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旗袍

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第四章

「そっちは」
「もうか」
「そう、青いのね」
 それをというのだ。
「持ってるから」
「だからか」
「そう、そっちはいいし」
 それに、というのだ。
「寒いし」
「ああ、足出すしな」
 チャイナドレスの特徴であるう。
「スリットが入ってて」
「おトイレ楽だけれど」
 それでもだrというのだ。
「寒いから」
「だから今はか」
「最初から決めてたの」
 買う服は、というのだ。
「旗袍にするって」
「そうか、じゃあここで待ってるからな」
「着たら見てね」
 その旗袍姿をというのだ。
「それじゃあね」
「ああ、それじゃあな」
 民徳も頷いてだ、そしてだった。
 民徳は店の端で適当に服を見つつ妹が服を探して着るまで待つことにした、芙蓉は暫く探していてある服を手に取ってだった。
 それからだ、試着室に入って。
 そこからカーテンを開いてだ、こう兄に言った。
「着たけれど」
「んっ?」
 民徳は丁渡芙蓉が入っていた試着室の傍にいた、そこからだ。
 試着室の中にいる芙蓉を見た、すると。
 髪型とメイクはそのままだがすっかり別人になっていた。紅のツーピースの華やかな、右の方で止めた詰襟型の服は。
 スカートは長くしかも柘榴の花と曲がった草の模様で彩られている。スカートは足首まで隠れるまでの長さだ。
 そして靴もだ、独特の高い靴だった。
 民徳はその靴も見てだ、妹に言った。
「ここ靴も売ってるんだな」
「セットになってるの」
 芙蓉はその旗袍姿から兄に言った。
「それで一緒にね」
「身に着けたんだな」
「そうなの」
「冠までしてな」
 見れば頭には大きなそれがあった、こちらは紅と桃色の薔薇の花をあしらった清朝の宮女のそれの様だ。
「花盆底まで履いて」
「いいでしょ」
「そこまでするなんてな」
「似合う?」
 全てを揃えた旗袍姿でだ、芙蓉は民徳にあらためて問うた。
「それで」
「ああ、奇麗だよ」
 思わずだ、民徳はこの言葉を出した。
「さっきまで可愛いだけだったのにな」
「有り難う、そう言ってくれるのね」
「それで今日はだな」
「うん、この服でね」
 その旗袍姿でというのだ。
「お祭りに出るわ」
「それじゃあな」
「うん、お祭りに行こうね」
 これから、というのだ。
「それで今度はお兄ちゃんに付き合うから」
「色々食いに行くんだな」
「それで何食べるの?」
「まずは麺だな」
 最初はそれだった。
「それから饅頭に水餃子、羊もだな。それから茶卵も食ってな」
「本当に食べるの好きね」
「だから中国人はな」
「食べる為に生きてるのね」
「そうだよ、だから食うんだよ」 
 この時もというのだ。
「御前も結局食うんだろ」
「それはそうだけれどね」
 芙蓉もそれは否定しない。
「けれどお兄ちゃんはまた」
「食い過ぎだっていうんだな」
「太るわよ、そのうち」
「働いてるからいいんだよ」
 自分の家の店で、というのだ。 
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