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剣の世界で拳を振るう

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間違った者の末路


「キリト、ここからは別行動だ」

「え…?」

転送直後、俺はキリトに別行動を提示した。

「この迷宮区みてぇな所を別々で探すのは時間の無駄だ。ユイはキリトをサポートしてくれ」

「りょーかいです!でも、お兄さんは?」

「この世界を支配しているシステムコンソールを探す。
万が一の事があっても、何かとサポートが出きるはずだからな」

「…分かった」

これも嘘になるんだよな…。
だが、出来ることなら原作に近い形で終わらせる…そうしたいのが俺の心情なんだ。


俺はキリトとユイの二人と別れ、別方向に進んだ。
どこだ、どこにある…?と、思いながら探すこと10分。
焦る気持ちにいい加減うんざり来た所で見つけた。
ゲームマスター室と思われる部屋の前に立ち、扉に手を当てて言葉を紡いだ。

「システムログイン…ID、ヒースクリフ」

俺の周りに様々なウインドウが表示される。
自己パラメーターだったり、本体の体調チェック表記だったりと様々だが、今はそんなものを見ている暇はない。

「システムコマンド、全ての閉鎖場所を開門。
10秒後に再起動」

俺が手を当てていた扉は開き、俺は急いで中へと入った。
中には広い空間に沢山の背丈大の柱が立っており、その一つ一つがSAOプレイヤーの意識だと言うのが分かった。
俺は迷わずに最奥にあるコンソールを目指して走る。
そして到達した俺は急いでモニターを表示して、キリトの姿を探し始めた。

「…くっそ!どこだ!何処が鳥籠なんだ!」

監視モニターの様な映像がパネルタッチで切り替わる。
なかなか見つからない事に焦りと苛立ちを覚えた俺は、とある表記を見つけ出した。

「Secret……これか!」

見つけ出したのはプライベートフォルダのようなロックのかかった表示。
直ぐ様ロックをIDで解除してモニターを繋げた。

『ふはははっ!甘い!甘いよぉ!』

移って早々に見た光景はアスナがオベイロン…須郷に舐め回されている所だった。
間に合ったとは言いずらい、そんなシーンでありながら、何故か心は冷静になっていく。
間違えるな…タイミングが違えばキリトもアスナも危なくなるに違いない。

『もうすぐで茅場も気づく筈だ!
そうなればお前は只では済まないぞ須郷!』

『あひゃひゃひゃ!茅場ぁ?
お前は知らないんだろうが教えてやる!アイツは今国から監視を付けられて一切の機材に触れないようにされている!
あんな奴が助けに来るなんて烏滸がましいんだよクソガキがぁ!』

『ぶぐっ!?』

キリトは激情した須郷に蹴り飛ばされる。
普段ならば後ろに飛ぶなどして勢いや威力を和らげることも出きるのだが、今は重力魔法とやらで動きを制限されており、モロに顔面へと叩き込まれた。

『キリト君!』

その腕に繋がれた鎖をガシャリとならしながら、アスナはキリトを心配する。

『お前はそこに這いつくばって終始観察しているがいい!
あっひゃひゃひゃひゃ!』

『いやぁぁぁぁ!』

――――――――ここだ!
期をみた俺は直ぐ様言葉を紡ぐ。

「システムコマンド、特定プレイヤーへの通達音声をオンに!
プレイヤー名…キリト!」







(…きろ………き………起きろキリト!)

(………ケン……?)

(キリト。目の前の現実から顔を背けるな。
一介のプレイヤーとゲームマスターの差なんてものを現実として認識するのであれば、
その差を壊せるのだと錯覚しろ!)

(現実……錯覚…?)

(プレイヤーがゲームマスターに勝てないなど、誰が決めた!
お前がどうしたいかによって変わるこの世界の特色は、プレイヤーに
どんな困難にも立ち向かう勇気と力を宿した筈だ!)

(……)

(あの世界の剣の重さはどうだった?斬られた時の痛みは?
理不尽さを思い知った時の感情はどうだった?)

(あの世界……SAO!?)

(お前の立ち上がりが!攻略を!プレイヤーを!アスナを助けたんだろうが!)

(そうだ…アスナ…!)

(お前の本質はゲームマスターをも凌駕する闘争心!
誰かを守るとき、助けたいときにその力は何倍にも膨れ上がる!
前を見ろ!剣を抜け!幻想を打ち砕け!アスナを助け出すんだ!)

(ぐ……ぅあぉおおお………!」

(お前ならやれる!行け!キリト!)







『ぐ……ぅあぉおおお………!』

『んん?まぁだ妙なバグか残ってるなぁ!』

キリトは立ち上がり、振りかざされた須郷の腕を受け止め、掴んだ。

『アスナは助ける…お前は……殺す!』

キリトはそう言って須郷の腹に蹴りを入れた。
しっかりと吹っ飛びはしたものの、須郷のダメージは0であった。

「システム的不死……ならばシステムコマンド、管理者権限変更。
ID、オベイロンをレベル1に。
IDオベイロンに対し、全ての補正を解除」

『なっ!何だ!急に体が重く!?』

『……ケンだな。
須郷!決着の時だ。泥棒の王と、方翼の英雄の!』

「システムコマンド。
オブジェクトID、エクスキャリバーをジェネレート」

そしてキリトの前に転送された伝説の剣。
その黄金の剣を掴み上げ、オベイロンへと投げ渡す。

『な、何のつもりだ!』

『決闘だよ。
言っとくが、お前が憎む茅場だって逃げたことは無かったぞ!』

『か、かや!茅場ぁ!
もしやお前かぁ!また僕の欲しいものを奪い取ってぇ!何時も悟った様な目をしやがってぇ!
僕は未だに認めてないぞぉ!円さんは僕のお嫁さんになるんだぁ!』

………………は?
いやまて、今出た名前は家の母親の………まさかっ!

『円さんは何時も天使のように笑ってくれたぁ!
僕が残業に追われているときも何も言わずに率先して手伝ってくれたぁ!
そんな僕の天使を横から奪いやがってぇ!』

…何てこった…。
まさかこの暴走の動機が母さんの横恋慕を狙った行動だったとは…。

『だったら何でアスナを狙った!』

『資金だよ!彼女の親は結構な資産家でねぇ!
研究資金を投資してくれる有用な保険なのさ!』

……腐ってやがる。
だが、もう遅い。恐らくこの会話だって――――

『残念だが須郷君。
ここで君の企ては終わりを迎える』

システムコマンド消えちゃったから。

俺の周りに浮遊していたウインドウが消えた。
それは即ちIDの持ち主がログインしたと言うこと。
どうやって監視の目を掻い潜ったかはさておいて、今はこの後のスケジュールでも考えて置こうかな……。






『円くんは私の嫁だ。
君に手出しなどさせるわけが無いだろう』

『嘘だ!嘘に決まってる!
彼女の笑顔は僕にだけ向けられれば良い!』

須郷はヒースクリフに対し、手振り足振り身体振りで怒声を上げ、
若干ながら目頭が滲んでいるように見えた。

『本当に、残念でなら無い。
どうやら私は部下の人事に恵まれないらしい』

ヒースクリフはそう言って剣を抜く。
その装備はSAOで使っていたもののそれだった。
ぶっちゃけ容姿が変わっていない。……気に入ってたのか?

『うわぁあああ!』

奇声と共に剣を振りかざす須郷。

『遅いよ須郷君。君の敗けだ。此処でも、向こうでも』

ヒースクリフは落ち着き払って須郷の身体を切り刻んだ。
 
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