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水車の側で

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第三章


第三章

「いいな、それで」
「了解です」
「それならここは」
「引かないでいきましょう」
 兵士達もやる気だった。勝っているだけに士気が高い。開戦当初は劣勢だった彼等もだ。今は違っていた。勝利は目前だったのだ。
 それでだ。彼等は確かな顔でだ。敵を待つのだった。
 そしてだ。遂に彼等が来たのだった。
「見えてきたな」
「はい、そうですね」
「まずは」
「狙撃用意」
 ピットは兵士達に命じた。
「狙撃兵、いいな」
「了解です」
「わかりました」
「敵はまだ気付いていないな」
「その様です」
 物見の兵が答えてきた。
「けれど警戒はしています」
「そうか」
「行進ではなく散開して周囲を見回しながら進んでいます」
「やっぱりドイツ軍だな」
 それを聞いてだ。ピットも敵を見た。するとだ。
 実際にだ。彼等は慎重に周りを見ながら進んでいた。銃を構えそのうえでだ。そこには寸分の隙も見られない。見事なまでにだ。
 それを見てだ。ピットはまた言った。
「これは容易な相手じゃないな」
「そうですね。本当に」
「それは」
「こんな時に空軍も戦車もないからな」
 ピットは言いながら舌打ちした。
「せめて装甲車でもあればな」
「楽なんですがね」
「一両でもあれば」
「全く。欲しい時にないな」
 また言うピットだった。舌打ちが続く。
「兵器はな」
「そうですね。確かに」
「それは言えますね」
 兵士達もだ。彼のその言葉に頷く。
「それで妙に邪魔になる時にあるんですよね」
「余計な時に」
「そういうものだな。しかし言っても仕方ない」
 ピットは愚痴を言うのを止めた。
「この戦いが終わったらな」
「はい、終わったら」
「その時は装甲車だけでなく戦車も頼むか」
「そうですね。それじゃあ」
「そうしますか」
 こんな話をしてだ。それからだった。
 まずはだ。狙撃兵達が構えだ。めぼしい敵兵に照準を合わせてだ。狙撃した。
 それで何人かが倒れた。だがそれによってだ。
 ドイツ軍の将兵達が一気に散開した。そしてだ。
 水車の方に向かってきた。今彼等がいる場所にだ。
 それを見てだ。ピットはまた言うのだった。
「来たな」
「はい、今の狙撃で気付きましたね」
「我々に」
「間違いなく」
 こうだ。誰もがそれを見た。
 そしてそのうえでだ。ピットはまた命令を下した。
「いいか、やるぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はだ。
 迫る敵兵に攻撃を開始した。敵兵も散開したうえで攻撃を仕掛けてきた。
 水車に次々と銃弾が当たる。物陰に隠れているのが幸いした。
 だがそれでもだ。攻撃をする時にだ。
 銃弾を受けてだ。倒れる兵達も出ていた。
「隊長、マックロード上等兵が倒れました!」
「怪我は?」
「右足を撃たれました」
 そこをだとだ。トランシーバーからの報告が述べていた。
 
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