| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

新説シンデレラ 

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「嫁いでもらいます、特に」
「私はですか」
「その顔立ちです」
 シンデレラの整っている顔を見ての言葉だ。
「そこに教育が加われば」
「それで、ですか」
「かなりの相手に嫁げますので」
「そしてそれがですか」
「我が家の中興になりますので」
「では」
「はい、教育を受けてもらいます」
 シンデレラも、というのだ。こう話してだった。
 実際にだ、三人の娘達への教育がはじまった、家庭教師を雇ったうえで。
 また夫人自らだ、娘達に言うのだった。
「貴族としての身だしなみをです」
「身に着けないとですね」
「いけないのですね」
「歩き方も物腰も」
 その両方が、というのだ。
「優雅に。気品を以て」
「何事もですか」
「食事作法も」
「そうです、全てです」
 まさにというのだ。
「貴族らしく、気品を持たないといけません」
「わかりました、では」
「そうしたこともですね」
「貴女達には身に着けてもらいます」
 勿論シンデレラにもだ、こう言ってだった。
 三人共厳しい教育を毎日受けた、そして。
 その中でだ、身なりはというと。
 随分と質素だった、その質素なまるで灰を被った様な服を見てだ。シンデレラは姉達も同じ服を着ているのを見て夫人に問うた。
「これもですか」
「そうです」
 夫人はシンデレラに毅然とした態度で答えた。
「優雅なドレスを着ることも重要ですが」
「それと共にですか」
「質素さを知ることもです」
「貴族には大事ですか」
「そうです、ですから貴女達はです」
「こうした質素な服を着て」
「家事もしてもらいます」
 それもだというのだ。
「そして使用人達のことも知るのです」
「これも教育なのですね」
「全ては家の為」
 男爵家の、というのだ。
「ですから」
「そうですか、わかりました」
「私は貴女達を区別しません」
「男爵家の娘だからですね」
「そうです、それなら同じです」
 実の子も継子もどちらもないというのだ。
「ではいいですね」
「わかりました、それでは」
 シンデレラは継母である夫人の言葉に頷きだ、その服で暮らし使用人の仕事もした。食事も質素なものが多く教育は厳しかった、だが。
 夫人はあくまで公平にだ、娘達を育てていた。それは全てだった。
「忘れてはならないことは」
「娘達はだね」
「そうです、この男爵家の娘なのです」
 それで、というのだ。夫である男爵に対しても。
「ならば同じです」
「だから公平に接しているんだね」
「娘が三人いるのなら」
「三人共なんだ」
「厳しく育て」
 そのうえで、というのだ。
「成長してもらいます」
「そして婿を取り嫁いでもらって」
「家の繁栄を担ってもらいます」
「そういうことなんだね」
「貴族の娘なら当然のことです」
 あくまでシビアな夫人だった、その言葉も。
「家の繁栄を支えるべきなのです」
「結婚で」
「貴族の婚姻は家と家の結びつきです」
「そういえば私達も」
「はい、私達も同じですね」
「貴女がご主人と死に別れて」
「あなたも奥様と死に別れ」
 二人共伴侶、即ちだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧