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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈上〉
  宿舎到着×桐原と服部の会話

事故の後に蒼い翼からの警察が来たので事情聴取無しで、宿舎に到着できた。それについては、俺が映像を渡した後にそう判断したからだ。そうして出発の遅れと合せて昼過ぎに到着できた。競技の性質上、九校戦で活躍した選手が軍人の道に進む者は多い。軍としても優秀な実戦魔法師を確保する為に、九校戦には全面的に協力しており、会場と共に宿舎も視察の文官や会議の為に来日した他国の高級士官とその随員を宿泊させる為のホテルを九校戦の期間中、生徒と学校関係者の為に貸切の形で提供してい
る。ホテルと言っても軍の施設で、日本の国防軍施設なので専従ポーターやドアマンはいないが俺達の車がバスと作業者の後ろに来ると俺達を待っていたかのように軍関係者が来たのだった。

「織斑様、二時間とはいえ長旅ご苦労様です」

「それと対D戦とタイプZの戦闘お疲れ様です」

「うむ。お前らもいると俺らもホッとするわ、ここは軍の施設でもまさかここにCBが潜り込んでいるとは思わないもんな」

そう言いながら俺達は降りた後に蒼太達のバイクと車を空間に入れた後、それぞれのトランクを持つ蒼太達だった。俺達が先に入っても構わないが国防軍の中にCBを紛らせているから、あまり見られたくないのでしばらく話し合っていた。いつもだと統括する基地の当番兵がその役目を担うが、高校生の大会なので九校戦では自分達で荷物の積み下ろしをする事になっている。作業者に積み込んだ大型機器は、車に載せたまま使用するものだから荷卸しは発生しないが、小型の工具やデバイスは部屋で微調整をしたりするので、台車に載せて押していく事になる。俺もホントはそれの役目だが、専用機器がないと俺は調整出来ないので外されている。作業車の後ろで話している俺と笑顔で談笑しながら軍関係者と話していた女子生徒を見つめていた。

「どうした、服部。随分不景気な面だな」

「桐原・・・・いや、そんな事はないさ」

振り返った服部は、そこに声から予想した通りの友人の姿を認め、反射的に、あまり意味のない否定の言葉を返した。

「そうかぁ?少なくとも、好調って顔はしてないぜ」

自覚があるのだろう。桐原の言葉がそれ以上反論しようとせず、服部は自虐的な笑みを浮かべた。

「チョット・・・・自信を無くしてな」

「おいおい、明後日から競技だぜ。こんな時に自信喪失かよ、お前は二種目エントリーする主力選手なんだぞ。頼むぜ、二年生エース」

桐原の出場科目は二日目のクラウド・ボールのみだが、服部は一日目、三日目のバトル・ボードと九日目と十日目のモノリス・コードにエントリーしている。単一エントリーの桐原と違い、服部は二年生ながら主力選手だから彼の不満はチームの戦略に大きな影響を及ぼす。桐原は慌てるのも無理のない事である。

「いったい何に落ち込んでいるんだ?」

桐原の知る服部は、努力家であり自信家だ。努力に裏打ちされた自信家と言うべきかもしれない。二年生ながら三巨頭に次ぐ全校トップクラスの戦闘能力は、よく陰口を叩かれるような才能だけによるものではない。態度が傲慢なので、というのは友人であっても弁護できない。誤解されがちだが、才能以上に努力もまたトップクラスだ。少なくとも、桐原の見ている限りでは。努力と才能と実績、この三つの裏付けがあれば、そう簡単に自信を無くしてしまう事はないはず。

「お前は何も感じなかったんだな、羨ましいよ・・・・」

「なんだぁ?そりゃ、俺がバカだって言っているのか?」

「いや?鈍いとは思っているが」

「おい!」

服部は、他人から誤解されがちな、皮肉っぽい笑みを浮かべている。少しいつもの調子が戻ってきた感じであるが、自分をからかう為にという点は、桐原にとって些か複雑だったが、安心できるのに違いない。

「・・・・似合わないぜ?いったい何をクヨクヨしてるんだよ?」

多少の意趣返しを込めて、桐原はそう訊ねた。服部も、友人の不器用な思い遣りが分からない程に鈍感ではなかった。

「さっきの事故の時と化け物・・・・Dの時・・・・・」

「あ~、ありゃあ、危なかったな。それにDを倒す者がすぐ近くにいるとは思えないがな」

「そう、何もしなければ重傷者が何人も出ただろう。死人が出たかもしれない」

「だが織斑兄妹が解決してくれたから、それでいいじゃねえか」

「そう。俺は何もできなかった」

「そりゃ、あの状態で魔法を使っていたらもっと収拾が出来なかっただろう。手出ししないだけでも、まともな判断力を残していたと思うぜ」

桐原の指摘は慰めにならないが、気休めにもならなかった。彼の指摘は客観的な事実分析に基づくものであり、全くその通りだと服部自身もそう思った。それでも服部の顔の色は晴れなかった。

「だが・・・・織斑は正しく対処して見せた。しかもあのサイオンの嵐の中でエレメンツの一つを発動させてから、俺達に向かってバカ野郎が最初の一言だった。その後に魔法式ごと車体を両断と消火を同時にして見せた。しかも最後のあの機械手は織斑さんのISで停めてみせた。その後からの記憶は曖昧だが、DとZと戦っている時でも素早く判断して倒した。会頭が言った雛鳥と本物というのは、魔法師の卵である俺達と本物の力を持った織斑に向けて言った言葉だと思えた」

「まあなぁ、あれについては俺も実力だけならば俺達以上に超えている。あんな無秩序な魔法式ごと消せるなんて代物は、俺達でも出来ないと思うぞ。魔法力や才能・努力が俺達にあったとしても、俺達では到底無理だ。魔法の資質ではなく魔法師としても資質問題だ、力比べでも織斑兄に勝てないだろう。それに織斑兄妹は一見普通に見えるが、どっちも殺っているな」

「ヤっている?実戦経験があるという事か?」

「雰囲気がな、それにあんな化け物と対等に戦える者ではないだろう。事故後の事は口には出せないが、四月の事件の時とさっきの化け物退治の時に俺もいたし織斑兄妹もいた」

その後、桐原の親父についてを知っているだろうと聞かれた服部は対馬海域で何度も交戦経験があると答えた後に、桐原が答えた。兄弟とも俺達とは何かが違う雰囲気が出ているという事を。剣術や射撃とかで、戦う為の技術、人を殺傷するための技を鍛えても実際に人を殺した事のある兵士とそうじゃないアスリートでは、殺気の質が違うと答えた。

「では織斑さんもそうなのか?」

「さあな?だが普通四月の事件や先ほどの退治を普通の女の子がやる事じゃない、という事ぐらい分かるだろう?」

「四月の事件なら、反魔法派のテロリストの仕業だったらしいな。テロ組織は十文字家が潰したらしい、という程度しか知らない。そこに織斑兄妹もいたなんて初めて知ったが?」

「四月の事件はな、ホントは十文字家が潰した訳じゃないんだぜ?織斑兄妹とCBが一緒になってテロリストを掃除していた、俺も現場にいたが」

「・・・・本当か?」

「事実だぜ、それに織斑兄妹の本性を見た」

桐原が語った本性というのは、兄の方は前線で殺し合いをして堂々と生き延びた兵士以上に何十倍の濃密な殺気をコートでも着込むかのようなもんだったと言った桐原。妹の方は、一見普通に見えるが桐原が見たのは何も躊躇もなく殺している姿と、裏の顔を持ち化け物相手でも立ち向かう姿と兄と同等な殺気を出していた。何であの兄妹が高校生やってるかが疑問になったと言った。

「・・・・歳を誤魔化したりは出来ないはずだが」

「経験=年齢じゃねえが、恐らく七草会長・渡辺委員長・十文字会頭は何か隠している感じではあった。恐らく本性を隠しているに違いないと思うぜ、それに織斑兄妹が要人のような護衛を持つ高校生何て見た事ないぜ。織斑兄妹をバカにしたりして文句を言うと、ちょっかい所ではなくなるな。織斑兄が最後に放ったという『死神の眼』についてもだ。あれは聞いたところによると、睨みつけたり殺気入りで睨みつけると首と体が分断されるという幻術を見せるらしいからな」

そう言った桐原の口から出た「死神の眼」については、服部も実際睨まれて幻術を見せられた事があるからだ。優劣はともかく、強い弱いは魔法力だけで決まるものではなく、ブルーム・ウィードだなど入学前の実技試験の結果であり一科の中にも伸びる奴と伸びない奴もいる。

「例えば千代田だな、才能だけに胡坐をかいて去年の夏から比べれば完全な別人だぜ。二科の連中だって、自分で諦めてしまえば、強くなれる奴は一杯いるんじゃねえのか。現に二科生だって出来る奴は少なくない。今年は特に一年が出来る。現時点では俺や服部も奴の方が数倍強い、ただ実力を隠しているだけの事だ。俺達も負けてられないからな、腕を磨いて次に立ち会う時に勝てるくらいないとな。今劣っていると諦めれば敗北者のままだ。今までの二科の連中は、過去に劣っていただけで今は諦めていたが実際に強くなった奴もいる」

服部は相変わらず答えないが、口を閉じたまま、さっさと割り当てられた部屋へ向かっている。桐原は肩をすくめて、話の肴に使っていた織斑兄妹の方へと振り返る。見ると軍関係の者とまだ立ち話をしていたので、また軍関係者と話しているとはホントに何者だと思ってしまう。桐原個人も織斑兄に何度剣術で戦っても勝てなかったが、今回の事件で実力の差がとことん上なんだと再認識したのだった。 
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