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舞台は急転

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第三章


第三章

「何も変わらないし」
「それがどうかしたのよ」
「香り。どう?」
 いぶかしむ皆に対して話してきた。
「香りは。どうかしら」
「!?これって」
「金木犀の?そういえばあんたさっきまでは」
「そうよ。つけてなかったわ」
 香水はつけていなかったのだ。このことを皆に話すのであった。
「実はね」
「そうだったの」
「そういえば今日はつけていなかったわね」
「まずは香りよ」
 楽しげに笑って言うのであった。
「それからね」
「けれど香りなんてねえ」
「ねえ」
 だが皆はそれを聞いても納得してはいなかった。顔を見合わせてどうにも否定的な感じであった。
「誰だって同じだし」
「それ位で」
「要は使い方よ」
 有美はこう言うのであった。
「大切なのはね。さっきだってそれで西園寺君私を意識したし」
「すれ違っただけなのに?」
「それだけで?」
「それだけでも何かがあれば全然違うのよ」
 にこりと笑ってまたカレーパンを一口食べてから述べたのだった。
「香水もね。普段からつけていても」
「まああんたがそう思っているんだったらいいけれどね」
「それでも。それでどうにかはならないと思うけれど」
「ああ、それはわかってるわ」
 見透かしているような有美の返事だった。
「それもね」
「次の手ってわけね」
「そういうこと。それじゃあ」
 にこりと笑ってまた言う有美であった。
「今日はこれまでで明日は」
「明日は?」
「体育があるじゃない」
 有美が言うのは授業についてであった。
「その時にね。仕掛けるわ」
「そうなの」
「じゃあ何をするか見せてもらうわ」
「期待していてね」
 またしても楽しげに笑う有美だった。しかしとりあえずこの日はこれで終わりであった。そして次の日の体育の日。体操服でグランドに出ている皆の中で有美はまた皆に話すのであった。
「それでね。この体育だけれど」
「ええ」
「今度はどうするの?」
「ここで最大の武器を使うのよ」
「最大の武器!?」
「そうよ」
 不敵な言葉になっていた。
「ここでね」
「ひょっとしてそれって」
「まさか」
「そうよ、これよ」
 言いながら自分の脚をぽんぽんと叩くのであった。
「これを使うのよ」
「そうなの。ここで」
「けれどどうやって?」
「見ててよ。ほら」
 丁度いいタイミングで範人が来た。青いジャージである。この学校では男の体操服は男は上は白い体操服で下は青いジャージなのだ。女は上が白い体操服で下は青の半ズボンである。ハイソックスも穿いていい。
「来たわよ」
「西園寺君ね」
「その彼ね」
「ほら」
 小声になる有美だった。
「見てるの。わかる?」
「あんたをね」
「それはわかるわ」
 周りの女の子達はここで彼女に合わせた。あえて彼を見ないでひそひそとした調子になったのだった。有美と世間話をしているふりをはじめたのだ。
 その世間話のふりをしながら有美は右脚を立てる。すると半ズボンのところから脚が付け根まで見えるのであった。その白く奇麗な脚が。
「・・・・・・・・・」
「見たわよね、今」
「間違いないわ」
「表情一瞬だけれど変わったわ」
 皆ほんの少しだけ彼を横目で見てから有美に答えた。
「あんたの脚ね」
「見てギクリ、ってなってたわよ」
「それで次はこれよ」
 言葉を続けながらその立てている右脚のハイソックスをくるぶしの辺りまで下ろす。するとその白い脚がさらに露わになるのだった。当然脚の太股の付け根まで見せたままである。もう少しで半ズボンから下着が見えそうにまでなっていた。本当にギリギリであった。
「どうかしら」
「顔、強張ってるし」
「西園寺君顔が真っ赤よ」
「これで第二段階は終わりよ」
 ニヤリと妖しく笑って言うのだった。
 
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