、『ソラ』となのは、そしてその仲間たちの物語が幕を開く。
 
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