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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十五話 テキーラの国からその二

「義和様のお言葉だけでは駄目なのです」
「何か複雑ですね」
「複雑かも知れませんがそれでもです」
「このことはなんですね」
「けじめです」
 強い言葉だった、一言であるだけに余計に強い。
「それです」
「けじめですか」
「はい、お仕えする者の」
 話を聞いていて随分だと思わざるを得なかった、少なくとも普通にはない話だと思う。日本にまだこうした家があることが。
「けじめなので」
「じゃあ僕のお願いとしてです」
「まずはですね」
「言わせてもらいます」
 様付けはいいとだ。
「君付けでいいですよ」
「君付けなぞ絶対にありません」
 ご当主が言われてもとだ、言葉の外にあった。
「間違っても」
「やっぱり僕が八条家の人間だからですか」
「そうです」
 それ故にというのだ。
「そこはけじめです」
「何か凄いけじめですね」
「そうでしょうか」
「僕はそう思いますけれど」
「私共は雇われています」
 シビアな話になった、ここで。
「八条家に」
「代々ですね」
「そうです、使用人です」
「それがお仕事なんですね」
「仕事にはけじめが必要ですね」
「そうですね、僕は働いたことはないですけれど」
 アルバイトもだ、そうした経験はない。
「ですが親父を見ていますと」
「止様は見事なお医者様です」
「腕はいいし仕事には真面目なんですよね、親父は」
 もっとも女医さんやナースさん達には手を出す、病院を自分のハーレムにしてやると豪語していたこともあるらしい。
「あれで」
「そうですね、止様と同じです」
「仕事のけじめですか」
「お仕えすることが仕事ですから」
 それで、というのだ。
「私達は君付けなぞとてもしません」
「君付けになりますと」
「同格か目下の方への言葉遣いですね」
「そうですね」
 こう言われるとそうだ、何か新選組みたいで格好いいとは思うけれど目上の人への言葉遣いではないことは確かだ。
「言われてみれば」
「私達はお仕えしているのです」
 またこう言う畑中さんだった。
「ですから」
「それで、なんですか」
「さん付けもです」
 これもというのだ。
「恐れ多いです」
「僕がいいと言っても」
「ご当主様にお許し頂けなければ」
「ええと、ご当主さんは」
 僕はこう呼んでいる、その人はというと。
「何かこう」
「お話されにくいですか」
「一族で一番偉い人ですから」
 僕もこのことはよくわかっている、一族の人間だからこそ。
「何か雰囲気も」
「近寄り難いと」
「僕としてはそうです」
 こう畑中さんに答えた。 
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