新説シンデレラ
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第一章
新説シンデレラ
トレメイン夫人はトレメイン家に先夫との間に生まれた二人の娘ドリゼラ、アナスタシアと共に後妻として入った、その時にトレメイン夫人という名前になった。
古い男爵家であり男爵は先妻との間に娘をもうけていた、その娘の名をシンデレラという。
夫人は自分の娘達とシンデレラ、継子となったその娘も見てだ、夫となった男爵にすぐにこう言った。
「娘が三人ですね」
「いや、子宝に恵まれたね」
「そうですね、しかし喜んでばかりもいられません」
夫人は男爵に厳しい声で言うのだった。
「娘だけですから」
「ああ、家のことが」
「これまでどうお考えだったのですか?」
夫人は夫に厳しい声で問うた。
「一体」
「いや、シンデレラに婿を取ってもらって」
「そのうえで、ですね」
「家を継いでもらおうと思ったけれど」
「左様ですか」
夫人は男爵との話の時に娘達を同席させていた、そこには当然シンデレラもいる。
ブロンドの豊かな髪に澄んだ青い目、白く細面の顔は彫があり見事なまでに整っている、スタイルもよく申し分のない感じだ。
そしてドリゼラを見る、大人びていてしっかりとした感じの外見だ。シンデレラ程ではないが整っている外見で先夫の血で髪は赤で目は鳶色だ。実際にしっかり者で特に金銭や交渉に強い。
次にアタスナシアだ、にこにことしていて丸い顔だ。茶色の髪に緑の目だ。こちらは夫人の血を受け継いでいる。ただ顔立ちは先夫のもので性格もそちら似で明るく賑やかだ。
その二人も見てだ、夫人は男爵に言った。
「貴方の血は受け継いでいませんが」
「それでもだね」
「シンデレラは一番末娘になりましたので」
ドリゼラが長姉、アナスタシアが次姉、そしてシンデレラが末妹という訳だ。
「婿はドリゼラに取ってもらいます」
「わかりました、お母様」
ドリゼラは母に確かな口調で答えた。
「そしてこの男爵家をですね」
「継いでもらいます」
「わかりました」
「そしてアナスタシアは」
次娘も見て言うのだった。
「外の家に嫁いでもらいます」
「外にですか」
「はい、既によい家を見付けていますので」
それで、というのだ。
「貴方にはその家に妻として入ってもらいます」
「わかりました、お母様」
アナスタシアは母に明るく笑って返した。
「その様に」
「ではお願いします」
「それでは」
まずは自分の本当の娘達に言った、そしてだった。
そのうえでだ、夫人は末娘となった継子に顔を向けた。そのうえで彼女に対してこう言ったのだった。
「シンデレラ、貴女は」
「はい、私は」
ここでだ、シンデレラは継母におずおずとして言った。
「修道院に入るのでしょうか」
「何故そう思うのですか?」
「私は末娘ですから」
だからだというのだ。
「もう嫁ぐ先も」
「誰がそう言いました」
厳しい声でだ、夫人はシンデレラに言った。
「貴女を修道院に入れるなぞと」
「違うのですか」
「ドリゼラとアナスタシアも同じですが」
二人の様にというのだった、夫人はここで。
「貴女にも家庭教師をつけ学問と教養を身に着けてもらいます」
「修道院で学ぶのではなく」
「修道院に入って何になりますか」
「シスターに」
「そしてその生涯を神に捧げるというのですね」
「そうではないのですか」
「違います、私は貴女に修道院に入ってもらうつもりはありません」
夫人はシンデレラにまたこう言った。
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