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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈上〉
  九校戦二日目(2)×氷柱倒し予選と試作品

氷柱倒し、アイス・ピラーズ・ブレイク、略してピラーズ・ブレイクは屋外フィールドで行われて予選と決勝を二日間に分けて行われる。なぜかというと、大掛かりな舞台装置を必要とするからだ。真夏に巨大な氷柱を何百本も用意しなければならない、いくら国防軍全面協力であってもそう何面も競技フィールドに用意する事が出来ない。そこで俺らの出番となる、少しでも時間を惜しまずにするために蒼い翼から製氷できる企業を呼んで、型を作り水を入れてから一瞬で氷にする事ができる絶対零度で凍らせて作られる。ま、二面フィールドに一回戦各十二試合で二回戦六試合、合計十八試合を熟すのが一日のスケジュールの限界であり魔法師の限界でもある。

「魔法力消耗が一番激しい競技だからなのか、一日で五試合全部となると選手の方はもたないな。二日目の決勝リーグは、試合と試合の間隔も短いしピラーズ・ブレイクが『最後は気力勝負』とも言われているという真実がある。まあ俺の場合はどんなハンデが付くのか分からないが」

俺達がいるのは、観客席ではなくスタッフ席。俺が言った事で雫は熱心に頷くが、最後の方では少し考える雫だった。俺の本気を見せた事ないからなのか、深雪は知っているがあえて言わない。言ったら新人戦面白くなくなるからかもしれない。俺はクラウド・ボールでの会長が優勝した後にここに来たのだが、格好は制服だ。ブルゾンは技術スタッフであるが普通のスタッフとして働くなと言われているので、着ていない。次の試合は千代田先輩の試合を間近で観戦する事で、実際の試合の感触をつかむ事という趣旨である。

千代田先輩と五十里先輩は最後の打ち合わせとしてしているので声は掛けられない状態。他のメンツ達は男子クラウド・ボールの試合を見に行っているが、桐原先輩の応援に来た壬生先輩にエリカが付き合い、エリカが美月を引っ張り美月が幹比古を誘い幹比古がレオに声をかけたという状態。

この話をした深雪と俺は全員素直じゃない子供だなと思った。いよいよ千代田先輩がステージに上がったので、フィールドの両端に設けられた高さ4mの櫓で選手はそこから魔法のみで守護しなければならない。フィールド内であれば魔法の殺傷性が解除されるので、最も過激な競技とも言われている。

「織斑君、僕たちも上がろう」

千代田先輩をステージに送り出した五十里先輩が声をかけたので、深雪と雫を引き連れた俺は誘いを受けてスタッフ用のモニタールームに向かう。ここなら選手が立つ櫓後方から見えるからだ。選手の体調をモニターできる機器とフィールドを直に見渡す事の出来る大きな窓が設けられている。ここは技術スタッフが選手を引き連れていいとこだけど、俺はブルゾンは着ていないが顔パスで通れた感じである。

「ふむ、千代田先輩は調子がいいですね。気合も入っているが、入りすぎではないでしょうか?」

「おや?そこまで分かってしまう何て織斑君は、人の精神状態から体調を一瞬で見分ける何てね。まあ花音は入れ込み過ぎて明日に影響しないかが、心配なくらいだね」

俺は後ろ姿を見た千代田先輩を見た後に感想を言ったら、そう答えが返ってきたのだった。俺は人では感じられない精神オーラから体調を一瞬で読み取る事ができるからなのか、たまに本当に人間かと言われるほどだ。

「一回戦は最短記録だそうで」

「花音はああいう性格だから。もう少し慎重に行ってくれると、見ている方も安心なんだけど」

苦笑しながら返ってきた応えに、少し興味を持った。午前は会長の方を見ていたから、一回戦は見ていないからどうやって破壊したかは知らないからだ。ただ地の精霊から地面系のを使っていると聞いただけだ。最短記録の割には自陣の柱も結構倒されたと聞いていた。

「始まる」

雫の呟きに、俺はフィールドへ視線を向けた。試合開始の合図と共に、地鳴りが起きた。

「これは一体?地面を揺らしているように見えますが」

「さすがの織斑君でも分からない事はあるんだね、あれは地雷源だよ。千代田家が得意とする魔法なのさ」

地雷源と聞いて納得したが、俺には地面系統の地震やマグニチュードくらいのかと思ったがどうやら違うようだ。魔法の才能が遺伝するものである以上、血縁者の間で得意・不得意が共通する事が多いのも当然の傾向と言える。四葉家は一人一人の特性が異なるが、精神干渉が得意な魔法師が多いというのは例外である。エレメンツで言うならゴーストで、相手の精神を破壊したり幻術を見せたりとヤバい魔法しかないと思われている。有力な一族は共通特性があるのか、一族に対する二つ名が贈られているというより付けられている。有名なのが、十文字家は「鉄壁」一条家は「爆裂」七草家は「万能」千葉家は「剣の魔法師」と特性というより技能に贈られる二つ名で、無論零家にも二つ名は存在するが「不老不死」とか「最強」と言われている。一族総体を指すものという意味。

千代田家の「地雷源」は振動系統・遠隔固体振動魔法、その中でも特に、地面を振動させる魔法を千代田家の魔法師は得意としている。土、岩、砂、コンクリなどの材質は問わない。地面にある固体に強い振動を与えて破壊する。それが千代田家の得意とするもんであり、「地雷を作り出す者」=「地雷源」が千代田一族に与えられた二つ名であった。直下型地震に似た上下方向の爆発的振動を与えられ、相手陣内の氷柱が一度に二本、轟音を立てて倒壊させる。相手選手は移動速度をゼロにする移動系魔法「強制停止」で防御を図るが、標的を変えて次々と炸裂する「地雷源」に防御対象に切り替えていない様子だ。

「これはこれで凄いとも言えるな」

「相手が攻撃優先に切り替えた」

「今更攻撃に変えても遅い気がします」

俺達三人三様に感想を言っているが、五十里先輩は苦笑をしている。あっさり倒される自陣の氷柱をまるで気にしないかのように、相手の氷柱を倒す事だけを考えている様子の千代田先輩だった。

「思い切りが良いというか大雑把というか・・・・倒される前に倒しちゃえ、何だよね。花音って」

「戦法は間違っていないですが、少しは自陣の氷柱を気にした方がいいかと思います」

攻勢に転じた事で相手の防御力も落ちているからなのか、自陣残り六本となったところで千代田先輩は敵陣を全て倒し終えていた。倒したというより全て破壊したという方が合っていると言った方がいい。

「勝利!」

櫓上から得意げな笑顔で見せてきたのを見た五十里先輩はヤレヤレと言った感じの表情を浮かべながら、五十里先輩も笑顔を作っていた。

「何と申しましょうか・・・・」

「お似合い?」

「ストレートに言うとさすが許嫁だけはある、互いを理解し合っているとも言えるな」

この二人は息が合っているからなのか、パートナとの相性もいい。それに許嫁だけはあるなと思った俺であったが、選手と裏方で二人で勝利を取ったとも言って良い程だな。そういえば選手四十人に対して技術スタッフは八人だからなのか、五十里先輩が他の選手と組んだ時は役目をちゃんと果たせるだろうか。平均でエンジニア一人で五人の選手を担当している。もちろん俺も選手兼技術なので、一年生を六人担当しているが俺の場合は特例だからな。

「さて、三回戦進出したから天幕にでも行こう。クラウド・ボールがどうなったか気になる所だ」

俺がそう言ったら全員天幕に戻ったら、何か重苦しい空気だったので五十里先輩は市原先輩に聞いた。

「何があったのですか?」

「男子クラウド・ボールの結果が思わしくなかったので、ポイントの見通しを計算し直しているんですよ」

いつもより表情が乏しかった市原先輩の顔を見て、もしかしてと思った。九校戦の順位は各競技のポイント合計で決まる。一位が五十ポイント、二位が三十ポイント、三位が二十ポイント。早撃ちに波乗りと破壊は四位が十ポイントで、クラウド・ボールと氷柱破壊は四位からの順位がないので三回戦敗退三チームに五ポイントが与えられる。モノリス・コードは一位チームに百ポイント、二位チームに六十ポイント、三位チームに四十ポイントが与えられ、ポイントで最も比重の大きな競技になっている。

「思わしくなかったと言うと?」

「一回戦敗退、二回戦敗退、三回戦敗退です」

恐る恐る聞いた五十里先輩に返されたのは冷淡な声だった。

「来年度のエントリー枠は確保しましたが、計算外でした」

「現時点でリードを考えれば女子バトル・ボード、男子アイス・ピラーズ・ブレイク。ミラージ・バット、モノリス・コードで優勝すれば安全圏とは思われます」

「それはつまり本戦で残り六種目の内、四種目で優勝しなければならないという事ですか?」

「新人戦のポイント予測が困難ですが、恐らく織斑君が三種目優勝と女子の方でのエンジニアでやってくれればかなり二位と離れるはずです」

作戦スタッフの二年生が試算結果を報告し、本戦四種目で優勝しないといけないと思ったがどうやら俺の活躍で何とかなりそうだ。十文字先輩と渡辺先輩が出場する種目でアクシデントが起これば、何かしら起こるかもしれない。しかも今回は犯罪シンジケートの無頭竜がちょっかいを出してくるからだ。

男子クラウド・ボールは桐原先輩が出場しているが、決して無鉄砲な性格ではないくらい知っている。責任感強い男であるが、ショックを受けているのではないとかと思い、桐原先輩がいるところに向かった。顔を合わすのは、今日の競技が終わった後のラウンジ。いつもと変わらぬ様子だったけど、桐原先輩と一緒に腰を下ろしている壬生先輩は無理に笑っている。

「桐原先輩、お疲れ様です」

「ああ、織斑か。早々と二回戦で負けちまったよ、惨敗だ」

空元気だと思うが、立ち直りが早そうに見えた。勝ち負けを繰り返すアスリートは、心理的な弾力性、負ける事への耐性もきっと高いのだろう。稽古や試合も経験豊富な俺であるからか、普通に声をかけた。

「ま、今年は運が無かったことだ。それとデバイスとサイオンのペース配分が間違いだったのかもしれないが、二回戦で優勝候補と当たったのは実に運がなかったとでも言いましょうか。まあ二回戦の相手だったのも、二回戦で消耗したので三回戦で負けていますからな。ドローか痛み分けでしょう」

「意外とハッキリ言うんだな、織斑は」

敗戦の事実を言っただけで、桐原先輩は怒らなかった。

「俺が落ち込んでるとは思わなかったのか?」

「全然・・・・。このくらいで落ち込むのであれば、剣術の腕をもっと磨いてから俺との試合を望むべきですよ」

この位のレベルで落ち込むなら、剣の腕をもっと磨けと言っているようなもんなのか。沈黙していた桐原先輩が噴出してから、ソファの上で爆笑していた。隣にいた壬生先輩はオロオロし始める笑いっぷりだった。

「織斑はやっぱ面白い・・・・このくらいのレベルだと落ち込むよりもっと腕を磨けか。まるで誰かの師範をしているような言葉を出すんだな、普通なら気まず~い顔をして、見て見ぬフリをして通り過ぎるというのが普通だが。自分から声をかける奴は見た事ねえよ」

「そりゃあ、俺には多くの弟子を持っているしカウンセラーの資格も持っている。剣術や武術の師範をしている俺にとっては、こんなところで立ち止まってないで敗北を糧にして次に向けて力を蓄えろと言いたいね」

「なるほどな~、凄くスッキリしたぜ。お前さんが言う『敗北を糧にして次を目指す』というのは、アスリートにとっては基本中の基本だ。俺もこんなところで立ち止まる訳にはいかない。九校戦が終わったらまた剣術で試合をしたいぜ!」

「そうか。まあそれでいいなら、それでいい。だが次も俺が勝つから精々腕を磨いておくんだな、俺の辞書には敗北という文字はないんでな」

そう言うと俺は立ち去るが、後程聞いた話では桐原先輩が敗北という文字を刻めてやるという新たな目標を立てた桐原先輩は隣にいた壬生先輩は本物の笑顔を出して剣技を一緒に磨こうと言ったのだった。剣道と剣術は違うけど、基礎は両方とも同じなのでな。竹刀を振る、相手が次の一手を先読みするというのを頭に入れてやる事でもあった。で、俺は明後日からの新人戦に備えたコンディションチェックやデバイス設定などはやらないでそのままホテルに戻ってきた。設定に不適合があればゼロがすぐに解決してくれるし、その場で測定できるからだ。

「お帰りなさいませ、お荷物が届いております」

「ありがとう」

フロントに俺宛ての荷物があるという事は昨日の夜に完成させてから、早朝に送ったデータを素に作った物だ。俺の部屋にはツインの部屋だが、ルームメイトは蒼太だがまだ戻ってないとなると深夜のとこにいるか、アイツらのところにいるかもしれない。時計を見てもまだ食堂の割り当て時間を確かめるが、深雪が迎えに来るまでまだ時間があった。部品もワンオフで作らせたらしいが、恐らくこの世界にはない物で作らせたからかもしれない。牛山も仕事が早い事で、カバーを外すと薄く長いダイヤルロック式のハードケースが出てきた。このケースは通常だとショットガンかそれくらいあるデバイスを搬送する使用するケース。ダイヤルをいつもの番号に合せて開錠すると、ケースの中には剣があったが柄のとこにはガイアメモリのスロットルがあった。スロットルは合計二本まで入れる事が可能なので、とりあえず『Luna』と『Metal』を創り出してからスロットルに差した。

「これなら使用者に攻撃されても、ある程度の攻撃は無傷だろう。メタルメモリで身体を鋼鉄化するから、魔法で硬化魔法を発動しなくともいける。それにルナメモリで刀身部分が分離した後二つに見えるから問題ない」

取り出した剣は全長70cm、刃渡り50cm程度のナックルガード付きの模擬刀ではあるが、ガイアメモリ対応型でもある。もし試合中にドウターが出たらシャレにならないから、硬化魔法の応用として作ってみた。ガイアメモリは『holy』と『Blade』で疑似聖剣になれるようにしたのを、この刀剣に使えるようにした。ガイアメモリは使用者に預けるが無くされると困るので、専用ケースと一緒に送ってもらった腰にあるホルスターのような形状だった。

「使用者はアイツ専用に作った玩具だが、まあ大丈夫だろう。アイツは対ドウター戦した事あるし」

用途は通常の特化型に一種類の起動式を提供するが、ガイアメモリの能力を付属させたからかなりのもんだと思う。エリカのデバイスが通常特化型としてのプログラム切替機能を保持しているのに対して、これは完全単一機能特化型デバイス、武装一体型デバイスとも呼ぶタイプの試作機である。テストをしようと思いここから壁を計りやろうとしたら、ドアがノックされた。約束時間より早いが、ドアの向こう側は気配が多数確認したので俺の友人達が一斉に押しかけてきた証拠である。こいつとガイアメモリを机にあるケースに置いてからドアを開けた。 
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