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先輩の傷

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第六章

「先輩とこれからも一緒にいたいわ、登下校の間でも」
「そうよね、けれどね」
「それでもよね」
「先輩の失恋の話を聞いたら」
「先輩を傷つけるって思ったら」
「本当にどうしたらいいのかしら」
 迷っていることがだ、言葉に出ていた。
「一体」
「それはね」
「難しい問題だから」
「私達もね」
「どうかとは言ったけれど」
 それでもだというのだ。
「あんたの気持ちも考えると」
「どうしろとはね」
「言えないわね」
「だから私もね」
 由紀も言うのだった。
「悩んでいるのよ」
「そうよね、やっぱり」
「先輩のことを考えるとね」
「どうしてもそうなるわよね」
「引くべきか、このままでいくべきか」
「どっちかね」
「このままいたら先輩を傷つけていくわよね」
 まずはこちらの場合をだ、由紀は言った。
「やっぱり」
「それで急にいなくなってもね」 
 友人の一人が言って来た。
「失恋のことを知ったと思って」
「やっぱり傷つくわよね」
「だからこのことは難しい問題よ」
 それも非常に、というのだ。
「どうにもね」
「ううん、そうよね」
「正直言ってあんた本当に厄介な問題の中にいるわよ」
 このことは間違いないというのだ。
「どうにもね」
「じゃあどうしようかしら」
「そこはね」 
 本当にというのだ。
「あんた次第よ」
「私がどうするか」
「先輩は好きよね」
「だから毎日登下校一緒にしてるのよ」
 それ故にというのだ。
「私だってね」
「そうよね、やっぱり」
「けれど。先輩を傷つけるのなら」
「どっちでも傷つけかねないわね」
 このまま一緒に登下校を続けても急にそれを止めてもだ。
「やっぱりね」
「そう、どっちでもね」
「どうとも言えないわね」
「だからこのことは物凄く難しい問題よ」
「どうするのかよね」
「どっちにしてもね」
 慎を傷つけかねないというのだ。
「そこは本当に厄介よ」
「じゃあ」
 由紀は真剣に悩み考えた、そしてだった。
 その日もだった、下校の時は慎と一緒にいた。しかし彼を気遣ってそのうえでこれまで通りの態度を続けたのだった。
 何気なく、そしていつもと変わらない表情で。そうしてだった。
 その時は一緒にいた、そして次の日の登校時間も。そして友人達には迷いを残しながらも言うのだった。
「結局ね」
「そのままでいくことにしたのね」
「そうしたのね」
「どちらにしても先輩を傷つけかねないし」
 それに、と言うのだった。
「それに私もね」
「先輩と一緒にいたい」
「だからなのね」
「先輩が嫌って言ったら」
 その時はというのだ。
「私も止めるけれど」
「今はなのね」
「そのままでいくのね」
「そうするわ」
 こう友人達に言うのだった。 
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