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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第82話 終演

 
前書き
今回で三章が終わります。
冬夜の紹介とアルさんなどの追加情報も同時に公開します。 

 
「ふぅ…っと!」
カリスを撃ち、一息ついていた兄貴に何かが飛来し、それを兄貴は危なげ無く避ける。
「今頃手を出すんですか?」
兄貴は飛来物…光の槍を投げ主であるコカビエルの方を向いて言う。
「フッ、貴様の力を見るのに丁度良いと思ったからな。それに、二人がやられたところで、別にどうって言う事でも無いからな」
ベルとカリスの二人がやられたと言うのに、コカビエルの奴は特に気にも留めていなかった。
奴にとっては二人はバルパー同様、仲間でもなんでもなく、自身が戦争を起こす為だけの道具だったと言う訳か。
「さて!サーゼクス達が来るまでの良い時間潰しになりそうだ!精々、楽しませてくれよ!」
翼を拡げ、狂喜で表情を染め上げる。
「ふぅ」
ズガガガガッ!
兄貴は一度瞑目し、次の瞬間には、赤い銃を抜き、弾丸をばらまいていた。
「フッ」
コカビエルは嘲笑するなり、翼で身を覆い、兄貴の銃撃を防ぐ。
「炎の属性の力を込めたか。なかなかの威力だ。この程度が…」
「通用するなんて思ってませんよ」
ズガガガガッ!
兄貴は銃撃を止めたと思ったら駆け出し、走りながら、今度は赤い銃を横に薙ぎ払いながら連射した!
一見、無意味な銃撃だった。
「何!」
だが、兄貴が放った弾丸は途中で意志がある様に起動を変え、翼の隙間からコカビエルを仕留めにいった!
「チッ!」
コカビエルは翼を刃の様に振るって、弾丸を弾き飛ばす。
「フッ」
「ッ!」
ドガッ!
その隙に肉薄した兄貴が強烈な回し蹴りを放ち、コカビエルは腕で防御(ガード)する。
その足をコカビエルは掴み、兄貴を投げ飛ばそうとするが、兄貴は投げ飛ばされようと宙に浮いた瞬間、足を掴んでいるコカビエルの腕をもう片方の足で蹴り上げた!
「ぐっ!?」
「テイッ!」
「チッ!」
兄貴は持っていた銃をホルスターに納め、その場に両手で着地、そのままカポエラで攻め立てる!
コカビエルは蹴りを捌き、後方に下がりながら翼で兄貴を攻撃する。
「フッ!」
ズガガガガッ!
兄貴はそのままの状態で後方に跳び、赤い銃を抜いて即座に銃撃、コカビエルはそれを見て、慌てて翼を防御(ガード)に回す。
ズガガガガッ!
兄貴は銃撃を続けながら、着地をし、体勢を整える。
「フッ、いくら撃ち込もうと、弾の無駄…」
「フッ…」
兄貴が悪戯に成功したと言わんばかりに笑みを浮かべた瞬間…。
ドォオン!
「ッ…!?」
一発の甲高い銃声が鳴り響き、コカビエルの左肩が翼ごと撃ち抜かれていた!?


い、一体何が起こったってんだ!?
「……ぐぅ…ぅ…!?…」
いきなり銃声が鳴ったかと思えば、コカビエルの左肩が翼ごと撃ち抜かれていて、コカビエルは肩を押さえながら苦悶の声を出していた!
「あ、明日夏!?一体何が…」
「……俺もあんまり把握できていないが…」
明日夏が冬夜さんの方を見る。
冬夜さんはいつの間にか、右手に青い銃を持っていて、銃口から煙が揚がっていた。
「はっきりしているのは、兄貴があの青い銃でコカビエルの肩を撃ち抜いたのは確かだ。お前もそれぐらいは分かっただろう?」
「あ、ああ。でも、いつ、冬夜さんはあの銃を抜いたんだ?」
「……速すぎて見えなかっただけだ」
「は、速すぎてって!?」
「僕でも全く見えなかったよ。気が付いたら既に引き金が引かれていたんだ…」
木場でさえ見えなかったのかよ!?
「だが、それだけじゃ無いな」
「え?」
「いくら速く撃ったとしても、威力が変わる訳じゃない。神器(セイクリッド・ギア)の力も最初から込めていたし。さっきの弾丸の軌道が変わった事と言い、おそらく、あの銃には俺の雷刃(ライトニングスラッシュ)みたいな特殊な技巧が施されてるんって言った所か」
明日夏の考察を聞いて、冬夜さんが微笑む。
「ふふ、そう言えば僕の事をあんまり話した事なかったね。明日夏の言う通り、この朱鷹(レッドラプター)と蒼隼(ブルーラプター)には雷刃(ライトニングスラッシュ)同様に特殊な技巧を施されていて、特殊な動作から引き金を引くと、弾丸に特殊な能力を付与するんだ。薙ぎ払い撃ち動作で軌道変更能力の付与、そして、早撃ち動作で弾丸に加速能力が付与される。さらに、この蒼隼(ブルーラプター)は弾速と貫通力に秀でてね、早撃ち時の加速能力は相性が良くて、相当な弾速と貫通力が得られるんだ。ちなみに朱鷹(レッドラプター)は連射性に優れてて、薙ぎ払い撃ち時の軌道変更能力と相性が良いんだよね」
どうやら、冬夜さんのあの銃も明日夏の刀みたいな特殊な仕掛けがあるみたいだ。
「さて、そんな手傷を負った状態でこれからやってくる魔王の増援と相対するのは厳しいと思いますけど?」
冬夜さんは銃をホルスターに納めつつ、そんな事を言う。
つまり、コカビエルにこの場は退けと提案しているのだ。
って!?そんな事したら、部長の乳首が!?
「調子に乗るなぁぁぁ!!!!」
コカビエルが激怒し、空中に飛び上がって光の槍を生み出す!
って!?デカッ!?
その大きさは体育館を吹っ飛ばした時のよりも圧倒的にでかく、さらに大きくなりつつあった!?
あんなのぶっぱなされたら、この辺一体ふっとんじまうぞ!?
あまりに巨大な光の槍に戦慄した瞬間…。
ギャオォォォォオオッ!
『っ!?』
「なにぃぃッ!?!?」
ドガァァァン!
白く発光した龍がコカビエルの巨大な光の槍にかじりつき、とてつもない大爆発が発生した!?
ドゴォォン!
「がはぁ…っ…!?」
爆風で地面に叩き付けられたコカビエルが苦悶の声を出す。
「ふぅ」
冬夜さんはいつの間にか両手の銃をホルスターに納め、龍の銃撃を放つ銃を持っていた。
さっきの龍もやっぱり冬夜さんの銃撃だった様だ。
それも、さっきみたいにとんでもない速さでの早撃ちでだ。
冬夜さんは銃を回転させながらホルスターに納めた。
「……ぐ…っ…」
コカビエルがボロボロになりながらも立ち上がる。
「今のは…」
「ん?どうした明日夏?」
「兄貴、あの龍はその銃の銃弾に込められた神器(セイクリッド・ギア)の力がドラゴンの力の影響を受けて形態変化した物なんだよな?」
「うん、そうだよ」
「なら、龍は炎、水、風、土の四属性のいずれかの物になるはずだ。だが、最初と今の龍はその四属性のどれにも当てはまらなかったぞ…」
え!?それってどう言う事だ!?
でも確かに、今思えば最初と今の龍は炎、水、風、土のどれにも当てはまらなかった。
「はは、ちょっとした裏技だよ」
「何?」
「二種類以上の属性を合わせる事で別の属性に性質変化させたのさ。今のは炎と土の二つを合わせてできた爆発の属性、最初のは炎、風、土の三つを合わせてできた消滅の属性にしたって訳」
「つまり、本来なら四つのところを組み合わせる事でより多くの属性の力を操っているって訳か」
それってつまり、ものスゲェいろいろできるって事か?
「まあでも、本来なら一つしか使えない物を一つにしているとは言え、二つ以上使う訳だからね。消耗もハンパじゃないんだけどね。だから、ここぞって時じゃないと使わないんだけどね」
「だから、使い分け易い様にその銃は回転式(リボルバー)って訳か」
「そうだよ」
「えっと明日夏、ああ言う銃だとなんで使い分け易いんだ?」
「マガジンタイプだと、一回弾を込めたら、中の弾を変えるのは手間以前の問題なのは分かるな?」
「あ、ああ。あっ!」
「そうだ、回転式(リボルバー)だと装弾数は圧倒的に少なくなるが、発射順番を調整できるし、弾を別の属性の物に入れ換える事もできるって訳だ 」
「ふふ、そう言う訳で、この竜撃銃(アーツドラグナー)は回転式(リボルバー)って訳」
冬夜さんは銃口をコカビエルに向けながら答える。
「さて、そろそろいい加減に傍迷惑な事を起こすのを諦めてほしいんですけどね?」
冬夜さんの言い分にコカビエルは激怒する。
「ふざけるなッ!!ここまでやって、今更諦めろだとッ!!この振り上げた拳を収めろだとッ!!ふざけるな!ふざけるなァァッ!!人間風情が調子に乗るなッ!!」
「その人間風情にその様とは。コカビエルともあろう者が堕ちたものだな」
「ッ!誰だ!」
突然、場違いな程気楽な声が割って入ってきた!?
パキャァァァァァン!
『っ!?』
突如、会長達が張っていた結界が破られ、白い閃光が舞い降りてきた!?
「か、身体が震えやがる!?何だアイツは!?」
閃光が止み、現れたのは純白の鎧を着込み、とてつもない波動を放つ翼を持った存在だった!?
「白い龍(バニシング・ドラゴン)か!!」
白い龍(バニシング・ドラゴン)!?じゃ、じゃあ、奴が!?
「チッ、赤に惹かれたか白い龍(バニシング・ドラゴン)よ!?邪魔立ては…」
ブヂィッ!
「ッッッッ!?!?!?」
皆まで言う前に突然、白い鎧がコカビエルの背後に現れたかと思ったら、その手には黒い翼が握られていた!?
「な、何をしたんだ!?」
「僕でも全然見えなかった!?」
「……はっきりしてるのは、コカビエルの背後に回って、翼を引きちぎった…」
「それを超高速で行ったみたいだね」
あまりにも一瞬な出来事に俺達は唖然としてしまった!?
「まるで薄汚いカラスの羽根だ。アザゼルの羽根はもっと薄暗く、常闇の様だったぞ?」
「ぐっ…貴様、どういうつもりだ!?」
「地より下の世界に堕ちた者に羽根なんて必要ないだろ?」
「ッ!!」
激昂したコカビエルが宙へと飛び立ち、巨大な光の槍を再び作り出した!?
「フッ」
『Divide!』
「なにぃぃッ!?!?」
白い鎧から発せられた音声と共に槍が縮小していき、最終的には消滅してしまった!?
「我が名はアルビオン。我が神器(セイクリッド・ギア)、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の能力の一つ、触れた者の力を十秒ごとに半減させていき、その力は俺の糧となる。急がなければお前の言う人間風情にすら勝てなくなるぞ?」
相手の力を半分にするのがあいつの力なのか!
「赤は自身の力を倍加、他者に力を譲渡。白は他者の力を半減、自身に吸収。伝承通りか。まさに対極と言えるね」
いつの間にか俺達の下にやって来ていた冬夜さんがそんな事を呟いていた。
「つまらない。もう少し楽しめるかと思ったんだが…」
ドゴォン!
「っ…!?」
白い鎧の一撃がコカビエルの腹を抉った!?
「あんたは少しばかり勝手が過ぎた。力づくでも連れて来る様、アザゼルに頼まれてね」
白い鎧はコカビエルと共に閃光となって宙を駆け巡る!
「アザゼルゥゥウウゥゥゥッ!!!!!!」
ドゴォォォン!
絶叫を挙げるコカビエルはそのまま地面へと叩き付けられた。


「あのはぐれ神父にも聞き出さねばならない事がある。始末はその後だな」
コカビエルを抱えた白龍皇がフリードの下へと寄り、襟首を掴んで無造作に抱える。
『無視か?白いの?』
二人を抱えて早々に立ち去ろうとする白龍皇にイッセーの籠手に宿るドラゴン、赤龍帝ドライグが語り掛ける。
『生きていたか、赤いの』
鎧の男とは別の声が応じる。
今のが奴の神器(セイクリッド・ギア)に宿っているドラゴン、白龍皇、白い龍(バニシング・ドラゴン)か。
……それよりも、まさかここで二天龍の戦いが始まるんじゃねえだろうな?
『折角出会っても、この状況ではな…』
『良いさ。いずれ戦う運命だ。こう言う事もある』
……どうやら、会話内容から察して、今戦う気はお互いに無いようだ。
『なんだなんだ?出会ったら即バトってたお前らがずいぶんと大人しいじゃねえか?』
ドレイクが唐突に割り込んだ。
『……ハァ、その声はドレイクか』
白龍皇は鬱陶しい奴を見たかの様に嘆息して応じる。
……ドライグの時もそうだったが、お前一体何やらかしたんだ?
『まあ、お互い戦い以外の興味対象ができたってところだ』
『そう言う事だ。ではまた会おう、ドライグ』
『ああ、またな、アルビオン』
ドレイクの問いに淡々と答え、早々に宿敵に別れを告げ合うにh二匹の伝説のドラゴン。
……本当お前何やらかしたんだ?
「おい!」
っと、今度はイッセーが白龍皇に話し掛ける。
「どう言う事だ!お前はなんなんだ!?てか…お前のせいで俺は……俺は……部長のお乳を吸えなくなっちまったんだぞォッ!!」
「……怒るところ、そこかよ…」
「あたりまえだァッ!!」
……涙目で怒鳴り散らされた。
……ホントぶれねえな、こいつも。
そんなイッセーに白龍皇は淡々と告げる。
「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵君」
そう告げ、閃光となってこの場から飛び去っていった。
「……コカビエルの話しぶりから、今回の事件は奴の独断で、身内の問題は身内で解決させた、そんな感じか…」
「大方そんなところだろうね」
兄貴とそんな話をしていると、結界の担当をしていた会長率いるシトリー眷属がやって来た。
「……まさか、白龍皇が乱入してくるとわ…」
「……でも、おかげで町は救われたわ。もっとも、大地崩壊の術を解除してくれたのは彼だけれど」
「えっと、貴方は?」
「俺の兄の…」
「士騎冬夜です。お初にお目に掛かります、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹君、ソーナ・シトリーさん。あ、それから、バタバタして遅れたけど、グレモリー眷属の方々も初めまして。弟と妹がお世話になってます」
兄貴は会長、イッセーを除くグレモリー眷属のみんなに改めて自己紹介をする。
「あ、あの、冬夜さん!?い、今、会長の事をなんて!?」
「ん?魔王レヴィアタンの妹って言った事?」
「えぇぇぇっ!?!?か、会長が魔王の妹ォォォッ!?!?」
イッセーが心底驚愕していた。
「コカビエルの奴も言ってただろうが」
「あ、そ、そう言えば…」
「まあ、状況が状況なだけにアタフタしてそれどころじゃなかったんだろうね」
まあ、確かにあの状況じゃ、それどころじゃ無かっただろうしな。
「って言うか、明日夏!?お前知ってたのか!?」
「まあ、兄貴から聞いてはいたが…」
その時は俺も驚いたけどな。
「大地崩壊の術に関してはありがとうございます。では椿、私達は校内の修復を」
「登校時間まではなんとかなるでしょう」
「じゃあ、私達も」
「いいえ。学園の管理は生徒会の仕事ですから」
「あ、実は…」
兄貴は校舎の一部を炎の龍の銃撃で盛大に破壊してしまった事を詫びる。
「状況が状況でしたからお気になさらないでください。貴方のおかげで町は救われた訳ですし」
兄貴が破壊した校舎の部分を見ると、そこはいまだに盛大に燃え盛っていた。
「……ベルの奴は死んだのか?」
「ううん。白龍皇が乱入した頃には逃げてたみたいだよ」
「……あれをまともに受けても生きてるのかよ。まあ、首を折っても生きてる様な奴だからな…」
「僕もあれで動けるとは思わなかったからね。完全に油断したよ」
「正直、あいつは害そのものだから、ここで仕留めたかったところなんだが、カリスを仕留められただけでも良しとするべきか…」
「そうでも無いんだよね…」
「何?」
兄貴はカリスの遺体に近付き、うつ伏せの状態から仰向けにする。
「見てごらん」
『ッ!』
カリスの顔を見ると、皮膚が異常な程剥がれ落ちていた!?
「偽者…」
「百パーセントの偽者って訳じゃあ無いね。おそらく、自身の感覚などを死体にフィードバックさせて動かしてたんだろうね。あの痛みの感じ方は演技じゃなさそうだったし」
と言う事は、あの厄介で害悪そのものとも言える二人は今もどこかで生きてるって事か。
最悪の一言だな。
「とは言っても、これだけの事をしでかしたんだから、三大勢力にも目はつけられたはずだから、しばらくは大人しくしてると思うけど…」
それでも不安だな。
「結局、兄貴の目的は果たせなかったと言う訳か」
なんて言ってると…。
「ん?彼に関してはついでで、元々今日帰ってくる予定だったよ」
「なん…だと…?」
「千春もその内帰ってくるよ」
『…………』
俺と千秋は固まってしまう。
「あ、明日夏兄!?近日中になんかあった!?」
「クソッ!?ここんところ、騒動ばっかりで日常的な懸念事項をなんか忘れてる!?」
クソッ!兄貴と姉貴が突然帰ってくる時は俺達に関するイベントがある時、例えば誕生日とかそんなのだ!
俺達の為にその時にはなにがなんでも帰ってきてくれるのは素直に嬉しいんだが、如何せん、その時の二人のテンションがハイ過ぎて俺達の精神を羞恥などで酷く抉りかねない時がある!
クソッ!何も思い出せない!?
こう言う時は大抵、俺達の精神を抉るもので、脳内から抹消したもののはずだ!?
「イッセー!!お前思い当たる事無いか!?」
俺達は最後の頼みの綱としてイッセーを頼る!
今知ればなんとか対策やら何やらをできる事案かもしれない!
「あ~ほら、授業参観だろ、たぶん」
「イッセー君、正解!」
『…………』
イッセーの苦笑いと兄貴の満面の笑顔を見て、俺達はその場に崩れ落ちてしまった。


ああ、明日夏と千秋が絶望に崩れ落ちてしまった。
まあ、無理も無いか。
去年までの授業参観はそれはホントにもう冬夜さんと千春さんのテンションが上がりまくりで、明日夏は終始頭を抱えてたな。
放課後に合流した千秋も全身を真っ赤にしてたっけ。
まあ、二人とも冬夜さん達が来る事自体は嫌じゃないし、むしろ嬉しいんみたいなんだけどな。
「……二人とも、心中は非常に察するわ」
「……ええ。非常によく分かります」
あれ、なんか部長と会長が二人を慰めてる。
そんな奇妙な光景を見た後、ふと木場の方を見てみる。
何やら神妙な顔をしていた。
よし!
明日夏と千秋の事は部長と会長に任せ、俺は木場の下へと歩み始める。


「……終わった…」
そう呟いた後、僕はバルパー・ガリレイの遺体を見る。
「……いや、あの男の研究を引き継いだ者がいる。まだ、僕の戦いは…」
「やったじゃねえか、イケメン!」
「イッセー君」
「へー、それが聖魔剣かぁ。綺麗なもんだなぁ」
イッセー君が興味深そうに僕の持つ剣を覗き込む。
「……イッセー君、僕は…」
「ま、細かい事は言いっこ無しだ」
僕の言葉を遮り、イッセー君は笑顔で口にする。
「とりあえず、一旦終了って事で良いだろ?聖剣もお前の同士の事もさ。ああ、なんかいろんな事がありすぎてさ、今は考えるのもメンドクセーや」
イッセー君はやりきったかの様に身体を伸ばしていた。
「木場さん」
今度はアーシアさんが話し掛けてきた。
「また、一緒に部活できますよね?」
「アーシアさん…」
神の不在を知り、とても辛いはずなのに、それでも僕の事を心配してくれていた。
「傷は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」
彼女に安心させる様に言う。
「祐斗」
「部長」
「よく帰ってきてくれたわ。それに禁手(バランス・ブレイカー)だなんて、主として誇らしい限りよ」
「………」
僕は部長に頭を垂れる。
「部長、僕は部員のみんなを…何よりも一度命を救ってくれた貴女を裏切ってしまいました!お詫びする言葉も見つかりません…」
「でも、貴方は帰ってきてくれた。それだけで十分」
「……っ…」
「みんなの想いを無駄にしてしまっては駄目よ」
僕は再び頭を垂れる!
「部長!僕は改めて誓います!僕、木場祐斗は眷属、騎士(ナイト)として、貴女と仲間を終生お守りします!」
「ありがとう、祐斗」
頭を垂れる僕を部長が優しく抱き締めてくれた。
「コラッ!部長から離れろ、イケメン!」
「イッセー君!?」
「俺だって兵士(ポーン)じゃなくて、騎士(ナイト)になって、部長を守りたかったんだぞ!」
イッセー君は怒り顔から一転して笑顔で告げる。
「でも、お前以外に部長の騎士(ナイト)が務まる奴なんていねえんだ。責任持ちやがれ」
「………」
とたんにイッセー君は残念そうな顔をする。
「……はぁ、それにしても、部長の乳首を吸えるチャンスを逃した事がつくづくぅ…」
ははは、本当に残念そうにしていた。
「さて、祐斗」
「はい?」
部長の方に振り替えると、部長の手が紅いオーラで包まれていた!?
「あ、あれってもしかして!?」
どうやら、イッセー君は何か知っているみたいだけど、とにかく身の危険が迫っていると言う事だけは分かってしまった!?
「勝手な事をした罰よ。お尻叩き千回ね♪」
「ええェッ!?」
「あははは!こりゃ良いや!頑張って耐えろイケメン♪」
「イ、イッセー君!?」
「あははは!」
その後、僕は部長にお尻を叩かれ、イッセー君には終始爆笑された。


「あ~、滅茶苦茶熱かっだ~。たくっ、自分だけ安全な場所で傍観とは、良い身分だな」
「私だって痛かったんですよ。まあ、火達磨にされた貴方に比べればマシなのは確かですね。ですが、貴重な現時点での最高傑作を全部失ってしまったんですよ。研究者としては手酷い痛手ですよ」
「どうせ、さらに凄いのを作れる様になれば、あれだって他の死人どもと同じ扱いになるんだろ?」
「苦労して手を加えたのですから、そこまで雑な扱いはしませんよ」
「ま、俺にとっちゃ、どうでも良い事だけどな」
「やれやれ。ところでこれからどうするんですか?」
「そう言うお前はどうするんだ?」
「しばらくは引き込もってます。今回の事で協会(ギルド)にはさらに鋭く睨まれたでしょうし、三大勢力にも目をつけられたかもしれませんし」
「あっそ。ま、俺はその辺をぶらぶらするよ」
「では、ここでお別れですね。それに、これ以上貴方と仲良くなると、貴方の殺したい人ランキングの上位になってしまいそうですしね」
「それは残念だなぁ。個人的にはもっと仲良くなってもよかったんだがなぁ♪」
「ふふ、ではまた、縁がありましたら」
「あばよ~」


「やあ、赤龍帝」
「邪魔させてもらっている」
「ゼノヴィア!?それにアルミヤさんも!?」
放課後、部室に顔を出すと、学園の制服を着たゼノヴィアとローブを羽織ったアルミヤさんがいた。
「なんで二人がここに!?」
イッセーの疑問も尤もだろうな。
「私に関しては事後報告だ。ゼノヴィアは…」
「彼女は新しくグレモリー眷属の騎士(ナイト)になったのよ」
ゼノヴィアは悪魔の翼を出し、すぐに引っ込めてしまった。
『ええぇぇェェッ!?!?』
部長の告げた事と今の光景にイッセー、アーシア、鶇、燕が驚愕していた。
「神がいないと知ってしまったんでね。破れかぶれで頼み込んだんだ」
「……頼み込んだんだって…」
「……しかも、破れかぶれかよ…」
「ふふふ、デュランダル使いが加わったのは頼もしいわ。これで祐斗との騎士(ナイト)両翼が完成したわね♪」
「今日からこの学園の二年に編入させてもらった。よろしくね、イッセー君♪」
「真顔でかわいい声を出すな!」
「……イリナの真似をしたのだが、なかなかうまくいかないものだな…」
「……と言うか、お前はそれで良いのか?」
「神がいない以上、もはや私の人生は破綻したに等しいからな。だが、敵だった悪魔に降ると言うのはどうなのだろうか?いくら魔王の妹だとは言え、私の判断に間違いは無かったのか?お教えください、主よ!…あうっ!?…うぅぅ…」
ゼノヴィアが頭を抱えて踞る。
「……どかで見た光景です」
「……やれやれ…」
アルミヤさんは額に手を当てて嘆息する。
「そう言えば、他のメンツはどうしたんだ、ゼノヴィア?」
俺の質問にアルミヤさんが答える。
「……三人はエクスカリバーの核を持たせて先に帰還させた。……何より、今のゼノヴィアと三人を会わせるのは…」
「いろいろと問題がある訳か」
「まあ、悪魔になっちまった訳だからな」
「それもあるが、何よりよ神の不在を知ってしまっている事がだ。三人は負傷してあの場にいなかった訳だしな」
「……ライニーやユウナはともかく、イリナは私以上に信仰深い。神の不在を知れば、心の均衡がどうなるか…要するに私はもっとも知ってはいけない真実を知ってしまった厄介者…異端の徒になってしまったのさ」
「あれ、だとすると、アルミヤさんも…」
「いや、今日知った事だが、アルさんは数少ない知らされている者だったようだ」
なるほど、だからあの時、アーシアやゼノヴィア程動揺していなかった訳か。
「あんたが派遣された理由はお目付け役だった訳か?相手は堕天使の幹部のコカビエル。神の不在を知る者。何かの拍子で予期せず神の不在を知った時、知った者を排除する為の?」
「……否定はしない」
「……まさか、ゼノヴィアを!?」
「安心しろ、兵藤一誠。彼女は今はグレモリー眷属の一人、今回の事件ではこちらから一方的な不干渉を提示した手前、悪魔側には手は出さん」
「そうか…」
それを聞き、イッセーはホッと胸を撫で下ろす。
「さて、そろそろ失礼させてもらう」
アルミヤさんは立ち上がり、部室から退室しようとドアに近付き、ふと足を止める。
「まあなんだ、ゼノヴィア。悪魔になってしまった以上はもう後悔は後の祭りだ。なら、後悔の無い様に今の人生…いや、悪魔生を充実に謳歌しろ。なに、これから体験する事はなにもかも新鮮なものである確実なはずだ。彼女には私の方で言いくるめておく」
そう言い、今度こそ退室していった。
一方のゼノヴィアはどこかバツの悪そうな顔をしていた。
「ゼノヴィア、彼女って?」
「ああ、いろいろと世話になった人の事さ。……私が悪魔になってしまった事を聞いたら、驚くだろうな…」
そう言った後、ゼノヴィアはアーシアの方に向き直る。
「君に謝ろう、アーシア・アルジェント」
「え!?」
「主がいないのなら、救いも愛も無かった訳だからね。すまなかった!」
ゼノヴィアは頭を下げる。
「君の気が済むのなら、殴ってくれてもかまわない」
「そ、そんな!」
「尊敬されるべき聖剣使いから禁忌を犯した異端の徒。私を見る目が豹変した彼らのあの態度が忘れられない。きっと、君も同じ想いを…」
「ゼノヴィアさん」
アーシアがゼノヴィアの言葉を遮る。
「私はこの生活に満足しています。今は悪魔ですけど、大切な人に大切な方々に出会えたのですから、本当に幸せなんです」
「……ふふ、そうか。それと、君に頼みがあるんだが」
「私に?」
「今度、私に学園を案内してくれるかい?」
「はい!」
ゼノヴィアは今度は木場の方を向く。
「我が聖剣デュランダルに賭けて、そちらの聖魔剣使いとも再び手合わせを願いたいものだね」
「望むところだよ」
イッセーが俺にだけ聞こえる様に話し掛けてくる。
「なんか、よくつかめないけど、悪い奴じゃないよな」
「そうだな」
俺もイッセーにだけ聞こえる様に応じる。
部室内の雰囲気が良くなったところで、俺達の前に紅茶が出された。
「ふふ、仲良くなれそうな仲間が増えた事だし、親睦を深める為にお茶会にしようか♪」
「ふふ、そうね」
「サンキュー、兄貴」
「ありがとうございます、冬夜さん」
「あらあら、良い香りですわ」
みんな、それぞれの手にカップを持ち、香りを楽しみながら口を付けようと…。
『ん?』
したところで、みんな固まる。
って言うか…。
「なに、ナチュラルに部室にいて茶ぁ出してんだ!?てか、いつからいた、兄貴!?」
全員の視線が兄貴に集中する。
「わりと最初から」
……まったく気付かなかった…。
「まあ、あのコカビエル相手にあれだけの戦いができた程だ、この程度は造作も無いんだろう」
ゼノヴィアはそれ程驚きもせずそう言い、紅茶に口を付ける。
……結構図太いな、お前…。
「む、美味い!」
ゼノヴィアの言葉を皮切りに、俺やイッセー達幼馴染み組以外のみんなが紅茶に口を付ける。
「あら、本当ね」
「あらあらうふふ、本当ですわね」
「美味しいです!」
「これはなかなか!」
「……美味しいです」
部員のみんなの口から好評が出たところで、俺達もカップに口を付ける。
うん、相変わらず美味い。
「お茶菓子もあるよ♪」
そう言い、手作りと思われるクッキーとパウンドケーキを乗せた皿を出す。
「……いただきます!」
塔城が真っ先に菓子を手に取り、咀嚼する。
「……これも美味しいです!」
塔城の言葉を皮切りに他の部員達も菓子を手に取る。
昔からその味を味わってきた俺達はその光景を微笑ましく眺め、みんなと同じ様に菓子を手に取る。
ま、兄貴の周りを驚かすサプライズや悪戯はいつもの事だし、それをいちいちツッコんでも疲れるだけだ。
このお茶会を存分に楽しむとするか。
……どうせ後から地獄(授業参観)がやってくるんだからな…。  
 

 
後書き
ふう、ようやく第三章終了です。 
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