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とある異世界の交差物語(クロスオーバー)

作者:鉄龍王
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第13話 喰らい合う人外たち

 
前書き
やっとこの事件のお話を終わらせることが出来ました。そして最後にオリキャラが1人登場します。それではどうぞ 

 
千鶴たちの危機に駆け付けたの土方と風間だけでは無かった。上条と土御門、黄泉川が率いる警備員(アンチスキル)の部隊だった

「御坂!雪村!家長!」
上条は目の前の現状に戦慄を覚えた。カナは斬られた故に血の海に沈み、美琴は大きな涙の粒をポロポロ流し、千鶴にいたっては左腕を怪我したためか血の色に染まっていた。上条は涙を流している美琴の元へ駆け付けた。

「おい御坂!大丈夫か!?」

いつもなら『アンタ』と呼んでいたが、この時美琴は無意識のうちに上条の事をこう呼んだ

「と…とうま…カナが…カナが……」

美琴は涙を流しながら上条に強く抱き付いた。対して上条は始めは顔を赤くし動転したが、涙を流す彼女の姿を見て上条は美琴をやさしく抱きしめた

そんな上条に声をかける男が一人…

「カミやん…折角イチャつきたい気持ちは分かるが、時と場所を考えてほしいにゃー…」

「「!!」」

土御門の白けたと言いたい様な冷めた目線を送られ、さすがの2人も顔を赤くしながら即座に離れた。冷静になった所で意外な人物が声を上げた

「あの~……言いたいことは色々あるけどその前に私を早く病院に連れて行ってくれない?」

弱々しく抗議の声を上げるのは先程刃衛に斬られたカナだった

「カナ!?」

気を動転しているためか美琴はカナに強く抱きしめた

「カナあああああああぁぁぁぁっ!!よかったよおおおおおおぉぉぉぉっ!!」

「うん……心配してくれるのは嬉しいけど、美琴ちゃん痛い。誰か手当てして…さすがに死んじゃう…」

顔色が青くなっているにも関わらず、どこか余裕を見せるカナだったが、確かに彼女の傷を手当てし、病院に連れて行かなくては彼女の身が危ない状況だ。そこへ千鶴か買って出た。

「私がカナちゃんの手当てをします!私はこれでも医者の娘です!!」

そう言って千鶴はカナの傷の応急処置を始めた。その手腕は“すごい”の一言しか皆思い浮かばなかった。その作業はあっと言う間に斬り裂かれたカナの傷を細い針と糸で刺す度の痛みが出ないよう縫い、常に持ち歩いていたのだろうカバンの中に入っていた包帯を取り出し、テーピングを済ませた。上条たち学生組はおろか警備委員(アンチスキル)の大人組すら目を見開き、舌を巻くほどだった。しかし学生組と大人組の驚きの種類は違った。学生組は土御門を除いて単に千鶴の作業の速さに驚いただけ。対して大人組…特に黄泉川の驚きとはカナが流した血を見ても全く気にせずに応急処置を始め、作業を続けたこと。

これはつまり…






この少女は血が流れる戦場を経験しているという意味になる








そうこうしている内にカナの応急処置が終わり、千鶴はやっと手を休めた

「ふう…これでカナちゃんの応急処置は終わりました。後は彼女を病院までお願いします」

そしてカナを病院へ連れて行く者は警備委員(アンチスキル)の1人…黄泉川愛穂(よみかわ あいほ)が提案した

「それなら私らが連れて行くじゃん。だからお前らも…」

黄泉川は“ここから先は更に血が流れる”…そう感じ取っているために学生…子供たちを安全な場所へ避難させたいのだ。しかし千鶴は黄泉川の案に首を縦に振らなかった

「私はここに残ります」

千鶴の…彼女のこの言葉には警備委員(アンチスキル)だけではなく、上条や美琴も驚きを隠せなかった

「何言ってるんだ雪村!!今ここでお前が出来る事なんて…!」

「そうです!ここは私と当麻に任せて千鶴さんは…!」

上条と美琴が千鶴を何とか説得しようとするが千鶴は静かに微笑んで断った

「今この場に私以外の医者がいません。鵜堂さんとの戦いでケガ人、下手をすると死者が出る可能性もあります。だからこそ、私は此処に居なくてはいけません」

警備委員(アンチスキル)たちは千鶴の目にある“モノ”が宿っていることを感じた。
彼女の目には途轍もなく重い覚悟が宿っている。決死の覚悟と生きる覚悟が宿っている

しかし此処で警備委員(アンチスキル)の1人であり、黄泉川の後輩に当たる鉄装綴里(てっそう つづり)が反論する

「だからって!貴女はまだ子供です!此処は私たち警備委員(アンチスキル)に任せて、貴女は早く安全な所に…」

しかし鉄装の説得は千鶴には効かなかった。それどころか彼女の表情は先程まで穏やかな優しい笑顔だったが今はまるで邪魔をするなと言わんばかりの鬼の形相に変わっていた

「私は土方さんの小姓として仕えて来ました!そしてあの人の傍に居る!それは今も変わりません!!」

「!!」

彼女の迫力に鉄装はただ黙るしかなかった。千鶴は更にこう言い放った

「私はあの人にこう言われました。『お前はこれからも傍に居ろ。逃げようとしたって離さねぇから、覚悟しとけ』と…私が離れる時は、私が死ぬときだけ!だから…これだけは絶対に譲れません!」

千鶴の覚悟に鉄装だけではなく、黄泉川も圧倒された。今時の少女とは思えない覚悟だと思うほどだった

「お前、雪村とか言ったじゃん?なんで其処まで土方先生(あのひと)にこだわるじゃん?」

黄泉川の質問に千鶴はいつもの優しい笑顔に戻り、何の迷いもなく言い放った

「土方さんは…私の愛する人だからです」

その言葉に警備委員(アンチスキル)だけではなく、上条も美琴も口をポカンと開いてしばらく塞がらなかった。しかしその沈黙を破ったのは黄泉川だった

「……ぷっ…………あっはっはっはっはっはっは!!いいじゃん!アンタのその一言には気に入った!わかった。此処はアンタに任せる!」

「先輩!?」

「そのかわり、死人を1人も出さないのが条件だ……それでいいじゃん?」

「はい!その約束、必ず守ります!これでも私は江戸の女ですから!!」

「その意気やよし!」

こうしてカナは刃衛の刃を受けた為、戦線離脱。美琴は残ると主張したが、上条が“家長の傍に居ろ”という言葉に説得され、彼女も離脱した。そして残るのは警備委員(アンチスキル)数名と千鶴と上条そして…刃衛と対峙する土方と風間のみとなった



そんな土方と刃衛だが、かつての新選組(なかま)同士の会話のはずだが土方と刃衛の間に流れる空気は親しみや懐かしさ…そんなものは存在せず、まるで隙があらば斬り捨てんとする殺し合いの空気だった


「久しぶりじゃねえか、鵜堂…まさかテメェまでこの世界に居るとは思わなかったぜ?」

「うふふ。俺としてはアンタが生きていたことに驚いたものだぜ?風の噂ではアンタは函館戦争で戦死したって聞いていたからな」

「まあ、俺も函館戦争(あのたたかい)で死を覚悟していたが、どうやら俺は悪運が強かったらしい。おかげで俺はあいつと……千鶴と生きることができた」

「ほう、これはまた意外なものが見れたな…今のアンタの表情(ツラ)は“鬼”と呼ばれた幕末()の頃からは想像できないくらい穏やかになってるじゃないか…しかし分からんな。いくら雪村がすぐにアンタに連絡を入れたところでこんなに速く辿り着くはずが無い。いったいどうやって?」

「はっ…鵜堂…テメェにしては下調べがなってねぇな。この世界の携帯には“じーぴーえす”ってモンがあるんだ。それを辿っただけだよ」

「うふふ…なるほど。そこは確かに俺の調べ不足だったな」

もう話すことは無いという意味なのか土方の目はより一層鋭くなり、刃衛に1つの質問をぶつけた

「鵜堂…テメェ、何を企んでやがる」

「うふふ。副長…アンタともあろう方が何を寝ぼけた事を仰る。俺が新選組に身を置いていたのはただ一つ……生と死の(はざま)で圧縮された一時を!最高密度の生死の…命の一瞬を愉しみたい!!ただそれだけの為に俺は新選組に身を置いた!」

そう言った刃衛は両腕に差した刃を振り上げ、土方に踊りかかった。千鶴たちと戦った時とは比べ物にならない位に速い速度だった

「だから愉しませてくれ副長!!」

「断るに決まってるだろうが!!」

土方は刃衛が振り下ろした刃を刀で受け止め、もう片方の刃を風間が受け止めた

「何のマネだ風間!」

「フンっその男の話に聞き逃せない単語が出たからな。俺もそいつに聞かねばならない…狂犬、貴様が言った“あの女”とは誰のことなのか…知ってる事を洗いざらい吐いてもらうぞ!!」

「!!」

風間の横薙ぎをギリギリでかわしながら後ろへ高く飛び、距離をとる刃衛の表情(カオイロ)に焦りは全く無く、相変わらずの不気味な笑みを浮かべていた

「うふふ。相変わらずアンタの剣術はなってないがその細腕からは考えられない怪力だな」

「そういう貴様は相変わらずのヘンタイぶりだな…」

「それに関しては俺も同意だ風間。コイツは昔から斬る感触と斬られる感触を好む男だったからな」


皮肉を叩きながら風間と土方の二人は油断無く構えた。対する刃衛は再び不気味な笑みを浮かべながら2人の皮肉を軽く受け流し、剣を構えた

「うふふ…平和のぬるま湯でボケたかと思えば意外とやるじゃないか副長」

「言ってろ鵜堂。生憎今の俺は警備委員(アンチスキル)の仕事で忙しくてな。性質の悪いスキルアウト(くそ餓鬼共)の鎮圧を任されているんだよ!」

そう言うと土方は一気に刃衛の懐まで入り込み、斬り結んだ

「うふふ。副長…アンタの大胆さは相変わらずだがこの後はどうする?それだけじゃ俺を仕留められないのはわかってるだろ?ん~?」

余裕を見せる刃衛だったが土方の表情も余裕の色が濃かった

「鵜堂…久しぶりに会ったのに俺の戦い方を忘れたみたいだな?」

「なに?」

刃衛が疑問の顔をしているとその答えはすぐに出た

「おらぁっ!」

土方はなんの躊躇もなく刃衛の足払いをし、目を潰しにかかった。

「ぐぉっ!?」

流石の刃衛もこれには不意を衝かれ、バランスを崩した。そしてその隙を見逃す風間ではなかった

「フン!」

「がぁっ!!」

風間の一閃は刃衛の胸に一文字の傷を与え、大量の血が流れた。この血に刃衛は恐怖どころか歓喜に震える声を上げた

「うふふははははははははははははははははははははははははっ!!!これほど愉しい死合いは抜刀斎以来だ!もっと俺を愉しませてくれ副長!鬼の大将!」

「まだ来るか!!」

「ちっ!聞きたいことがあったがこれ以上は時間の無駄か」

捕獲が不可能と判断した土方と風間は刃衛を殺すつもりで構えた







だが次の瞬間








「そこまでだ刃衛……」





「「「!?」」」



突然の声に誰もが驚いたがより強く反応したのは土方と千鶴と風間だった。その場にいたもの全員が声がした方に視線を向けるとそこに居たのは土方たちを幕末の世界から現在の世界へと送った狐の面を被った赤髪の女だった。すると刃衛は水を差されたためか射殺すような視線を狐の面の女に送った


「なんのつもりだ?せっかく面白くなって来たというのに邪魔をするつもりか?」

対する狐の面の女もどこ吹く風という態度で答えた

「貴様こそ自分の雇い主の命令に背くつもりか?今回の命令は『土方歳三と風間千景の力量を調べろ』だったはずだぞ?私が近くで監視していたからヤツ等の力量はわかった。後は貴様の雇い主と我が主に報告するだけだ。さっさと引き上げるぞ」

「……ちっ!」

狐の面の女の命令に何故か従う刃衛はあっさりとその後に続いた。これに土方たちも黙って見逃すつもりは無かった

「待て貴様ら!一体何のつもりだ!?」

だが土方の言葉に狐の面の女は振り向くとこう答えた

「そう吠えるな土方歳三…今宵はここまでだ。いずれ面白い“宴”を開くつもりだ…それまで楽しみにしていろ」

「このまま黙って見逃すと思っているのか?」

刀を構えた風間が鋭い視線を送るが狐の面の女に全く効果は無かった

「自惚れるな地上鬼。貴様ごとき、2秒でその首を落とせるが…今はその命を受けていないのでな。今あるその命を大事にしておけ」


そのまま立ち去ろうとするが土方が声を上げた

「待て!貴様は一体何者だ!?」

「………」

黙っていた狐の面の女だったが、名を名乗った


「私はある御方に仕える側近頭。名を白夜…月野 白夜(つくの びゃくや)だ」

そう名乗った狐の面の女…月野白夜は刃衛と共に今度こそ完全に姿を消した


その場にいるのは警備委員(アンチスキル)数名と千鶴と上条、土方と風間のみ。結果は散々な物となった。警備委員(アンチスキル)の仲間数名は殺され、大事な情報を持っているはずの刃衛は逃げられた。土方は悔しさのあまり、拳を車にたたきつけた

「くそぉっ!」

ダンッと鈍い音が響きながら、この謎の事件は取りあえずの終結を迎えた。しかしこれで終わりじゃないとこの場にいた誰もが思った。この先何が待っているのかそれはまだ誰にも分からなかった 
 

 
後書き
これでこの事件は終了です。次回はカナの見舞いに“あの”少年が登場します。

次回『念動力者、主に会う』

次回もお楽しみに! 
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