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ゼリーの女

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第一章

                   ゼリーの女
 岬由利香は契約社員として働いている、そろそろ正社員になりたいと思っているが彼氏の立花流星にはこう言われている。
「資格取ったらどうだよ」
「資格?」
「ああ、資格を取ればな」
 それで、とだ。流星は由利香に言う。細い髪質の黒髪をショートにしているが所々その髪に癖がある。眉は色が濃くはっきりとしていてわりかし面長で鼻が高い。赤い唇が健康的で目は奥二重のはっきりとしたものだ。背は結構ある。仕事は区役所の公務員だ。
「いいだろ」
「資格ねえ」
「今何か資格持ってないのかよ」
「保母さんとか簿記とかならあるけれど」
 由利香は流星にあっさりと答えた。
「高校商業科で短大で取ったから」
「じゃあ保育園の先生になれよ」
 流星はその由利香にすぐにこう返した。茶色のショートヘアではっきりした二重のあどけない顔立ちの彼女に対して。
「答え出たじゃないか、今」
「それもそうね」
「丁渡八条町の保育園で保母さん募集してるよ」
「あっ、そうなの」
「だからな」
 それで、というのだ。
「そこ紹介するからテスト受けるか?」
「うん、それじゃあね」
 由利香はそのあどけない顔で答えた。
「そうするわね」
「そうだよ。あとな」
「あと?」
「今の俺達だよ」
 流星はこのことについても話した。
「どうするよ」
「結婚?」
 由利香はきょとんとした表情になって流星に答えた。
「そろそろ」
「それは飛躍してるだろ」
「そうかしら」
「そりゃな、結婚もな」
 流星はこのことについては少し微妙な顔になって由利香に答えた。
「俺だって考えてるよ」
「有り難う」
「けれどな」
 それでもだというのだ。
「今すぐのことだよ」
「すぐのことなの」
「飲んでるけれどな、今」
 居酒屋においてだ、二人は休日前の夜を飲み放題食べ放題で楽しんでいるのだ。テーブルの上には完食した皿とジョッキがある。
「これからな」
「どうするかなの」
「どうするんだよ、これから」
「流星君のお部屋に行くとか?」
 彼のアパートの部屋にというのだ。
「そこで朝まで」
「そうするか」
「それでね」
 夜を過ごそうというのだ、一緒に。
「そうしない?」
「そうだな、じゃあな」
「お風呂も入ってね」
「ああ、一緒にな」
「そうしよう、それじゃあね」
 由利香は明るい顔で流星に言った。
「これからね」
「俺達の部屋な」
 こう話を決めてだ、二人はまずは徹底的に飲んで食べた。そうして胃の方を満足させてそれからだった。
 流星の部屋に入った、流星は泥酔寸前の状態で肩を抱いている由利香に対して言った。
「おい、今からな」
「ベッド?」
「お風呂だろ」
 こう言うのだった。
「まずは」
「あっ、そうだったわね」
「ああ、風呂に入ってお互い綺麗になってからな」
「一緒に入る?お風呂」
 由利香は流星に酔いながら提案した。 
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