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戦士達

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第三章


第三章

 伝令の兵はだ。今度は強い顔になってこう言うのだった。
「実はですね。私は本来は今日は後方の予定だったんですよ」
「それで何でだ?」
「何でここに来たんだ?」
「従弟が一人いました」
 言葉は既に過去形だった。
「ですがその従弟が」
「ああ、そういうことか」
「それでか」
 彼等もだ。事情を察した。それでそれぞれこう言ったのである。
「あんた、ここに来たのか」
「そうだったんだな」
「ずっとあそこにいさせたくないです」
 言いながらだ。伝令兵は深刻な顔になっていた。
「ですから。上官に志願して」
「わかった、それじゃあ一緒にな」
「一緒に従弟連れ戻そうな」
「そうしような」
「はい、それじゃあ行きましょう」
 彼等は豪雨の中塹壕を出てだ。そのうえで戦死して転がっている彼等のところに向かう。ヘルメットにトレンチコートも濡れそぼりその間から冷たい水が頭や身体に入って来る。その中で進むのだった。
 そしてだ。向こうからもだった。ドイツ軍も来た。
「来たな」
「奴等もな」
「来たか」
 その角のあるヘルメットが雨の中でかろうじて見えていた。
 その彼等を見てだ。イギリス軍の兵達はまた話した。
「ここで奴等を撃ったら終わりだな」
「ああ、ヘンリー達の収容なんてできないぜ」
「ましてや従弟もな」
「それで全部終わりだからな」
 一日限りの休戦もそれで終わりになるというのだ。
「だから絶対にな」
「そうだな。お互い白旗を掲げてないにしても休戦中なんだ」
「馬鹿なことはしないに限る」
「ヘンリー達のことだけを考えような」
 こう話してだった。彼等は戦友達、もう動かない彼等のところに来た。そうしてだ。
 その彼等を一人一人担架に乗せて運んでいく。その中にはだ。
「おいヘンリー、来たぜ」
「待たせたな」
 その彼もいた。もう動くことはない。
 目だけが虚ろに開いている。だが担架に仰向けに乗せたところで一人がその瞼を手で静かに閉じさせてだ。こう言うのだった。
「行こうな、今から」
 こうしてだ。そのヘンリーが運ばれていく。そしてだ。
 他のイギリス軍の者達も運ばれていく。ドイツ軍もそうしていた。その中でだ。
 あの伝令兵がだ。ある死体を見つけて言ったのだった。
「御免、寂しかったよね」
 彼によく似た顔の兵士だった。彼はその兵士に対して言う。
 
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