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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-8 74層攻略
  Story8-10 キリトvsヒースクリフ

第3者side


数時間後、帰って来たアスナとキリトの言葉を聞いて一気に場の雰囲気が一気に変わった。

「…………お前はバカか?」

「なっ!バカぁ!?」

「だってそうだろ。

何で、説得に行くって言ってて、こんな事になってるんだ?

昨日今日で色々とあったのに、追加で火に油ドポーンって盛大に注いでどうするんだ」

キリトはヒースクリフとのデュエルを受けて立ってしまった。

ここから出ていく時は説得に行くといっていたが…………

「もうっ!皆して緊張感無いんだからっ!今はそれどころじゃないよ!!これじゃ、私がお休みするどころじゃないじゃないっ!!」

アスナは、ヒースクリフの案にのったキリトの安易な決断に怒っていた。

「団長の『アスナ君が欲しければ剣、二刀流で奪いたまえ』の言葉に、キリト君も『良いでしょう。剣で語れと言うのならば、デュエルで決着を』でしょ?


しょうがないよー……場合が場合だし、キリト君もアスナのことは気にしてるんだし、ね?


て言うかー、そう言ってるってことはー、嬉しいんでしょ、アスナ?

ほっぺ赤くなってるよー」

「あぅ…………もう…………」

そんな女性陣の2人の事は露知らず。

男性陣の2人は、逆にやや表情が真剣味を帯びていた。

「で、どうなんだ?あの男とデュエルやる以上は、勝算はあるのか?」

「どうだろうな。ヒースクリフのスキル、神聖剣は何よりも防御の力が圧倒的だ。同じ団員で副団長のアスナもそのHPがイエローゾーンまで下がったのを見たこと無いってさ」

これまでの幾重のBoss戦でキリト自身もヒースクリフを間近で見た事はあるが、その性能は嘗て無いほどのものだと記憶している。


「まぁ、見てろって。簡単に負ける気は無い」

キリトはニヤリと笑っていた。
その顔には後悔も有るようだが、自信も遥かに持っていた。

「アスナの為にも、だろ?」

「ッッ!!」

キリトはシャオンのその言葉に動揺し、何も言わずに、顔を背けた。






シャオンは思考を戻して考える。

キリトとヒースクリフ、その戦いを考える。

反応速度の領域においてキリトの右に出るものは無いだろう。
その反応速度で何度も修羅場をくぐり抜けて来た。

ゲームのアシストに頼ってない通常攻撃もそう。あのクラディール戦で見せた武器破壊もそうだ。



不気味な相手だが、決して勝てない訳ではない。


そして、二刀流の破壊力においてもそうだと思える。




だが、勝てないとは言えなくとも、ヒースクリフのあの神聖剣は鉄壁の防御を誇る。

何よりも強大なのがあの堅牢な盾だ。
剣が神聖剣なら盾は神の盾といった所だろう。

あらゆる攻撃を受け止め、ある時は受け流す為、どんな攻撃も、ヒースクリフ本体まで届かない。


だから、盾をどう突破するかが、攻略の鍵だ。

「結果は明日になれば解るか」

そこにフローラが来た。

「どうしたの?」

「何でもない。

明日のことを考えたら、な?」


「そうだね~。


キリト君とシャオン君がああしてくれなかったら、もっともっと、犠牲者が出てたって思うの。後で後悔するくらいなら行動するでしょ?」


「ああ、オレも今も後悔はして無い」

「じゃあ…………明日は、キリト君を応援しないとね?アスナとキリト君がくっつくチャンスなんだから」

「そうだな。



そう言えば、仮にキリトが負けても血盟騎士団に入るだけだったよな?なら、どちらの結果でも同じなんじゃないか?」

フローラは目をぱちくりさせ、その言葉を少し考えたあと

「あっ、それもそうだね?じゃあ、後で危なくなったら早めに降参するように言っておこうかな?」

「アイツが勝負を投げるとは思えないし、それに簡単には負けないさ。

俺のライバルだからな?」
















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















第75層・コリニア 転移門前


75層の主街区は古代のローマ風の作り。
何よりも目に付くのが、この75層の中心だとも言える巨大な建造物のコロシアムだ。




その75層では、既に多くの剣士や商人プレイヤーが乗り込んできている。


大変な活気を呈しているこの場所ではこのアインクラッド一大イベントが行われようとしていたのだ。
ここ第75層では、これまでとは違った特徴がある。

コロシアムで、キリトとヒースクリフはデュエルするのだ。




「火噴きコーン!!10コル!!さ~~買った買った!」

「黒エールも!キンキンに冷えてるよ~~!!」


コロシアムの入り口。
転移門の前が直ぐ入り口だから、もう直ぐに解る。

見渡す限り人ばかりたった。


そして、その中心にさっきの台詞をわめき立てる商人プレイヤーの露店がずらりと並んでいて、長蛇の列をなしているんだ。

「ああ、良かった。出るのが俺じゃなくて」


「あはは…………でも、ほんとすごいね~。あっ、あのチケット売ってるのって…………」

フローラは、露店の長蛇の列の間から縫って出てくるプレイヤーに目が留まった。

向こうもこっちに気がついたようで近づいてきた。

「いや~~ 久しぶりですフローラはん!ほんまキリトはんには頭上がらんで~」

挨拶も手短に、陽気な声を上げながらそう言う。

「あはは…………これは、ダイゼンさんの仕業でしたか~」

「仕業って、そないなことあらへんで?なんせウチの団長とキリトはんやからな~。ほっといてもこうなるって!

次はシャオンはんもやってくれはると更に助かりますなぁ!」


「誰がやるか」

ここでシャオンは少なからずキリトに同情したのだった。

――自分で注いだ油だ…………ま、頑張れ















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















第75層・コロシアム内


シャオンたちはダイゼンがキリトの控え室まで案内した。


控え室は闘技場に面した小さな部屋だった。

「ここまでとはな…………」

コロシアムに面しているとは言え、歓声がうねりながらここまで届いてきている。

「だね…………」

控え室の扉越しに声は聞こえてくる。

『たとえワンヒット勝負でも強攻撃をクリティカルでもらうと危ないんだからね? 危険だと思ったら降参するのよ!』

外で聞き耳を立て続けるわけにもいかないので中へと入っていった。

「そうだよ!キリト君!無茶したらもれなく2つビンタが飛ぶからね!」

「まぁ、気張らずに頑張れよ」

「あっ……2人とも!」

アスナは気がついたようで、こちらに振り向いて手を上げた。

「ったく…………2人して……だから俺よりヒースクリフの心配をしろよ」

苦笑いしながらそう答えるキリト。
やがて、歓声に混じって闘技場の方から試合開始を告げるアナウンスが響いてきた。

それを聞いたキリトはゆっくりとした動きで立ち上がる。

背中に交互して吊った二本の剣を同時に少し抜き、音を立てて鞘に収めると同時に歩き出した。


目の前、右側にアスナ。左側にフローラがいて、最後にシャオンがいる。

控え室の扉はもう開かれており、そこから四角く光が漏れてきている。


それはまるで光への入り口。先にあるのは勝利か敗北かは判らない。


キリトが扉に近づいた時。

シャオンはキリトに向けて拳を突き出した。
キリトもそれに答えるように拳を挙げ、軽くあわせていた。


「俺のモットー全力全開。今回は譲ってやる。

ひとっ走りでもふたっ走りでもしてこい」

「ああ」

シャオンからの激励を受けたキリトは、その光の中へと入っていった。














観客席はぎっしりと埋っていた。
それは軽く千人はいるのではないだろうか。その最前列にはエギルやクラインと言った顔見知りも見えた。

「さて…………」

シャオンは、キリトが出て行った扉にもたりかかりながら両雄を眺めた。

「どう思う?」

フローラも隣でキリトを見ながらそう聞く。

「レベル、それにステータス。
同じ攻略組だ。殆ど五分だろう。能力はまあ、知っての通りだ。


後は、ゲームセンス、間合い取りの上手さ、当て感、場数。

何処をとってもキリトが劣っているとは思えない。だから…………」

「団長のスキルとキリト君のスキル。それが明暗を分けるって事?」

直ぐ隣で2人の会話を聞いていたアスナがそう聞いた。

「だろうな」

普通のスキルならば、あまりにもレベルが離れてさえいなければどうとでも対処は出来る。

だが、キリトとヒースクリフ、もちろんシャオンのものもだが、それは違う。
この世界で2つとないスキルを持っているのだ。

全てが同等とくれば、手持ちの武器が明暗を分けてもおかしくない。

「結果は直ぐにわかるだろ。勝負が長引く事は無いな」


中央の巨大な電工掲示板のような数字カウンターが0になった瞬間。



弾かれた様にキリトが真っ先に動いた。

目にも止まらぬ速度、姿勢を低くしさながら得物を刈る獣の様に飛び出したのだ。
あの起動から推察するにキリトが選択したそれは二刀流共通突撃技〔ダブルサーキュラー〕


その素早い速度のままにヒースクリフに切り込むが、それを読んでいたヒースクリフは弾き返していた。












デュエルはまだまだ序の口。
ヒースクリフは、その巨大な盾に隠れ突進を始めた。
身体の8割がたが見えないその姿。

手に持っている剣も見えない。

攻撃に転じるその瞬間を見極めなければあっさりと喰らってしまうだろう。

正面からの攻撃も8割以上は防がれる。

よって、次にキリトがとった行動は右側に素早く回避。


盾の方向へと回り込めば正面からでは解らなかった初期軌道がわかり、攻撃に対処する余裕も生まれる…………はずだった。

「!」

シャオンも思わず目を見開く。
ヒースクリフは盾自体を水平に構えるとそのままとがった先端で突き攻撃を放っていたのだ。
本来盾の役目は防御だ。
それは今までの片手剣スキルでもそれ以外では無かった。


ヒースクリフは盾を武器として扱っているのだ。
キリトは警戒していなかった盾での殴り攻撃を喰らう寸前で後方へと飛んだのだ。

大袈裟に飛距離はあるがHPも殆ど減らず、そして無事に着地していた。

だが、まさかの攻撃手段に動揺は隠せられない様だ。

「あの盾に攻撃判定があるのか」

「まるで二刀流だね」

これではキリトの左右二択の攻撃が出来ると言うアドバンテージもない。





その後も一進一退の攻防が続く。
ヒースクリフは突きを連続。
キリトも片手の剣は防御に使い、残った剣で片手剣スキル突進技〔ヴォーパル・ストライク〕を放ち応戦。


キリトの一撃は重く盾である程度は防げるが、その衝撃までは防げないようだ。
ヒースクリフは跳ね飛ばされており、HPも勝敗を決するほどではないが減少していた。



互いに距離をとり、遠目には解らないが2人ともが何かを言っているようだ。



その次の瞬間には2人ほぼ同時に大地を蹴り即座に互いの距離をつめあっていた。

キリトは超高速での連続技の応酬。それにヒースクリフは付き合っていた。


互いが小攻撃を受けHPのバーを減らしていたが、決定打は入れられていない。
命中しなくともHPが半分を切ればその時点で勝者は決する。










そこで冷静に捌いていたヒースクリフの表情が歪んだ。


まだHPも勝負を決するほどまで減少していないのにも関わらず不自然にゆがめていた。


理由があるとすれば、不敗神話の中で一際輝きを放っているHPがイエローゾーン以下になった事が無いと言うのが覆されるかもしれないと言う事だけだ。


それはキリトも感じていたようだ。


キリトはその歪む表情をチャンスだと読み取ったのか勝負所だと判断し、グリームアイズに使ったスキル、撃二刀流スキル16連撃技〔スターバースト・ストリーム〕
を撃ちはなった。


全ての防御を捨て、特攻ともいわん速度で打ち込む左右の連撃。







キリトの剣閃はヒースクリフの盾に襲い掛かり、上下左右縦横無尽に襲い掛かる。

僅かずつだがヒースクリフの反応が遅れているようだ。


――抜けたっ!

――抜ける!!


キリトとシャオンはほぼ同時にそう考えた。

キリトの最後の一撃がガードをついに超える事を確信した。
盾が右に振れたその瞬間を逃さず、左から剣を振り下ろす。

その一撃が当たれば確実にHPの半分を切り勝敗が決するだろう。



シャオンも、キリトの勝利を疑わなかった。

が、この時ありえない事が起きた。

「!?」

なぜなら、世界がブレたからだ。


それは、他者にまで見えるほどに明らかにブレた。


そのありえない事、キリトの速度はそのままだった。

だが、まるで、その速度を無理やり止めた。




キリトは、世界は止まっている筈なのに、ヒースクリフは動ける。
止まっていると感じているのに、その中で1人だけが動けていた。





それはまるで、時が止まった世界。

それなのにあの男だけが動ける。




本当に一瞬。刹那の時間。
時の矛盾を感じながらも、勝負は決した。
















Story8-9 END 
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