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Zero Connect Online

作者:霧崎雫
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1・始まり
一章・疑念
  Beginning

下書きⅡ〜ZCO〜
「キリトくーん」
「おう、アスナ!」
和人は今日、新作のゲームを買うために明日奈と待ち合わせをしていた。
明日奈がその待ち合わせ場所に来たのは、和人が到着した10分後。

「キリトくん、待った?」
「そんなことないよ。俺も今来たところ」
二人がそんなやりとりをしているのを和人の隣で直葉が見ていた。
今日、和人とゲームを買いに行くのは明日奈だけではない。
直葉も一緒なのだ。

「あ、明日奈さん。こんにちは」
「こんにちは、直葉ちゃん」
「新作のゲーム楽しみですね」
「そうだね。なんたって、今までに無かったシステムが搭載されてるもんね」
「ああ、そうだ。今日発売の"Zero Connect Online"にはレベルの概念がない」
「それってALOも同じだよね、お兄ちゃん?」
「ああ、そうだ。その代わり、ALOはスキル重視だったよな?」
「う、うん。それがどうしたの?」
和人は口角を少し上げて言った。
「ZCOでスキルはALOほど重視されないんだ」
和人のその発言に、直葉と明日奈は首を捻る。
「どういうこと?」
「早く教えてよ、キリトくん」
直葉と明日奈が和人に詰め寄る。
「ZCOでは絆が鍵を握るんだ」
「「絆?」」

直葉と明日奈はまたしても首を捻った。
「MMOトゥデイによると、相手を心の底から信頼することで強くなるシステムらしい」
「キリトくん、試作のプレイはしたの?」
「したよ。嫌と言うほどな」
和人がそう言うと、直葉は苦笑を浮かべた。

「どうしたの?」
「お兄ちゃんあのゲームの制作者さんと知り合いなんですけど、依頼があったんです」
「依頼?」
「はい。ゲームのモンスターが強すぎないか、とか色々です」
「キリトくんで大丈夫なのかな……?」
「私もそう思ったんですけど、思ったよりも苦戦してるみたいでした」
「キリトくんでも苦戦するなんて、どんだけ強いのよ」
「それか、お兄ちゃんが弱くなってるかですね」
直葉と明日奈は顔を見合わせて笑う。
「おい、何してるんだ?早く行くぞ」
「はーい、今行くよ。行こっか、直葉ちゃん」
「はい」

直葉と明日奈が和人の元へ行くと、和人は既にゲームのパッケージを3つ持っていた。
「キリトくんどうしたの、それ?」
「名取が押し付けていった」
名取というのは、和人のクラスメイトであり、ZCOの制作者である名取光星のことだ。
彼はユウキが学校に行きたいという願いを和人とともに叶えた一人だ。
「え!?制作者って名取くんだったの!?」
明日奈も制作者の話はあまり聞いていなかったため、驚きを隠せない。
「俺も、名取からこの話を聞いた時は嘘かと思ったよ」
「お金は?」
「いらないって」
「いいの?」
「本人がそう言ってるんだからいいんだろ」
和人は明日奈に笑って言った。
そんな和人に明日奈は呆れたような顔をした。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?どうした、スグ?」
和人が明日奈と話していると、直葉が和人のコートの袖を握った。
「その名取さんってあの人?」
「は?」
和人が直葉の指差した方を見ると、和人にゲームを渡し、何処かに行った名取の姿があった。

「何やってんだよ、名取」
「よ、よぉカズ」
名取は和人に気づくと、右手をあげた。
「実はな……お前に頼みがあって」
「は?またかよ」
「ああ。しかも今回のは、かなりやばい」
名取の表情から深刻さを感じ取った和人は、周囲を見回し、名取と明日奈、直葉を連れて近くのカフェに向かった。
「それで、内容は?」
和人は席に着くと同時に尋ねた。
「カーディナルの『クエスト自動作成システム』は知ってるか?」
「当たり前だ。世界中の伝説を翻訳、融合して、独自のクエストを作り上げるシステムだろ?」
「ああ。それがZCOにも組み込まれてたんだ」
名取の言葉に和人だけでなく、明日奈も表情を引き締める。
「どういうことだ?」
「わからない。今日の正式サービス前に俺の知り合いが試したところ、見たことないクエストが入ってたんだ」
「それは、その人の見間違いではなくて?」
明日奈が名取に尋ねる。
「それはありえない」
しかし、名取は首を振る。
「なぜなら、ZCO内のクエストを作ったのがその知り合いだからだ」
「でも、大量に作った場合、忘れることなんてあるんじゃないか?」
「見たら絶対に忘れないような個性的なクエストだったんだ」
「クエスト内容は?」
名取は小さく息を吐き、口を開いた。
「ある街に出現する『聖騎士』の討伐だ」

和人と明日奈は息を呑んだ。
「恐らく、ヒースクリフだ」
そして、名取がそう付け加えた。
「確証は?」
和人が聞くと、名取は
「銀髪に赤い鎧、これだけで充分だろ」
と言った。 
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