| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔弾の王と戦姫 〜戦場に揺蕩う時渡りの嵐〜 【更新停止】

作者:如月 和
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

01.『女神と最悪すぎる邂逅』

 
前書き
今回の主人公は氷灯(ひあかり)(すい)という名前だった男の娘でした。
名前は作中で変更します。ご覧ください。 

 
"ここ、どこだよ"と呟いた少女がいた。その10歳程度の少女は暴行されたのか?と思えるようなボロボロの布切れになっている服で身を覆い、壊れた手枷と足枷をそれぞれ左手首と右足首に嵌めている。銀糸のような銀髪を膝裏まで伸ばして、紅玉のような緋色に染まった双眸で辺りを見回す。槍が腹部に生えている人の死体や鏃が刺さっている人の死体、首と胴体が生き別れになっている死体がゴロゴロと転がっていた。そんな戦場に少女がいるのは少々テンプレな事情があった。



「転生後の弱くてニューゲームってイイと思わないかい?」
「………はぁ?」

眼前で唐突に自らの趣味について語り出した自称神様に(ボク)は素の返答を返した。見回す限りの真っ白な空間。その地面に呆然と佇む男は、氷灯(ひあかり)(すい)という名前を持っていた。『持っていた』という過去形な文体は、ボクがもう死亡していて本来ならばこの身体でここにいるはずがないからである。

そんな彼に朗らかに話しかけた緋色の髪をした美女は更に自らの趣味を語る。

「死んだ人をTS転生。しかも治安が悪いところや戦場に転移させてさ、争いに巻き込んだり奴隷にされたり人の尊厳を踏み躙られたり巫山戯た趣味の人に買われたり、助けを請うても誰も助けに来ないとこや死にたいんだけど死ぬことを許されなくて絶望した表情なんて最っ高で ーーー」
「お、いっ。なにいってんの!」

恍惚と自らの趣味についてボクを汚染するかのように朗々と語ってきた女性ーー しかも、途中から描写に変わってた ーー を内心ドン引きしながらも一先(ひとま)ずは止める。このまま放置していたら何時間でもボクに語り聞ただろう。流石にそれはボクの正気が保てそうにない。そもそも、なぜここにいるのかがわからないボクに意味のない主張を聞かせてどうする気なのだろうか。

「あ、ごめんね? ついヒートアップしちゃった」

てへ? と自然にてへぺろをしてくる美女を横目で見つつ自分が何故ここにいるのかを問うた。

「ん? なんでここにいるのか? ただ単に誰かの不注意で死んだ人間をTS転生させて、その困った姿ををニヨニヨと見守りゲフンゲフン…観察したいからここに呼んだんだよ」
「おい、自重しろよ」
「ヤダ」

状況はとりあえず、(ボク)が亡くなったから暇つぶしに転生させるということか? つーか、TSって何?

「TSって言葉知らないの? 知らないなら教えない」
「おいこら、教えなさいよ」
「そのうちわかるから、とりあえずこの(くじ)を四度引いてね?」

釈然としない気持ちだが言われるままに美女の持っている少々怪しげな風貌の箱から(くじ)を引いた。四回まで可能だったために4回分。その(くじ)には【空間倉庫】と【時間掌握(スフィア)】と【ステータス閲覧許可証】【I衝撃強化(ブーステッド)】の四つが引けた。

「おお、意外にいいのが出たね」

そうなのか?と問うと美女は肯定するように首を上下に振り「面白おかしいものが出てくるかと思ったけどその通りだったからね」と宣った。
それに一抹の不安を感じたボクはステータスを確認して見ることにした。

ーーー

名前: *****
性別: ***
年齢: ***
状態: ***
特典: 【空間倉庫】【時間掌握(スフィア)

ーーー

と表示された。名前、性別、年齢、状態は表示されなかったのはボクが死んでいるからだろうと思い、【時間掌握(スフィア)】を注視して見ると。

ーーー

時間掌握(スフィア)

5秒のみ時間を停止させることができる。インターバルは2秒ほど使用する。発動には脳内で【時間掌握(スフィア)】と唱える必要がある。

ーーー

と詳細が表示された。ついでに【空間倉庫】の方も確認すると

ーーー

【空間倉庫】

無機物と判断される物体を無制限に入れることができる。収納されている物質の一覧を閲覧可能。内部は時間が停止している。

ーーー

ーーー

衝撃強化(ブーステッド)

白兵戦での筋力、俊敏性が上昇。ありとあらゆる武具を使用可能となる。

ーーー

うん、有る意味チートキタコレ。

唖然と表示された詳細を追っていると美女はニコニコとした笑みを浮かべた。何時もならそこで「何か企んでるな」。と気づくはずだったが詳細の内容に立ち尽くしていたために気づくことがなかった。

ボクが違和感を覚え、自称神様な美女の方を向くと、(さなが)ら女神のような満面の笑みを浮かべて紐を力いっぱい引っ張ろうとしている姿。慌てて「やめろ!」と言うが後の祭り。美女が紐を引っ張る足元に幅広い穴が突然生じた。覚えていたのはにこやかに手を振っている姿だった。

▲▼▲▼▲

女神はあの人間が落ちて行った所を見ると、転生者用の空間ではなく自分専用のエリアへと転移した。そこには重厚な机と椅子が置いてあり、その椅子に腰掛けると机に置いてあった一枚の紙を手に取ると思案しながら書き綴り始めた。

この女神は所謂転生神と呼ばれる類いの女神で、会ったら不幸が訪れるとも謳われる自由人である。最近のブームは自分の所に来た死者をTS転生させ、貧民街や戦場に転生させ、その生き様をニヨニヨと見守るという趣味の悪いものだった。

今回もその悪癖を持ち出し、ルンルンと子供のように、狂った狂人のように嗤いながら書き綴った。


▲▼▲▼▲


結果がこの戦場に立ち尽くしている訳である。元は男性だったというのに、今のステータスは

ーーー

名前: ノエルスターク・アイゼン
性別: 女
年齢: 10歳
状態: 衰弱
特典: 【空間倉庫】【時間掌握(スフィア)】【グロ耐性】【衝撃強化(ブーステッド)

ーーー

とステータスが表示された。元男性として確かめるも、少女になっているということや状態が衰弱となっていることで筋肉が衰えているのか、立ち上がろうとする動作すら痛みが伴う。だが、戦場跡にいるということは敗残兵や泥棒が闊歩しているということでもあり、そのことに危機を感じるとフラフラと限界まで早くした速度で歩いて行く。

足の疲労や、手首と足首に嵌まっている枷が思ったよりも重く、10分ほど歩いて5分休憩というプロセスを数え切れないほど繰り返した後、遂に限界が来た。足全体に力が入らず、そのままペタンと座り込んでしまう。

「………やばいね」

呟くとせめてもの自衛のためと思い、転がっている死体からボロボロになっている剣を抜き取る。血塗れの剣を抱きかかると急に睡魔が襲ってくる。その睡魔に抗うことができず、ボクは睡魔に身を委ねた。


 
 

 
後書き
次に、エレンやリム、ティグルが出てきます。

すいません、髪の色と瞳の色を誤って表示していました。

3/11 特典を一つ増やしました。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧