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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第四話 迷宮区にて

「それにしても君たち、いつも同じ格好だねえ」

と、迷宮区へと続く小路を歩いているとアスナがからかうようにキリトとソレイユに言ってきた。

「い、いいんだよ服にかける金があったあら、少しでもうまいものをだなあ」

「ものすごい言い訳じみてるように聞こえるぞ」

「私とアスナはギルドの制服だから仕方ないとしてもキリト君の黒ずくめはキャラ作り?」

「そ、そんなこと言ったらソレイユはどうなんだよ」

「おれか?おれは・・・」

ソレイユは言葉を区切り後ろに勢いよくふりむいた。その行動を訝しんだ三人はソレイユに問いかけた。

「どうしたの?ソレイユ君」

「・・・人の気配がする。結構数が多いぞ」

「・・・確かに」

ソレイユの言葉を聞きキリトが索敵を行った結果、索敵可能範囲ぎりぎりにプレイヤーの反応があった。キリトがマップを可視モードで開きプレイヤーを示す光点が浮かび上がる。その数、十二。

「多い、ね」

「それより、この並び方」

二列縦隊で進行してきているプレイヤーたち。それを見た一同は顔を見合わせてからキリトが口を開いた。

「一応確認したい。そのへんに隠れてやり過ごそう」

「そうだな」

ソレイユが同意し、アスナとルナも頷く。四人は道を外れて背丈ほどの高さに密集した灌木の茂みにうずくまった。

「あ・・・ど、どうしよ、私着替え持ってきてないよ」

「・・・私も」

マップの好転はすぐそこまで迫ってきている。そこにソレイユがルナに向かって黒いローブを投げつけた。

「それを羽織っとけ。結構隠蔽率が高いぞ」

「う、うん。ありがとう」

そういってルナはローブを羽織る。アスナのほうを見るとキリトがコートでアスナを包み込んでいた。それを見たソレイユとルナが二人をからかい始めた。

「なかいいな、お二方。俺らは邪魔かな?」

「そうだね、ここはお熱いお二人を残して私たちはお暇しますか」

それを聞いたキリトとアスナが顔を真っ赤にして大いにあわてていたが、規則正しい足音がかすかに届き始めたので黙るしかなかった。やがて、小路に姿を現したのは基部フロアを本拠地とする超巨大ギルド≪軍≫であった。

「・・・あの噂、本当だったんだ・・・」

「「噂?」」

「うん。ギルドの例会で聞いたんだけど、≪軍≫が方針を変更して上層部に出てくるらしいって」

「ああ、それか。確か、大人数で迷宮に入って混乱するより、少数精鋭部隊を送って、その戦果でクリアの意思を示すっていう方針になったという」

「そう、それだよ」

「実質プロパガンダなのか。でも、だからっていきなり未踏破層に来て大丈夫なのか・・・?レベルはそこそこありそうだけどな・・・」

「ひょっとしたら・・・ボスモンスター攻略を狙ってるのかも・・・」

「いや、それはさすがにありえないでしょ」

「それは連中が馬鹿じゃないことを信じよう」

そういって小路に戻る四人。若干キリトがアスナと密着した状況を名残惜しそうにしていた。それを見たソレイユがキリトをからかい、キリトは顔を赤くして必死に弁解していた。残された女子二人は首をかしげるだけだったがそれだけだった。

「と、とりあえず俺たちも急ごうぜ。中でかち合わなければいいけどな」

咳払いをし、先を急ぐように迷宮区に足を向けるキリト。それに続くようにほかの三人も足を向け先を急ぐ。




「やることがない・・・」

「たしかに、ね・・・」

そうぼやいたのはソレイユとルナ。現在迷宮区の最上部近くにいるのだが、キリトとアスナがバンバン敵を倒してしまうため二人の出番がないに等しかった。ソレイユはここが最前線にもかかわらず大欠伸をかいている始末である。
今、キリトとアスナが狩っているのは、≪デモニッシュ・サーバント≫と呼ばれる骸骨剣士である。筋肉がないくせに恐ろしい筋力パラメータを持った厄介な奴なのだが二人は一歩も引かずに戦っている。

「ふるるるるぐるるるるるぅ」

異様な雄叫びをあげアスナに四連続技≪バーチカル・スクエア≫を繰り出す骸骨剣士。しかし、それを華麗なステップで避けるアスナ。大振りな連続技をかわされ体勢が崩れたところであすなの八連続攻撃≪スター・スプラッシュ≫が決まる。

「キリト君、スイッチ行くよ!!」

「お、おう!」

そういって、アスナが距離を取って退く。それを確認したキリトが骸骨剣士に猛然と斬りかかった。キリトは繰り出した≪バーチカル・スクエア≫をすべて命中させ敵のHPを大きく削った。そして、なおも斬りかかっていくキリトの剣を受け止めるべく骸骨剣士は盾を構えるが、キリトは左肩口で体当たりを敢行。まともに食らった骸骨剣士はよろけ、がら空きの胴体めがけてキリトの強攻撃がヒットする。そして再び体当たりをかます。これは≪メテオブレイク≫という珍しい技で体術スキルがないと使えない。そして、最後に骸骨剣士の首に攻撃がヒットして骸骨剣士は崩れ落ちた。

「やった!!」

剣を収めたキリトの背中を、アスナがばしんと叩いた。そして、間髪入れずソレイユが呆れた様子でキリトとアスナに言った

「なあ、キリト君」

「ん?どうした、ソレイユ」

「俺とルナがいる意味ってなんだ?」

その問いかけに大量の汗を流して目を背けるキリト。アスナのほうを見ると同じようなことになっていた。そんな二人を見て再び呆れ返り先キリト御一行は先に進んでいく。



怪物のレリーフが施してある円柱の立ち並ぶ荘厳な回廊を索敵スキルを行使し進んでいく。迷宮の中に光源は存在しないが、周囲は不思議な光に満ちていた。マップデータの空白部分はあとわずかであるためそろそろボスの部屋が出てくるである、とキリトはよんでいた。回廊の突き当りには、灰青色の巨大な二枚の扉が待ち構えていた。扉にも、円柱と同じようなレリーフが施されている。その扉からは妖気が湧き出ているように感じてしまう。

「・・・これって、やっぱり・・・」

「ボスの部屋なんだろ」

そのソレイユの言葉を聞いて、アスナがキリトの、ルナがソレイユのコートの袖を不安そうな表情でつかんでくる。

「どうする・・・?覗くだけ覗いてみる」

「・・・ボスモンスターは守護する部屋から出ない。ドアを開けるだけなら多分・・・だ、大丈夫・・・じゃないかな・・・多分・・・」

「後半声がかすれてるぞ」

自身なさげに消える語尾にソレイユがつっこむ。一度大きくため息を吐き三人に言った。

「そんじゃ、俺が開けるからお前らは転移アイテムを用意しとけよ」

「「うん」」「わかった」

三人の返事が返ってきてからソレイユは扉に向かい合い、大きく深呼吸をした。

「・・・開けるぞ」

右手をルナに掴まれたまま左手に力を籠め鉄扉を押した。扉は滑らかに動き内部に隠していたものをさらけ出した。
しかし、内部は完全な暗闇であった。冷気を含んだ濃密な闇は、いくら目を凝らしても見透かすことができない。

「「「「・・・・・・」」」」

誰も口を開かずに見ていると、突然入り口からわずかに離れた床の両側に、ボッと音を立てて二つの青白い炎が燃え上がった。思わずソレイユを除く三人はビクリと体をすくませた。そして、連続的に入り口から部屋の中央に向かって真っすぐに炎の道ができた。最後にひときわ大きな火柱が上がり、部屋全体が薄青い光に照らし出された。
アスナとルナは緊張に耐えかねたのかコートの袖ではなくそれぞれの腕にしがみついている。
そして、激しく揺れる火柱の後ろから徐々に巨大な姿が出現した。見上げるような体躯は、全身縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている。肌は周囲の色に負けぬ深い青、分厚い胸板の上にのった頭は人間ではなく山羊の形をしていた。はっきり言えば、それは悪魔そのものだった。カーソルが出たのでおそるおそるそれを見てみるとそこにはこう記されていた。

≪The Gleameyes≫

定冠詞がついているので間違いなくこの層のボスである。それを見たソレイユが呑気につぶやいていた。

「グリームアイズっていうのか」

それと同時に突然青い悪魔が長く伸びた鼻面を振り上げ、轟くような雄叫びを上げた。口と鼻から青白く燃える呼気を噴出しながら、巨大な剣をかざして四人を輝く眼で睨み地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってくる。それを見たキリトとアスナは悲鳴を上げ回れ右をして走り去っていく。

「うわあああああ」

「きゃあああああ」

「おいおい、あわてすぎだろ・・・」

その状況に呆れ返っているソレイユ。次いで腕にしがみついているルナに向かって聞いた。

「で、お前はどうしたの?」

「あ・・・足がすくんじゃって・・・」

「おいおい」

今度は苦笑いをして困りはてる。ボスの部屋を見るとすぐそこまでボスが迫ってきている。ボス部屋から出ることはないだろうが、走り去っていったキリトとアスナを追わなければならないのである。
溜息を吐いて腕にしがみついているルナを抱き上げその場を去っていく。



キリトとアスナは安全エリアに飛び込み、並んで壁際にへたり込む。そして、大きく一息ついてお互いの顔を見合わせ笑い出した。

「あはは、やー、逃げた逃げた!」

愉快そうに笑うアスナ。

「こんな一生懸命走ったのすっごい久しぶりだよ。まぁ、わたしよりキリト君のほうがすごかったけどね!」

「・・・・・・」

アスナの言葉に否定できないキリト。そこで気づいたことを口にした。

「・・・ところで、ソレイユとルナは?」

「あっ・・・・」

キリトの言葉でアスナも気が付いた。

「も、もしかしてボスに挑んでいたり、とか?」

「い、いや・・・。それはないと思うよ、ルナも一緒なんだし・・・多分、きっと・・・」

アスナの言葉に否定しようとするキリトだが、どこか弱弱しい。

「「・・・・・・」」

二人が形容しがたい雰囲気になっていると安全エリアに入ってくるプレイヤーがいた。しかし、キリトとアスナはそのプレイヤーに気づいていなかった。

「俺たちを置いていくなんてずいぶん薄情だな」

「「っ!!」」

いきなり言葉に二人が驚いて肩をすくませ、恐る恐る顔を上げるとそこには先ほど二人が考えていた人物が立っていた。

「で?言い訳があるなら聞くぞ?・・・聞くだけ、だがな」

「い・・・いや、ソレイユ。こ、これには深いわけが・・・」

「そ、そうなの。だ、だから決して忘れてたわけじゃ、な、ないのよ?」

「ふぅーん」

挙動不審で答えるキリトとアスナ。それでもソレイユは冷えた視線を投げつけるが一つ大きなため息を吐くと抱き上げていたルナを床に下した。二人はソレイユの気迫に押され今まで彼が抱えていた人物が見えていなかったらしく、床におろした時漸くその存在に気が付いた。そして、アスナが心配そうに話しかけた。

「る、ルナ、どうしたの!?」

「・・・ちょっと、足がすくんじゃってね」

恥ずかしそうに答えるルナ。それを聞いたアスナとキリトとソレイユは笑い出し、ルナは恥ずかしさで小さくなっている。一頻り笑った後、四人は顔を引き締めた

「・・・あれは苦労しそうだね・・・」

「そうだな。武装は大剣のみだったがおそらく・・・」

「ああ・・・、特殊攻撃アリだろうな」

「盾装備が十人はほしいね・・・まあ、当面は少しずつちょっかい出して傾向と対策を塗るしかなさそうだね」

「盾装備といえば」

アスナが意味ありげな視線でキリトを見ていた。

「な、なんだよ」

「君、なんか隠してるでしょ」

「いきなり何を・・・」

「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾を持ってることじゃない。でもキリト君が盾を持ってるとこ見たことない。私の場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たないって人もいるけど、君の場合はどっちでもないよね。・・・あやしいなあ」

「たしかに。言われてみればそうだよね」

アスナの言葉にルナが賛同した。キリトが何か葛藤し、口を開こうとしたときアスナが話を終わらせた。

「まあ、いいわ。スキルの詮索はマナー違反だもんね」

「そうだねー、変なこと聞いてごめんね、キリト君」

そういって、アスナは時計を確認して目を丸くした。

「わ、もう三時だ。遅くなっちゃったけど、お昼にしましょ」

「なにっ」

アスナの言葉に色めき立つキリト。

「て、手作りですか」

「私だけじゃなくて、ルナとの合作よ」

そういってメニューを操作して小ぶりなバスケットを出現させる。何を考えたのかアスナがキリトを睨んでいた。

「・・・何か考えてるでしょ」

「な、なにも。それより早く食わせてくれ」

キリトの言葉に唇を尖らせながら、バスケットから四つの紙包みを出してそれぞれに分けた。キリトが物も言わず大口を開けかぶりつくと

「う・・・うまい・・・」

と一言残して立て続けにかじりついている。ソレイユは一口ずつゆっくりと味わっている。

「確かにうまいな。この味はどうやったんだ?」

「私とアスナでいろいろ研鑽したの」

「そうそう。一年の修行と研鑽のせいかよ。味覚エンジンに与えるパラメータを全部解析して作ったの」

「それはなんとも、おつかれ様」

そういって最後の一口を頬張るソレイユ。隣を見るとアスナからキリトがお茶を一気にあおっていた。

「そういえばそっちの小瓶ってなんなんだ?」

キリトがバスケットの中に置いてある小瓶を指して聞いたので、アスナは小瓶を取出し栓を抜いて人差し指を突っ込んだ。

「口あけて」

その言葉を聞きキリトは口を開けるとアスナは指についた液体をはじいてキリトの口の中に入れた。そして、その液体の味にキリトは驚いた声を上げた。

「・・・マヨネーズだ!!」

そして、もう片方の液体はソレイユが味わっていた。

「醤油まで作ったのか」

「うん、とても苦労しました」

そういったやり取りをしているうちにバスケットの中身は空になり遅めの昼食は終わりを告げた。途中キリトが食い意地の張ったことを言っていたがソレイユはスルーすることにした。
不意に下層側の入り口から数人のプレイヤーが現れた。現れた六人パーティーはキリトの古い知り合いであるらしく、和気藹々と話している。そして、荷物の片付けが終わったアスナを見て目を丸くした。そこにキリトがアスナたちの紹介をした。

「あー・・・っと、ボス戦で顔を合わせてるだろうけど一応紹介をしとくよ。こいつはギルド≪風林火山≫のクライン。でこっちは≪血盟騎士団≫のアスナとルナ。それで・・・」

最後にソレイユの紹介をしようとしたキリトだが、クラインが目のほかに口を丸く開けて完全停止しているのを見て中断した。

「おい、ラグってんのか」

キリトが肘で脇腹をつつくとようやく回復したのか口を閉じ、すごい勢いで最敬礼気味に頭を下げる。ほかのギルドの面子も同じような感じである。

「こっ、こんにちは!!くくクラインと申す者です二十四歳独身」

「何を言ってるんだ、お前は」

呆れた表情でクラインにつっこむソレイユ。クラインは顔を上げソレイユの姿を確認すると再び目と口を丸くした。

「ああ、こいつは・・・「ソレイユじゃねぇか!!」・・・へ?」

キリトがソレイユの紹介をしようとしたとき、クラインが驚いたような声を上げそれをやめさせた。逆にソレイユのことを知っているクラインにキリトが驚いた。

「よう、久しぶりだな。クライン」

「ほんとに久しぶりじぇねぇか!ったくよう、ボス戦にも出てこねぇし何してたんだよ、おまえは!」

「いろいろだよ、いろいろ」

親しそうに話すソレイユとクライン。それを見たルナが驚いているキリトの代わりにソレイユに聞いた。

「えっ、と・・・お知り合い?」

「ん、ああ。クラインたち≪風林火山≫の武器を仕立てたのは俺なんだよ」

「へぇー・・・って「「え~~~」」」

「そんなに驚くようなことか?」

ソレイユの言葉にキリト、アスナ、ルナの三人がソレイユの言葉に驚いて叫ぶ。そして、いち早く回復したキリトがソレイユに尋ねた。

「お、お前、鍛冶スキル上げてたのかよ!?」

「驚くとこはそこか・・・・。まあ、自分の使う武器くらい自分で作りたいからな」

「「・・・・・」」

「あ、あはは・・・」

普通、攻略組に数えられるプレイヤーはそんな生産職のスキルなど上げたりはしない。そんなものを上げている時間があるなら、もっと戦闘で役に立つものを上げるだろう。それを、自分の武器を作りたいから、という理由でスキルを上げているソレイユはもうどう表せばいいかわからない。
どこからどこまでつっこんでいいのかわからないキリトとアスナ。ソレイユの破天荒ぶりを知っているルナでも苦笑いをせざるを得ない。

「ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」

それから、全員自己紹介が終わったのでキリトがアスナとルナにそう言った。そして、それを見たクラインがキリトに突っかかる。

「どっどどどどどどどういうことだよキリト」

クラインに突っかかれ返答に窮したキリトの代わりにアスナとルナが答えた。

「こんにちは。しばらくこの二人とパーティー組むので、よろしく」

「よろしくお願いします」

二人の言葉にキリトが仰天しているが、それに構わず落胆と憤怒の間で忙しそうに表情を変えていたクラインが殺気充分の視線をキリトに向ける。

「キリト、てンめぇ・・・」

「ちょ、俺だけ!?」

そんなやり取りをしていると、後方から再び新たな一団の訪れを告げる足音と金属音が響いてきた。その足音を聞いてアスナがキリトに囁いた。

「キリト君、≪軍≫よ!」

その言葉で全員が入り口を注視する。そこにあらわれたのは小路で見かけた重装部隊だった。二列縦隊でエリアに入ってきたが、足取りは重くとても疲弊していることがわかる。先頭にいた男が「休め」というと残りの十一人はその場に倒れるように座り込み、男はそれに眼もくれずヘルメットを外しながらキリトたちに近づく。

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

≪軍≫というのは集団外部の者が揶揄的につけた呼称のはずだったが、いつのまにか正式名称になっていたらしい、と誰かが思っているとキリトがみんなを代表して「キリト。ソロだ」と短く対応する。そして、男は軽くうなずき、横柄な口調で訊いてきた。

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」

「・・・ああ。ボス部屋の前まではマッピングしてある」

「うむ。ではそのマップデータを提供してもらいたい」

当然だ、というような表情の男に一同驚きを隠せなかった。しかし、キリトの後ろにいたクラインはそれどころではなかったらしい。

「な・・・て・・・提供しろだと!?手前ェ、マッピングする苦労がわかってんのか!?」

みんなの言いたいことをクラインが代弁する。それでもなお男は大声を張り上げた。

「我々は君ら一般プレイヤーの解放ために戦っている!諸君らが協力するのは当然の義務である!」

「ちょっと、あなたねえ・・・」

「て、てめぇなぁ・・・」

傲岸不遜な物言いに激発寸前の声を出すアスナとクライン。ルナやソレイユは大きくため息を吐きコーバッツに呆れている。しかし、それをキリトが制した。

「どうせ街に戻ったら公開しようと思っていたデータだ、構わないさ」

「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト」

「マップデータで商売する気はないよ」

そういってマップデータを送信するキリト。コーバッツは「協力感謝する」と感謝の気持ちなどかけらもこもってない声で返す。そして、再び二列縦隊で進軍していった。

「・・・大丈夫なのかよあの連中・・・」

クラインが気遣わしげな声で言う。

「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど・・・」

アスナのやや心配そうな声にキリトが

「・・・一応様子だけでも見に行くか・・・」

という言葉をかけるとその場にいた全員が首肯した。手早く装備を確認し、一同は早々にその場を出発する。
 
 

 
後書き
というわけで、第四話の更新です。

や、やっと書き終わったorz

わたしの体力はもうゼロに近い・・・ 
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