| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

払われる迷い

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

4部分:第四章


第四章

「それで今はその帰りで」
「そうなのですね」
「はい、それで」
 彼女は速水の問いに答えた。そしてだった。自分から言ったのだった。
「あのことですが」
「この前占われたことですね」
「両親には反対されました」
 ここで少し暗い顔になる彼女だった。少し俯いてもいる。
「同性愛なんかと言って」
「そうですか」
「はい、ですが」
「ですがですね」
「それでも。彼女とじっくり話し合ってです」
 そうしてだというのだ。
「それで今は同棲しています」
「そうですか」
「両親の反対を振り切って。それで」
 これも占いにあった通りだった。力である。
「親友の勧めも受けてそれで」
「同棲をはじめられたのですね」
「その通りです。そしてです」
「よかったですね」
 速水は優しい微笑みを彼女にまた向けた。
「おめでとうございます」
「これも貴方のお陰です」
 満面の笑みで速水に言ってきた。
「本当に」
「いえ、それは私のお陰ではありません」
 速水は微笑みのままそのことは否定した。
「私のしたことではありません」
「違うのですか」
「カードが貴方に教えてくれたのです」
 そうだというのである。
「タロットカードを通じて神々がです」
「教えてくれたのですか」
「はい、そうです」
 こう話すのだった。
「そういうことなのです」
「そうでしたか」
「はい、そして」
「そして?」
「お幸せに」
 祝福する笑みになっていた。その笑みで彼女に告げたのだ。
「これから。お幸せに」
「幸せに、ですか」
「愛の本当の成就はこれからです」
「これからなのですか」
「占いは道標ですがそれだけでしかありません」
「では。一体」
「道を決めて歩まれるのは貴方です」
 そうだというのである。
「それを御存知下さい」
「そうなのですか」
「はい、そうです」
 また言う彼だった。
「ですから。幸せになられる為に」
「歩けと言われるのですね」
「その通りです。それでは」
「はい、それではですね」
「歩まれて下さい」
 これが彼女にかけた言葉だった。そうしてだ。こうも告げた。
「また道標が必要だと思われた時は」
「その時はですね」
「またいらして下さい」
 こう告げるのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧