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ボスとジョルノの幻想訪問記

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恐怖!紅魔館の悪魔たち その①

 ボスとジョルノの幻想訪問記 8

 前回のあらすじ

 自称『八雲』を名乗る化け猫・橙が永遠亭にやってきた!
 既に『スタンド』の才能に目覚めていた橙だったがてゐの卑怯な戦法の前に惜しくも破れ去ってしまった!

 あらすじ終了!

*   *   *

 ボスとジョルノの幻想訪問記 第八話

 恐怖!紅魔館の悪魔たち①

 場面は変わり、ここは永遠亭の『お仕置きルーム』。ここに入ったが最後、二度とオムツ無しでは生きられない体になってしまうというドス黒い悪意の満ちた部屋である。ちなみに永琳の自室を通らなければ入れない。
 そして、現在その部屋には永琳の他に二人の妖獣が。
「・・・・・・さて、てゐ。私の大事なお友達の使いを勝手に痛めつけたことについて、何か言い訳がある?」
 捕らえられた橙は眼前でてゐが目的の人物、八意永琳に酷い目に遭わされている状況を震えて眺めていた。
「・・・・・・」ピク、ピク
「あら~、てゐも死んだフリが巧くなったわね~。感心しちゃうわ~」
 ケツの穴に入れてはいけない太さの物体(橙にはよく分からなかった)をぶち込まれ悶絶を通り越して白目をひん剥き泡を吐き続けるてゐ。どこからどう見ても死んだフリには見えないのだが、永琳は笑顔のままその物体を足蹴にして更に押し込まんとしていた。
(ら、らんしゃま・・・・・・橙は生きて帰れるのですか・・・・・・?)ガクブル
 そのまま目の前で公開拡張ショーを続けると橙が失禁してしまいそうだったので、永琳は陰の掛かる笑顔のまま橙に向き直る。
「ヒィイイイ!!」ジョバー
「あっ、懸念してたことが早速・・・・・・」
 永琳の表情がよっぽど怖かったのか、橙は涙を流しながら下の穴からも涙を流す。
「ああああああ、ご、ごめんなさいごめんなさい! 汚した地面は舐め取って綺麗にしますので、お尻の穴だけは許してぇええ」ジョババー
「え、いいのよいいのよ。あなたは関係ないわ。ほら、膀胱を閉じて・・・・・・」
 いきなりの失禁に流石の永琳も慌てて橙を慰めようとする。にしても、失禁中の相手に「膀胱を閉じろ」という慰めはどうであろうか。
 ちなみに永琳に『女児が自分の粗相を舌で舐めとる』ことに対する性癖はない。断じて言おう、彼女は掘るのが好きなだk・・・・・・。

*   *   *

 10分後、ようやく橙は落ち着きを取り戻しぽつりぽつりと自分の目的を話し始めた。
 橙の言葉は主語や目的語が時々抜けていたりしたので、裏で手を引いている者の目的が明確になるまで手間取ったが、それでもすぐに判明する。
 目的が分かったところで永琳は橙に脅しをかけた。
「そう、・・・・・・じゃあ今の話を聞いた上で、あなたは今何がしたいのかを聞いてもいいかしら?」
「え、そ・・・・・・それは」
 橙は少し口ごもった。
「言われた任務を遂行するというの? 今のこの状態では万に一つも不可能よ」
「・・・・・・」
「いくら『スタンド』が使えると言っても、てゐ程度にあっさりと負けるようじゃあ成功の見込みは全くない・・・・・・。自分でも分かっていることじゃないの?」
「いや・・・・・・私は」
「『任務を遂行しなければならない』。思考がその一辺倒。あなたの所の主、八雲紫は本当にあなたに任務を遂行させたくてここに送り込んだのかしら?」
「えっ――――?」
 俯いていた橙は急に顔を上げる。
「分かった? だったら今日はもう帰りなさい。そして、ありのままを告げるのよ」
「・・・・・・」コクリ
 素直に頷く。
 永琳はそれをみて今度は優しく微笑んだ。
 永琳はお仕置きルームの扉を開けて橙を促す。
「――――おい」
 と、それを呼び止めたのは・・・・・・。
「――――ウサギ・・・・・・」
「・・・・・・てゐだウサ。それより、あんたんとこの親玉に永遠亭を代表して伝言を頼むウサよ」
 てゐはガクガクと腰を震わせながら橙にグッドのハンドサインを向けた。
 そして親指を下に向けて――――。
「『挑発するならもっと真剣にやれ』ってな!!」
 ぎぃっ、と笑って吐き捨てた。
 それに対して橙は「・・・・・・ああ」
「『必ず』伝えるよ。そしてお前は『必ず』私が倒すから」
 そう答えて永遠亭を出ていった。

*   *   *

「てゐ。いい感じに一旦幕を閉じようとしてるけどアレは言い過ぎだわ。何勝手なこと抜かしてるのかしら。紫がマジギレしてこっちに直接きたらどうするのよ」ゲシゲシ
「いだああああああああ!!!! や、やめて穴と穴が繋がるぅぅぅ!!!」
 お仕置きルームにはてゐの断末魔だけが反響していた。

*   *   *

 橙が永遠亭のてゐに捕まり、さらにてゐもろとも永琳に拘束された後、拘束を解かれて紫たちの元へ帰っていく。
 なお、橙が永遠亭に来たことはてゐと永琳だけが知ることである。ジョルノやディアボロ、それに鈴仙にも知らせていない。
 全て、永琳の独断である。
「さて、てゐ。今の話を聞いたなら大体分かったわね?」
「う、ウサ・・・・・・。ちゃんと頭に入ってるウサ・・・・・・。もうケツは戻りそうにないけど」
 尻に走る激痛に悶えながらてゐは永琳と会話していた。
「なら、あなたも『傍観』に徹するのよ。私がそうするように、真実を知ったあなたもね」
 永琳は棚から痛み止めを取り出しててゐに渡した(もちろん座薬)。
「・・・・・・どうしてそんなことするウサ? さっさとジョルノ達に言った方が・・・・・・あ、ありがとうゴザイマス」
 激痛に耐えながら患部に座薬を投与する。・・・・・・と思ったら座薬じゃない。ジェル状唐辛子だった。
「・・・・・・・・・・・・っッッっッ!??!?!?!」
 声も出せない、と言った表情でてゐは地面にもんどり打つ。まるでこの世の地獄を体言しているようだ。
「あら、てゐ。理由が聞きたいのかしら?」
「~~~~~~!?!?!?!???!!!?」
 うふふ、と永琳は笑っているが当のてゐにそんな声は耳に入らない。いや、もうこの月の御仁は何考えてるか皆目見当もつかない。
「理由なんて求めてはいけない。そうね・・・・・・強いて言うなら――」
 永琳は底知れない笑みを浮かべて

「楽しそうだから」

 彼女の暗躍は留まるところを知らない。

*   *   *

 こちらは幻想郷のどこかにあると言われている大妖怪、八雲紫の邸宅である。
「・・・・・・ただいま戻りました」
 と、そこに橙が帰ってきた。
「!! お、おかえり橙! 大丈夫だったか??」
 橙の帰りを待ちくたびれていたのか、八雲紫の式であり、橙の使役者である八雲藍がすぐに玄関へとやってきた。
「け、けがをしてるじゃあないか! ちょっと待っててね今救急箱を取りに行くから」
(――――やっぱり、藍様は任務ではなく『私の心配』だけを――)
 橙は藍の反応を見て悔しかった。慌ただしく救急箱を取りに行く藍の姿を見て、自分が信用されていないことが身に染みたのだ。
 ――――だから私は『八雲』じゃあないんだ・・・・・・。
 そんな考えが首を擡げてくる。
 するとそこに
「・・・・・・おかえり、橙。意外と早かったわね」
 八雲紫が姿を現した。
(――――紫様は『任務』も『私』も見ていないのか・・・・・・)
 分かっていたことだが、永琳に改めて指摘されてこれでもか、というくらいにその事実は橙の心に刻み込まれた。
「申し訳、ありません・・・・・・。任務は失敗して・・・・・・しまい、・・・・・・ぐすっ」
 情けない、自分が情けない。この報告も紫にとってして見れば形式的なことでしかない。『任務』を与えられて『失敗』の報告までが流れ作業。そこになにもドラマが生まれない。
 自分はただ紫様が探りを入れるために投入されるその辺の石ころとなんの変わりもない。水面に波紋をおこせればそれでいい。ただ少しだけ違うのはその石が少しの時間を置いて手元に帰ってくるだけである。
 橙は理解していたつもりだった。でもそれは目を背けていただけだった。『失敗報告』で泣いたことは何度もあったが、それは『失敗』したことに対する涙だった。流れ作業の内の一つだった。
「・・・・・・橙」
 藍は救急箱を持って玄関へと戻って来たが、紫と橙が対峙している今自分がしゃしゃり出るべきではない、と判断していた。
 その時、紫は口を開いた。
「――――橙、その涙の意味は理解してる??」

 静寂したあと、橙は小さく頷いた。

「――――だったらあなたの『失敗報告』は不問にしてあげる。ただし、『次』は必ず『成功報告』をするのよ?」

 その言葉に橙は涙を止めた。

 ――――だって、今まで私は『次』を言われたことがなかったから。

「今日はゆっくり休みなさい。あと藍、早く橙の傷の手当てをしてあげてね」
 紫はどこからともなく扇子を広げて自分の部屋へと戻って行った。
「は、はい! 大丈夫だったか橙! 痛いところは――――」
 藍の手当を受けながら橙は今までに感じたことのない充足感の中にいた。
 それは彼女が自分の『弱さ』に真に向き合えたから。そして『弱さ』をくつがえす『強さ』を真に求めようとしていたから。
 『強さ』に飢える者の成長は早い――――。

*   *   *

 自室へと引き払った紫は机上の『スタンドDISC』を納めるケースを開いてぱらぱらと眺める。
 橙に適合したのは『(タスク)』だった。だが、現在自分と藍に適合するDISCは所持していない。『スタンド使いはスタンド使いでしか倒せない』のなら、自分はこの数枚の扱うことが出来ないDISCは不要である。しかし、手放すのは惜しい。
 ならば橙のように適合するものを駒として用いればいい。それが八雲紫の算段だった。
「・・・・・・『キング・クリムゾン』と『ゴールドエクスペリエンスレクイエム』・・・・・・」
 紫はスキマを用いて得た情報――――この二体のスタンドを何としても手に入れなければならなかった。
 幻想郷の秩序のため、『あの男』が完全に復活してしまうのは本当に拙いのだ。
「・・・・・・ディアボロ・・・・・・! いいわ、永琳。あなたの言う『挑発』を更に過激にしてあげるわ・・・・・・」
 紫は幻想郷の中で誰よりも『あの男』を警戒していた。
 自分から討って出ることが出来ないのは歯がゆいが対抗手段がないのなら仕方がない。ならばこちらは手を回すまで。
(幸いにも『彼女』が永遠亭にいる・・・・・・。ならば、この二体がベスト!)
 紫はケースから二枚のDISCを引き抜き、スキマの中へと姿を消した。

*   *   *

 場面は再び永遠亭。何も知らないジョルノ達はもうすぐ夕食の時間のため共同で準備を進めていた。
「おぉい、ジョルノ。野菜切ったが次何すればいいんだ?」
「ありがとうございますドッピオ。では洗っていない皿とか器具とか洗っててください」
「いやぁー、鈴仙なんかごめんね。私まで夕食頂けちゃうなんてさぁ」
「いいよいいよ美鈴。手伝ってくれてるんだし、みんなで食べた方がおいしいからね」
「うぅっ、有り難き幸せ・・・・・・(門番してると満足にご飯も食えない)」
「え、ちょ何で泣くの・・・・・・?」
 永遠亭の台所はジョルノ、ドッピオ、鈴仙、美鈴の四人でごった返しだった。いくら広い台所といっても大人四人が入れば結構ぎゅうぎゅうである。
 ちなみに何で四人で共同して料理を作っているのかというと・・・・・・。
「よっしゃあああああ!! 輝夜!! 飲み比べだ! 絶対負けないからなァ!!」
「ふわ~・・・・・・いいけど・・・・・・、どうせ私勝っちゃうよぉ・・・・・・ぐぅ」
「あらあら、姫様酒を飲みながら寝ると全身からミミズが這い出てきて死んじゃう夢を見るってそこの虫妖怪が」
「ええええ!? 私そんなこと言ってませんよ!? ていうか何で私たちここにいるんだ!?」
「しーらなーいっと! でも楽しいから私は騒ぐよー! 歌ってもいい?」
「いや、ミスティア・・・・・・。お前の歌は結構やばいからな・・・・・・妹紅や永琳が良くてもあの人間二人には酷だろう。やめてやれ」
「全く、二人とも私が呼んだ(DISCの件で借りがある)んだから感謝して欲しいウサね」
 と、まぁ。そこには十人十色人間妖怪人外何でもござれのお祭り騒ぎとなる様相でありまして。
 リグル・ナイトバグ、ミスティア・ローレライ、上白沢慧音、因幡てゐ、蓬莱山輝夜、藤原妹紅と見事に永夜組が集結し宴会をしているのだ。(ん? 主人公たちが足りない? 気にするな!)
「しかし、酷い宴会だな・・・・・・」
「僕もここでの宴会は初参加ですが、こんなにバカ騒ぎするとは・・・・・・」
 外来人組のドッピオとジョルノは客間で繰り広げられる大騒ぎに若干引き気味だった。
「ははは・・・・・・まぁ、異変の後の恒例行事みたいなもんかな? 今回は魔理沙も霊夢も行動を起こさなかったけど・・・・・・いつもは宴会に主役が二人いるんだけどね」
「へぇー」「誰ですかそれ」
 鈴仙は恥ずかしげに言うと二人は興味なさげに答える。
「・・・・・・えっと、うん。なんか凄い二人だよ・・・・・・」
 自分の自慢みたいな口調だったのが余計恥ずかしくなり、鈴仙は料理の支度に専念していた。
「そういえば、二人は元の世界では何かされてたんですか?」
 美鈴は鍋の火加減を調節しながら尋ねる。
「へ? い、いや俺もジョルノも前の世界の記憶がないからなぁ・・・・・・なにしてたんだろ?」
「・・・・・・僕はきっと『何か』と戦っていました。ぜんぜん思い出せないけど、特別なモノのために」
 皿を洗いながらのドッピオののんきな返事とは逆にジョルノは真剣な眼差しでふと呟いた。
「そうなですか、まぁそんな『気』はしましたが」
「? 美鈴さんだっけ? なんでそんなことが分かるんだい?」
 美鈴は一人でははぁ、と得心が行った感じで鍋の具のかき回していた。
「あ、私は固有の能力で『気を操る程度の力』がありましてね。生き物の気配を探れたり、相手の力量を把握したり出来るんですよ」
「なるほど、それでジョルノの内なる力を感じ取れたってことか」
 キュッ、と蛇口をひねり水で箸を洗い流すドッピオ。それに対してグリルで何かの肉を焼くジョルノは「いや、やめてくださいよ。内なる力とか恥ずかしい」と照れくさそうに答える。
「・・・・・・ん? ってことは俺にもそんな『気』が漂ってるってこと?」
 ドッピオは顎に手を当てながら箸の水気を切り、鈴仙に手渡す。「サンキュー」と言って鈴仙は箸と皿を持って台所を出て行き客間へと料理を運ぶ。ついでにてゐに足を引っかけられて派手に転んだ。
「うーん・・・・・・まぁ若干ですけどねぇ。もう、ホントに極小さいレベルなんですけど」
「ふーん・・・・・・」
 ごくごくわずかだが、俺にもジョルノのような戦いがあったのかもしれない。ドッピオは自分の『中』に存在する気というものに何か不思議な感じがしたが。
「うわー! 鈴仙酷い顔ウサ!」
「うううううるさーーーい!! あとで百倍に返してあげるんだから!!」
 客間から聞こえてきたいつものてゐと鈴仙のやりとりに笑いがこみ上げてきてすぐに忘れてしまった。
「ははっ、鈴仙そりゃ傑作だ。写真撮っとく?」
 鈴仙はてゐに向かって怒っているがその顔はパイまみれ。汚いの一言である。
「いいですね、それじゃ携帯を・・・・・・ってここじゃ使えないんですよね。鈴仙カメラ持ってる?」
「誰が渡すかクソがあああああ!! あんたら絶対覚えてなさいよ!」
「ちょ、その顔でこっち見ないでください。気持ち悪いです」
「ストレート!?」ガビーン!
 と、ドッピオには今のジョルノの単語が耳に残った。
(・・・・・・携帯・・・・・・?)
 なぜそんな単語が耳に残ったかは分からない。無意識の反射かもしれない。
 ドッピオの底に眠る『彼の意識』の。

*   *   *

「あーあー、さてと。そろそろこの辺がクライマックスって奴ウサね! レッディース&ジェントルメーン!! これが本日のメインイベント!!」
 てゐは酔いが回っているのかどこからか机を引っ張りだしてきて何か言い始めた。
「っててゐ。何が始まるのよ」
 鈴仙はそれほど酔ってないのか、人参をかじりながらてゐを睨む。
「おいおいおいおいおいおい、輝夜輝夜輝夜・・・・・・どうしたんだお前・・・・・・なんで分身してんだよ反則だろぉ~~~~~」
 まだ誰も酔いつぶれていない中、異常なハイペースで輝夜と飲み比べていた妹紅がそろそろヤバイ。
「お、おい妹紅・・・・・・お前もう焦点が・・・・・・」
「邪魔するんじゃねぇえぞ慧音・・・・・・。私はぁ、こいつにぃ勝たなきゃ気がすまないんだ・・・・・・」
 妹紅はぐだりながら輝夜と対峙しており・・・・・・。
「ゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュッ」
 当の輝夜は妹紅の目の前で一升瓶を一気飲みしていた(真似しないでください)。
「ふぅ、おいしい・・・・・・」シラフー
「ぐぬぬぬ・・・・・・」
 明らかに妹紅以上のハイペースで飲み続けている輝夜だが、その表情は全くの素面。全然まだまだいける口だ。
「お前にぃ! 出来て私に出来ないことはないいいい!!!」
 若干激昂しながら妹紅は同じように一升瓶を開けて
「だ、ダメだ妹紅! それ以上いけない!」
「ゴキュゴキュゴキュゴキュゴ・・・・・・」
 と、妹紅の手が止まった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 会場の視線は既にてゐでは無く、妹紅の方に集まっていた。
「・・・・・・えっと、ちょっといいウサ?」
 てゐは何とかこっちにみんなの視線を向けさせようとするが、みんなの視線は固まった妹紅と同じように動かない。
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
 と、永琳がおもむろに立ち上がり、脈を取った。

「・・・・・・」

「し、死んでる・・・・・・」

*   *   *

 藤原妹紅、急性アルコール中毒で死亡!(少ししたらリザレクション)

*   *   *

「・・・・・・今更死人がでてもあんまり驚かなくなっちゃったな」
「同感です」
 既に永琳が不死だとドッピオとジョルノは知っているため「すぐ復活する」と説明されたら直ぐに納得した。
「うわー、ほんとに死んでるね」
「ちんちーん! かわいそ!」
 リグルとミスティアはケタケタと笑いながら妹紅の死体をつついていた。
「・・・・・・全く妹紅の奴め・・・・・・。復活した後に説教が必要だな」
 慧音は親友が目の前で死んだというのに全く動じる様子もなく、そのまま永琳と晩酌を始めた。
「わーい、妹紅死んだ死んだー(棒)」
 輝夜は適当にそう呟いて一升瓶をもう一本開けて一気飲みをする。
 まさにカオス! 外来人二人は既に感覚が麻痺し始めていた。
「えーっと、ちょっといいウサか?」
 てゐは恥ずかしげに言った。
「何よてゐ。あんた妹紅に邪魔されて話折られたくせに」
 そうだそうだー、と適当にはやし立てるリグルやミスティア。彼女たちは本当に子供っぽい。
「ぐっ、そう言っていられるのも今のうちウサ! みんな、ちょっと聞いて欲しいウサ!」
 再びてゐの大声により会場の注目は彼女に集まった。
「本日のメインを始めようと思うウサ! じゃあ観覧する人は端に避けて欲しいウサ!」
「はぁ~? 何言ってるのよてゐ。観覧する人って一体何するつもりなのよ? だいたいアンタみたいなのに耳を貸す奴なんて誰もいやしないわ。さっきだって私を転ばせた挙げ句パイまでブツケて・・・・・・。そんな奴の言うこと聞くのは・・・・・・」
「そうだね~~~~~、アンタ以外ウサね~~~~~~~~」
「そうそう、私以外くらいしかいないわよ・・・・・・って」
 鈴仙がてゐに注目して周りを見ていない隙に――――。

「えっと・・・・・・何これ?」

 全員もう端に避けていた。
「はいはいはいはいはーーーーーい!!!! それじゃあついに鈴仙・優曇華院・イナバの幻想郷一、おもしろい爆笑必死の一発ギャグがお披露目されまーーーーーす!!!! みなさん腹筋が崩壊しないようにがんばって耐えてねーーー(笑)」
「うおおおお!!」
「頑張ってねーうどんげー」
「ガンバレー!」
「期待してますねー」
「鈴仙さん頑張ってくださーい」
 なんやかんやで盛り上げる外野。てゐのせせら笑い。一人取り残される状況。ハードルの上げ方。エトセトラ、えとせとら、etc...
 鈴仙の胸中はお察しするが、みんなはとりあえず「自分があの位置じゃなくて良かった」と思っているだけである。

「・・・・・・え?」

 鈴仙は呟くことしかできない。何この無茶ぶりとハードル。何て言ったあのクソウサ。

「じゃあみなさん静かにお願いしたいウサ! 聞こえないと困るからねー」
 てゐの一言で会場は静かになっていく。まだ状況が飲み込めていない鈴仙は。
「ちょっと、て・・・・・・」
「イナバー」
 てゐ、と言おうとして遮られた。
 遮ったのは蓬莱山輝夜。月のお姫様。
「面白くなかったら全身の皮が無くなると思えよー」ニッコリ


(冗談じゃすまされないッッッ!!!!???)


 頑張れ鈴仙、負けるなうどんげ! 我々に出来るのはそう願うだけである。

*   *   *

(くくくっ、私が酷い目にあったというのにお前だけ宴会を楽しむなんてそんなセコイことは許さないウサよ・・・・・・! 姫様もなんやかんや乗り気だし、大衆の面前で赤っ恥かいて死ね!)
 てゐの思惑通り、鈴仙は焦っていた。無茶ぶりにもほどがあるんじゃあないか?
「いやいや、し、しないわよてゐ! なんかみんなの雰囲気に飲まれそうだったけど、そんなことは・・・・・・」
 鈴仙は必死でやらないアピールをするが、てゐはおろか他のみんなまで怪訝そうな顔をする。
「おいおい、あそこまで言っておいて今更やらないのか」
「しけてるねー、冷えてるかー?」
「心なしか酒の味も悪くなるな」
 ため息まみれの会場。鈴仙は単なる被害者だが、こんなムードにしたのは彼女のせいでもある。可哀想だが、現実は非情なのだ。
「イナバー、早く早く」
「ひ、姫様・・・・・・」
 輝夜はいまいち状況が分かっていないようだが、『オモチャが何かする』くらいには認識しており、のんびりとした表情で鈴仙をせかす。
(これはマズイ。まんまとてゐの策略に引っかかってしまったわ! ギャグをしなければ会場は丸潰れになり私の命が危ないし、シラケたら姫様がごねて私の命が危ない。チクショー! あんだけ飲んでるから姫様笑い上戸になってよ!)
 と、思いつつ。

「・・・・・・え、では師匠。座薬ください」
 彼女は渾身のネタをするつもりだった。
「? いいけど、痔?」
「違いますよ! 一発ギャグです! 私の代名詞を使って!」
 座薬が代名詞とは悲しいことだがこの際四の五の言ってられない。例え不本意な仕事でもしっかりやり遂げなければならないのだ。
 永琳は鈴仙の覚悟を決めた瞳を見て何かを察したのか、懐から一錠の薬を取り出した。
「はい」
 ぽい、と投げ渡すと鈴仙はそれをキャッチ。そしてそれを指先で摘み直し、銃口を向けるような形で座薬を見せつける。

「今から一歩も動かずにこれを弾幕に見立てて私自身に投与します」

「・・・・・・」
 誰も鈴仙の言った意味が分からなかったのだろうか、しーんと黙りこくってしまった。
 そして鈴仙は――――。
「『BANG』」
 と呟くと予備動作もなしに座薬が指先から打ち出され、不規則な動き方をしながら鈴仙の周りを目まぐるしく動き回る!
「な、何だあの不規則な動きは!?」
「目で追うのがやっと! すごいすごーい!」
「ぐぬぬ・・・・・・い、意外とやるじゃないのさ」
「うわー」
 慧音は驚き、リグルやミスティアは目を輝かせ、てゐは歯ぎしりをし、輝夜は適当に声を上げた。
 右に左にまさに座薬が縦横無尽。かなり不気味な光景である。
 ――という風に普通の人間や妖怪は思うだろう。だが、ドッピオとジョルノには見えていた。

 『セックスピストルズ』が座薬弾を彼女の周りでお手玉している光景が!

「キャッホーーーー!!」
「レイセンハヤクアイズシヤガレェエエーーーー!!」
「オノゾミドオリ、ブチコンデヤルゼェーーーー!!」
 主のケツの穴に弾をぶち込むというアレなことを楽しみにするピストルズ。てゐと姿はそっくりだが対極のような楽しみ方である。
「・・・・・・あんなスタンドの使い方は僕らは思いつきませんね」
「いや、思いついても俺は絶対しないぞ??」
 二人はその様子をげんなりと見守っていた。一体いつあの小さなてゐ達に座薬投与のタイミングを教えるのだろうか・・・・・・。
 だが、二人とは違い意外にも会場は大盛り上がり。てゐは悔しそうにしているが輝夜は「うわー」と適当ながらもその視線は鈴仙に釘付けである。
「(よし、このタイミングね! あとは痛みに耐えるだけ・・・・・・!)ゴー!!」

「ヨッシャアアア!」
「ハァクイシバレヨレイセン!」

 ピストルズは座薬弾をうまく誘導し、そして――――。

 ドムッ!!

「・・・・・・ッ!!!」
 鈴仙の尻に見事に投薬された。
「「「「うおおおおお!!」」」」
 会場は一気に大盛り上がり! てゐの思惑は大きく外れたが結果的に宴会を盛り上げることにはなった。
「・・・・・・あ、鈴仙今の座薬は実は練り辛子入りなのよ」
「あああああああ!? ちょ、師匠!? 今言うんですかそれ!? ああっ、やばいかも! 投薬時の痛みが引いてきたと思ったら辛くなってきた!? 聞かなきゃよかった、ってヒリヒリするううう!!」
 結局はてゐにではなく永琳に騙されたが、姫様も満足げだったようだし鈴仙はほっと安堵の表情を浮かべる。
「すごいわイナバー、見直したわー」
 輝夜はにこにこしながら手を叩いてケツを押さえる鈴仙を称えた。そして――――。

「ところで今のちっちゃくて、可愛いてゐ達は何だったの?」

 永琳は耳を疑った。

*   *   *

 八雲紫はスキマから顔を出すとそこには二人の少女が広い部屋で大暴れ、もとい破壊活動に勤しんでいた。
「WRRRRRRRYYYYYYYYY!!! 咲夜はどこよッ! 咲夜を出しなさい!! そしてここから出しなさい!!」
「パチュリーーーーーー!!! 今すぐ結界を解かないといくらあなたでもブチ殺しだよ、ぶっ殺し!!」
 ガシャアン! ズガッ!! ドドドッ! ガァン!
「・・・・・・世話が焼けるわね・・・・・・。しかしよくもまぁ、この屋敷は倒壊しないものね」
 二人の吸血鬼を屋敷の大広間に三重結界で閉じこめて(流水の結界)動かない大図書館、パチュリー・ノーレッジは静かに呟いた。
「当然ッ!! 私の紅魔館なのよ!! 派手な爆破エンド以外で倒壊なんてさせないわ!」
「じゃあ今からぶっ壊そうそうしよう! きゅっとして・・・・・・」
「やめてフラン!」
 紅魔館の主であるレミリア・スカーレットとその妹、フランドール・スカーレットは広間の床を殴りつけて陥没させながら叫んだ。言ってることとやってることがかなり矛盾している気がする。
「・・・・・・はぁ」
 パチュリーは呆れたように深い椅子に座ってため息をついた。
 レミリアやフランドールがこんな風に暴れると、決まって止めにはいるのが咲夜の仕事だった。彼女が仲裁すると何事もなく二人は静まるのだが、今日はそうもいかない。
(肝心の咲夜が屋敷を飛び出してもうすぐ丸一日・・・・・・美鈴は何をやっているの? この二人、今はまだ暴れ回るだけで済んでるけどこのままじゃ殺し合いに発展してもおかしくないわ・・・・・・)
「なら私が代わりに諫めましょうか?」
「そんなことが出来るなら最初からしてもらいたいものね・・・・・・」
 当然のように呟いて、・・・・・・今のは誰の声なんだ? と思い。
「むきゅ!?」
「今晩は、大図書館さん」
 背後を振り返るとそこには大妖怪、八雲紫がスキマから半身を出して手を振っていた。
「むきゅ、むきゅきゅきゅきゅ!!(いつからそこにいたのよ!)」
 ちなみにパチュリーは焦ると口調が少しおかしくなるが、大体言いたいことは伝わるので誰も気にしていない。
「紫?」「ばばぁ!!」
 パチュリーの驚きの声によってレミリアとフランは紫の存在に気が付いた。
「あら、口が悪いわねフランドール嬢。躾は受けていないのかしら」
「うっさいばばぁ! 暇だから咲夜を出すか、私に殺されろ!!」
「フラン。咲夜を出すのには賛成だけど殺すのはやめなさい」
 騒ぐフランを窘めながらレミリアは紫と結界越しに対面する。
「何のようかしら年増女。私たちは今あんたのことに構ってる時間は全くこれっぽっちも無いんだけど、さっさと帰れ」
「あらあらヒドい歓待ですこと。レミリア嬢もまともな教育を受けていらっしゃらないようで」
「私は教育『する』側だからな・・・・・・? あまり怒らせると勢い余ってぶっ殺すぞ?」
「お姉さまもぶっ殺すって言ってるよ」
「あら、そうね。じゃあ殺してもいいかもしれないわ」
「そうなの? じゃあ殺しましょう」
「そうね、殺しましょう」
「どうやって殺す?」
「あなたが殺して」
「あなたが殺すの」
「そうね」
「そうしましょう」
 フランはレミリアに寄りかかって、レミリアもまたフランに寄りかかって奇妙な会話を続ける。
「むきゅ、むきゅむきゅっむきゅ(この二人はいつもこんな会話するから気にしないで頂戴)」
 パチュリーは二人の意味不明な会話にフォローを入れるが
「そうね、あなたも含めて訳が分からないわ」
 紫の笑顔に一蹴されてしまった。
「むきゅう・・・・・・」
「で、何しにきたのかしら?」
「殺されに来たのかしら?」
 レミリアとフランは絡まり合うような姿勢で紫に同時に話しかけた。
「殺されに来たわけではないわ。ただ、あなたたちの捜し物がどこにあるのかを教えにね」
「「――!!」」
「捜し物むきゅか・・・・・・」
 パチュリーも含め、全員が瞬時に理解した。
 八雲紫は十六夜咲夜の居場所を知っている。
「咲夜という犬のことね!」
「犬のような咲夜のことね!」
 二人は目を爛々と紅く輝かせて言った。
「そうよ。私は十六夜咲夜の居場所を知っているわ」
 紫は言葉の裏でほくそ笑みながら肯定した。
「教えなさいよ!」
 レミリアは食ってかかるように叫ぶ。
「殺されたいの!?」
 フランは敵意剥き出しで威圧する。
「教えない気も殺される気も毛頭ありませんよ? ですが、あなたたち二人には協力をしてもらうけれどね・・・・・・」
 と、紫は指をパチンと鳴らすと――――。
「むきゅっ!?」
 結界の中にいたはずのレミリアとフランドールの姿はなく、もちろん紫の姿も消えていた。
「むきゅううん!!(しまった! 『境界を操る程度の能力』に結界なんて無いに等しかったんだわ! 油断した、二人が連れていかれた!)」
 パチュリーは一瞬焦るが・・・・・・。
「・・・・・・むきゅ」
 考えてみれば現在絶賛暴走中の吸血鬼姉妹が八雲紫に連れていかれただけである。自分にとってみればこれ以上結界を張る必要が無く、とりあえずはいずれ咲夜は戻ってくるのは確実になった。
「むきゅきゅ(部屋戻ろ)」
 美鈴も帰ってこないため自分がこれ以上この件に首を突っ込んだところで無意味と判断し、パチュリーは静かに図書館に引き払っていった。

*   *   *

「さて場所も変わったところですし、居場所を教えましょうか」
 紫はとある空間に二人を連れてきて言った。
「げほっ、こんなところに連れてきて・・・・・・何をしようって言うのかしら」
「頭くらくらするー・・・・・・」
 スキマでの移動は慣れていない者にとって若干乗り物酔いのような状態に陥りやすい。紫にとって二人が乗り物酔い状態にある間は安全である。
「十六夜咲夜の居場所を教える前に、頼みごとがあるわ」
「頼み?」
「そうよ、あなたたちにとってはすごく簡単な頼みよ」
「・・・・・・情報と交換というわけか。つまらない頼みなら今ここであなたの首をかき切ってもいいのよ・・・・・・?」
「首、かき切る? 私が切りたい切りたい!!」
「フラン、ちょっと黙って」
 かき切るという単語に反応したのか、フランは子供のように駄々をこねはじめるが紫は無視して
「ええ・・・・・・ある人間をぶっ殺す、単純でしょう? こちらの道具も与えるから、きっと二人は気に入るわ」
「「殺す?」」
 二人はその単語のみに反応する。と、紫に二枚の変な物体を渡された。
「道具なんて必要ないわ・・・・・・というかこれ何よ」
「殺す! 殺す! フラン一杯殺すよ!」
 レミリアとフランに一枚づつ手渡されたその物体は円盤状をしており、変な肌触りをしている。ぐにぐに曲がるが、元の形にすぐに戻るのだ。
「それは『スタンド』という特殊な・・・・・・そうね、精神の具現とでもいうべき存在が封じられていますわ。二人に殺してほしい人物――――ヴィネガー・ドッピオも同じようにその『スタンド』の能力を持っているの。『スタンド』を持つ者には『スタンド』でしか対抗できない・・・・・・これがルールよ」
 紫は説明しているが二人はあまり理解できていないようで
「とりあえずドッピオって奴をぶっ殺せばいいの?」
「フラン難しいことわからないよー」
 首を傾げてDISCをしげしげと眺めていた。
「・・・・・・まぁ、あなたたち二人なら無くても問題は無いでしょうけど・・・・・・。頼まれてくれるかしら?」
 こんなことは紫にとっては予定調和。現在はドッピオという人格に隠れているディアボロを引っ張り出しさえすればいいのだから。
「いいよ、別に。そんなことより咲夜の居場所を教えなさい」
「そう。なら、私からのお願いはもうないわ。――――十六夜咲夜の居場所は永遠亭よ。そして、そこに殺して欲しい人間も存在するわ」
 紫は空間に再びスキマを作り、その先を示した。
「こっちに咲夜がいるのね?」
「咲夜が? 本当に?」
「ええ、・・・・・・これで私は一旦自分の家に戻るけど、素敵な報告を期待してるわ・・・・・・。あ、あとあなたたちの『スタンド』の名前を教えてあげましょう。これで少しは興味がわいてくれればいいんだけど」
 するとレミリアはぎぃっと笑って
「よい、話せ」
 嬉しそうに言った。捜し物を目前にした興奮だろうか、鼓動がやけに速まっている。
「あなたたちの『スタンド』・・・・・・レミリア嬢のスタンドは『クレイジーダイアモンド』。フランドール嬢のスタンドは『キラークイーン』。そのDISCを頭に挿入することで『スタンド』は発言するわ」
 そう言い残して紫は再びスキマの中に消えた。


 スキマとスキマの狭間に悪魔が二人。レミリアとフランドールはお互いの顔を見合わせ、レミリアはフランドールを押し倒す。フランはそれを享受する。混ざり合うようにお互いの体、羽、舌、指を絡め合う。二人の吸血鬼の不気味で神聖な抱擁。

「フラン、ねぇフランドール?」
「何かしら、レミリアお姉さま」
「私ね、とってもとってもとてもとてもいいこと考えたの」
「あら、奇遇ね。私もすっごくすっごくすごくすごくいいことを思いついたところだわ」
「まぁまぁ、奇跡みたいね」
「違うよ、運命だよ」
「それでフランの考えついたいいことって何かしら?」
「いや、先にお姉さまの考えからでいいよ。私は後がいい」
「だめよ」
「どうして?」
「不平等だわ。考えたのが私が先で、言うのも私が先なのは不平等だわ」
「そうなのかな? でもお姉さまからでいいよ」
「本当に?」
「うん」
「本当は?」
「私が先に言いたい」
「奇遇ね、私も先に言いたいわ」
「二度目の奇遇は素晴らしいわ」
「この上なく素晴らしいわね」
「だったら提案があるの」
「一緒に考えを言いましょうって?」
「そうよ、それ」
「それね。私もそれがいいわ」
「じゃあせーので言っていこうよ」
「いくよ」
「せーの」

「「私の『スタンド』とあなたの『スタンド』、取り替えっこしない?」」

「うふふふっ」
「あはははっ」
「何でもあの妖怪には思い通りにさせないわ」
「何でも従うと思ったら大間違いよ」
「『殺戮の(キラークイーン)』は私の方がふさわしい」
「『狂気の宝石(クレイジーダイアモンド)』は私の方がふさわしい」
「だったら替えましょう」
「取り替えっこすればいいんだよ」
「そうすればお互い素敵」
「そう、素敵な交換ね」
「最高よ、最高の気分だわ」
「高鳴りを押さえきれないくらいに」
「あなたも?」
「そう、私も」
「みんな殺さないと、押さえられないわ」
「あなたも?」
「うん、私も」
「じゃあ殺しましょう」
「そうね殺しましょう」
「永遠亭を」
「死の香りで」
「一杯にしましょう」
「そうしましょう」
「うふふふふふふふふふふ」
「あはははははははははは」
 二人のどちらが発しているか分からない会話と高笑いはしばらく続いた。
 そしてお互いが絡み合う中で二人は持っているDISCをお互いの頭の中に差し込んだ。


第⑨話へ続く・・・・・・

*   *   *

 スタンド使い/スタンド名

 レミリア・スカーレット / 『キラークイーン』
 フランドール・スカーレット / 『クレイジーダイアモンド』

*   *   *
 
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