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科学と魔術の輪廻転生

作者:ともとも
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異世界って好奇心が刺激されるよね。

 二歳になった。

 文字を殆ど完璧に読めるようになった。
 試したことは無いが、一応字も書ける、と思う。
 手はどうやら器用らしいからな。
 でも、どちらにせよ、文字を読めるのは子供にしては早過ぎるな、と感じた。
 まあ、精神的には大人ですし。
 でもやっぱり先に話せるようになっていたことが大きかったんだな。
 文字を音で覚えることができたし。

 まだ早過ぎるとは思うが、母さんにそのことをカミングアウト。

 秘密にできない主義なんです。
 まあ、不測の事態でバレるよりかはマシだろう。

 そしたら、

「やっぱりうちの子天才だわ!家庭教師を雇った方が良いかもしれない!」

 ……天才と思われる子には英才教育を受けさせるのが基本なのだろうか。
 世界を越えても親って全く変わらないのか?
 俺は親というものの凄さを垣間見た気がした。
 前世も、俺は数学と理科が天才的にできたらしいから、母さんが家庭教師をつけようとしたことがあるのだ。

 全く変わらないな。
 シーラカンスみたいだ。


「……」


 俺がそんな少し冷ややかな目線を送ると、母さんが俺を見つめて来た。
 正面から見ると母さんのその端正な顔立ちがより強調される。
 俺は赤面しながら顔を逸らした。

 ……実の母親でも恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。
 未だに根強く前世の記憶が残っているせいで何か……慣れないというか。
 俺的には隣の世話焼きお姉さんみたいな認識なのだ。

 だが母さんは俺の赤面を思いっきり無視した。
 いや気付いてなかった。

 彼女は俺の顔を覗き込み、真面目な顔で言った。
 彼女はいつも真面目な顔なんてしてなかったので、俺は身構えた。

 だって、いつも真面目じゃない人が真面目な顔をしているんだ。
 思わず身構えても恥ずかしいことではないと思う。

 そして彼女は唐突に話し始めた。

「アル? 貴方魔術の勉強をしたくない?」

 !?
 いきなりのことで驚いたが、これは魅力的な提案だ。
 俺は母の目を熱く見つめ返した。

「……良いの?」

 恐る恐る俺は聞いた。

「ええ」

 母さんは躊躇もせずに肯定した。

 ……

「いやったぁぁあああ!!!」

 少しの静寂の後、俺の歓喜の声が家中に轟いた。


 ────


「アルは刀士にするぞ!」

「いや、魔術師よ!」

 ……今、夫婦喧嘩勃発中。
 理由は言わずもがな俺の将来についてだ。
 あのことを父さんに伝えると、父さんが刀士にすると言い出したのだ。

「俺はアルを一目見た時から刀士にすると決めていたんだ!」

「あの……」

「アルは私よりももッッッと膨大な魔力を持っているのよ!それを使わないなんて……」

 どうやら、刀を使う者のことを刀士と呼ぶらしい。
 単純だな。
 だけど、前世の記憶があるから慣れない。
 前世では武士とかなんとか言ってたからな。

 そして父さん母さん。
 俺の言葉は完全無視ですかい。
 当人の意見位聞いて欲しいんだけど。

 あれ、そういえばなんか変な単語が聞こえた気がする。
 ボーダイナマリョク?
 膨大な魔力。
 あ、もしかして魔力って魔術を使うのに必要な物なのか?
 だったら魔術、使えなくてもしょうがないか。
 でもあれ?
 膨大な魔力?

 ……?

 まあ良っか。
 でも、少なくとも前世には無かった代物だ。
 後で母さんにでも聞こうかな。


 そんなこんなで夫婦喧嘩がヒートアップして来た。
 いい加減両親がギャーギャーギャーギャーうるさくなって来たな。

 しょうがないので俺は、両親のところまでゆっくりと歩いて行き、二人の中央に立った。
 そして、唐突に口を開いた。


「僕は、どっちもなりたいよ」

『!?』

 彼らは同じようなタイミングで目を見開いた。
 やっぱりこういう所は似ているね。
 俺は続ける。

「将来まほーけんしになりたいな」

 魔法剣士。
 字面の通り魔法を使う剣士である。
 俺はそれになりたい。
 それは紛れも無い本音だ。
 まあ、刀士なのかもしれないが。

 両親は少しの間顔を見合わせた。
 そして俺の方をおもむろに振り向いて父さんは言った。

「両方は厳しいかもしれないが、大丈夫か?」

「うん!」

 首が取れる程の勢いで頷いた。
 俺は母さんの方を向くと、叫んだ。


「僕、頑張るよ!」

 後から考えると、これ結構恥ずかしいな。
 二歳とはいえ。

 ────

 というわけで、俺は刀術と魔術を習うことになった。
 刀術は父さんが教えてくれるらしい。
 父さんは冒険者として結構有名なんだぞ、と胸を張って言っていた。

 成る程、冒険者という職業も有るのか。

 ……ということはつまり、魔物も居る。
 まあ、冒険者が俺の中のイメージと同じならば、だが。

 俺は死ぬのが怖い。
 伊達に一回死んでいないからな。
 だが、死ぬ辛さが分かるからこそ、何も死なせたくない。
 そう、何も(・・)だ。
 確かにそれは無理だ。
 俺にもいつか殺さなければいけない時も来るかもしれない。
 いや、絶対来るだろう。

 だけど、俺は、

 みんなが笑って暮らせるような世界。


 そんな平和な世界を望んでいる。


 うん、話がずれた。
 話を戻そう。

 魔術の方は、母さん……じゃなくて、特別に家庭教師を雇ってくれるらしい。
 よし、今度こそ魔術を使えるようになるぞ! 
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