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アットゥン

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第三章

「そうなったよ」
「そうですか」
「まあ日本シリーズで会おうな」 
 その時はというのだ。
「野球はな」
「札幌ドームで」
 野球の話もした二人だった、そうしたことを話して。
 智樹は実際に真一の母が経営しているそのアイヌの雑貨店に来た、中に入ると木造りの雑貨や服が多くあった。
 その店の中、清潔でしかも商品が整然と揃えられているその店を見てだ。彼は案内してくれた真一に言った。
「いいお店ですね」
「そうだろ」
「はい、清潔な感じで」
「整理整頓も出来ててな」
「しかもですね」
 それに加えてと言う智樹だった。
「課長がお話してくれた通り」
「品が揃ってるだろ」
「はい、とても」
「これがだよ」
 それこそと言うのだった。
「お袋の店だよ」
「そうなんですね」
「まあ何か買ってくれ」
 笑ってだ、真一は自分の隣にいる智樹に言った。
「遠慮なくな」
「沢山ですね」
「そうさ、一つじゃなくてな」
「幾らでもですか」
「財布が許す限りそうしてくれよ」
「まあ程々にさせてもらいますね」
 智樹は少し苦笑いになって真一に返した。
「それは」
「何だよ、寂しい言葉だな」
「服も暖房も買って貯金が少ないんですよ」
「ああ、だからか」
「はい、ですから」
「そうか、なら仕方ないな」
 それならとだ、真一もその言葉に納得して返した。
「程々にしろよ」
「そうさせてもらいます」
 こうした話をしてだった、智樹は店の中の商品をじっくりと見回しだした。そして買うものを選んでいると。
 真一は店のカウンターのところの老婆、セーター等で厚着をしている老婆に対してこんなことを言っていた。
「あいつは?」
「由里かい?」
「ああ、何処だよ」
「今は買い出しだよ」
 それに出ているというのだ。
「お昼のね」
「それでいないのか」
「そうなんだよ」
「じゃあすぐに戻って来るな」
「ちょっとお昼のお弁当買いに行ってるだけだからね」
 それで、というのだ。
「すぐに戻るよ」
「わかったよ、それで親父は裏でか」
「色々やってるよ」
 店の雑事をというのだ。
「呼ぶかい?お父さん」
「いや、いいよ」
 父についてはだ、真一は笑って母に返した。
「別にさ」
「そうか、じゃあね」
「ああ、由里が戻って来たら」
 その時はとだ、真一は智樹を見て言った。
「俺の部下紹介するな」
「あのルパンみたいな兄さんだね」 
 智樹を見ての言葉だ、見れば実際に智樹はその怪盗に似ている。とはいっても初代ではなく三代目の方である。
「独特の感じだね」
「ルパンか、言われてみればな」
「似てるだろ」
「もみあげもあるしな」
 真一も納得した、母のその指摘に。
「似てるな」
「そうだよね」
「とにかくな、あいつとな」
「由里を会わせたいんだね」
「折角だからな」
 店に連れて来たからというのだ。 
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