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魔法少女リリカルなのは トライアングル・マジック

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第一話/再会

 八年前、彼が少女を庇い、戦い、そして死んだ。

 なのはは後悔した。

 反省した。

 自分を、何度も責めた。

 彼の言うことを聞いていれば。

 もっとちゃんと動けていれば。

 無茶していなければ。
 
 もっと強かったら。

 後悔に駆られ、苦しみ、絶望した。

 それでも彼女は立ち上がった。

 そして選んだのは、夢に真っ直ぐ進むこと。

 彼に胸を張っていられるように、強く生きること。

 そしてなのはは『教導』という道に進み、自分と同じ後悔をする人を無くすための努力をした。

 自己評価で言えば、きっとうまくいっている。

 失敗がないわけではない。

 だが、友達が助けてくれる。

 そうして何度も立ち上がることができたのであれば、今はうまくいっている。

 それがなのはの自己評価だった。

 ――――それでも、八年が経過した今でも彼女は自分自身に、そして失ってしまった大切な彼へ問う。

「私のしていることって、正しいのかな……」

 答えてくれる人なんて誰もいない。
 
 いるとしたらそれは……彼しかいない。

 だが、それを聞く術は存在しない。

 もう二度と、会うことはないのだから――――。



 後悔や罪悪感を背負い、それでも前を向いて過ごしているある日。

 八年が経過した現在、なのはは十年以上の仲である八神 はやて、フェイト・T・ハラオウンとの約束・夢を果たし、試験的であれど独立の部隊を持つことになった。

 古代遺物管理部機動六課。

 なのはとフェイトは分部隊を持ち、はやては機動六課の総隊長を務める。

 そんな三人が珍しく集合し、そしてはやてが二人にある任務を命じた。

「今、ガジェットの大量出現が確認されたんやけど、空な上にちょっと問題があるんよ」

 ナマリの入った口調ではやてはそう言うと、二人はガジェットの出現ではなく“ちょっと問題”の方を気にした。

 ガジェットの出現は、機動六課のみならずほぼ全ての部隊が対応する案件。

 しかし機動六課はどの部隊よりもガジェットの情報には敏感に動いており、それが機動六課創設の理由にもつながる。

 それはさておいて、問題は“ちょっと問題”の方なのは、そこにはガジェットの持つ習性にあった。

 ガジェットはロストロギアに強い反応を示し、それが原因で多くの被害を生み出してしまう。

 つまり、今回の大量出現もロストロギア…‥それも危険性の高いものが関わっている可能性が高かった。

「新人たちを出動させるんもありやけど、ロストロギアの可能性も考えれば二人に行ってもらったほうが確実で安全やと思う」

 ロストロギアの情報は不明。

 出動できる高ランクの魔導師はなのはとフェイトのみ。

 副隊長たちは別の任務に出動中なので支援もない。

 だが、はやては二人の実力を信じていた。

 だから二人はその期待に応えたいと思い、力強く頷いた。



「こちらスターズ1。 あと少しで現場に到着します!」

「ライトニング1、こちらも同じく」

 二人は武器を携え、バリアジャケットを身に纏い、雲の上を飛行していた。

 いつの間にか見慣れてしまった、雲の地面に青一色の世界。

 10年前はこんな光景を夢見て、そして手を伸ばすほど憧れていた。

 いつしか当たり前になっていることに、自分たちが年を取っている実感と切なさを感じながら現場に到着した。

 雲を突き抜け、たどり着いたのは海岸からまた数キロ離れた海域だった。

 青い海がどこまでも広がる中、二人は少し離れたところで空中を飛行するガジェットの大群を目にした。

 数として三十を超えており、あまり見ないその大群に驚きを隠せなかった。

「こんな場所にロストロギアがあるのかな?」

 なのはの素朴な疑問に対し、フェイトはどうだろ、と前置きしながら答える。

「ロストロギアは色んなところで発見されてきてるし、海底に眠っていたって考えることもできるけど――――」

 そこでフェイトは首を左右に振って自らの予想を否定した。

「でも、よく見ればガジェットは飛行型だし、海底に突っ込むとは考えにくいよね」

 ガジェットには複数の種類がある。

 Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型など、それぞれによってその形は異なり、今回現れたのは飛行を目的としたⅡ型だった。

 Ⅱ型はあくまで飛行を目的としているのであって、水中を泳ぐ機体ではない。

 そもそも水中にロストロギアがあるのであれば、水中に向いているガジェットの機体がもっとあったはずだ――――と、敵に塩を送るような思考が二人の中で浮かんでしまった。

 とにかく二人は原因と正体を知るためにガジェットの大群の下へ向かった……その時だった。

 ――――ガジェットの大群の中心で巨大な爆発が発生した。

 爆発は風船のように膨らんでいき、多くのガジェットを飲み込んでは破壊した。

 回避しようとしたガジェットは、爆発の中から伸びた白銀の細い閃光に貫かれて破壊される。

「ロストロギアが何か起こした――――いや、そうじゃない」

「なん、で……」

 なのはとフェイトは、爆発が収まるにつれてその色が爆発に起こる黒煙から白銀の光に変わっていくことに気づき、そして目を疑った。

 そして二人の脳裏に一人の少年の姿が浮かび上がった。
 
 こんなことをするのはきっと――――いや、どんな世界を巡ったって彼しかいない。

 でも、彼はもういない。

 自分のせいで――――。

 それなのに、どうしてなのか。

 どうしようもないくらいに心臓が激しく鼓動する。

 今更になって『生きている』と知ったような錯覚に陥るほど、心臓は活発に動く。

 そして思考を、心を懐かしさと照れと愛おしさが染めていく。

 その感覚は忘れかけていた――――恋愛感情だった。

「「なんで――――!?」」

 収まった爆風、光。

 そしてその発生点に、一人の男性が浮いていた。

 丁度雲と海面の間で男性は深呼吸して、戦いの熱を冷ましていた。

 白いロングコートに、肩や肘、手の甲を鎧、下は同色のパンツと言うシンプルな服装。

 右手には二尺はあろう白い柄をした細身の刀が握られ、左腰にそれを収める鞘があった。

 日本人特有の黒い髪を短めに整え、しかし風に靡く程度には伸びていた。

 そんな彼の周囲を、細かい魔力の粒子が舞う。

 その光景はまさに星屑。

 特徴的な光景で、そして懐かしい光景。

 感極まるなのはとフェイトは、彼の名を叫んだ。


「翔くん!」

「翔!」


 八年が経過して、身長も体つきも、顔も、色んなところが大人になっても、二人は見間違えなかった。

 彼を――――相良 翔(さがら しょう)を。


「……なのは、フェイト――――」

 
 彼もまた覚えていた。

 八年が経過いて、身長も体つきも、顔も、色んなところが大人になっても、二人を見間違えたりしなかった。

 そしていつも見せていた懐かしく、そして愛おしい笑顔を見せて言った。
 

「――――ただいま」 
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